NASAの探査機ニューホライズンズは現在、冥王星から10億マイルも離れた位置、カイパーベルト上にある天体MU69に向けて疾走中です。この遠く離れた天体はどんどん興味深いものになっており、赤みを帯びていること、もしかすると自転する2つの天体かもしれないことに加え、新たなリサーチでは小さな衛星を持っているかもしれないことも判明しました。つまり、1つの天体だと思っていたものが3つの天体かもしれないのです。
ニューホライズンズは2019年の元日にMU69にフライバイする予定で、同探査機が冥王星への歴史的なフライバイ中に画像を撮影して観測を行ったのと同じように、ついにMU69を至近距離から観測できるようになります。地球からは約65億kmも離れているので、ニューホライズンズからのメッセージが私たちの元に届くまで6時間ほど待たなくてはなりません。しかし、その時点でニューホライズンズは既に13年間も飛び続けていることになりますから、そのくらい待ってみる価値はありそうです。
それまでの間、MU69を他の手段で観測しようと地上にいる天文学者たちは全力を尽くしています。2016年10月のハッブル宇宙望遠鏡によるスキャンでは、この天体が冥王星で観測された赤茶色の斑点と類似した、認識できるほどの赤みを帯びていることがわかりました。これはメタンやエタンのような単純な有機化合物に紫外線が作用して生成される分子ソリンが存在することを示唆しているかもしれないのです。
そして今年の8月、MU69が星の前を通過した際(星食)には、その形状がどちらかというと細長くピーナッツのような形の天体(チュリュモフ・ゲラシメンコ彗星に似ている)、あるいは2つの小惑星が互いの周りを軌道運動している(すなわち、連星系)であると天文学者たちは認識しました。そのため天体は長さ30km(20マイル)ほどの1つの天体か、それぞれ直径15-20km(9-12マイル)ほどのペアの天体ということになります。
そして最近、ニューホライズンズの科学者たちはアメリカ地球物理学連合の学会で、MU69は単体の天体ではなく小さな衛星がある、あるいは少なくとも最新のデータはそのように示唆していると発表しました。7月10日に発生したまた別の星食の最中に、NASAの遠赤外線天文学成層圏天文台(SOFIA)がほんの短い間に星の光が消えたのを検知。この現象はMU69の周辺のまた別の天体によって引き起こされた可能性があるというのがNASAの見解です。
サウスウエスト研究所のコロラド州ボルダーオフィスからニューホライズンズチームメンバーとなっているMarc Buie氏はプレスリリースの中で「より小さな衛星を持つ連星という点も、こういったさまざまな星食の最中に我々が見たMU69の位置の変化を説明するかもしれない」と語っています。さらには「それらは全てとても示唆的ですが、ニューホライズンズがフライバイするより前、今からちょうど1年のうちに、MU69をより明確に把握することが我々の仕事における第2のステップとなります」 とのこと。
もし、MU69が本当に連星だと仮定すると、ニューホライズンズはフライバイ中でカイパーベルトの天体を3つも観測することになります。 そしてMU69のすばらしい画像だけでなく、太陽系が形成された時の遺物についての重要な情報がもたらされることも期待されます。
Image: Carlos Hernandez, NASA/Johns Hopkins University Applied Physics Laboratory/Southwest Research Institute/James Tuttle Keane
Source: New Horizons
George Dvorsky - Gizmodo US[原文]
(たもり)