新潟大学脳研究所統合脳機能研究センターの伊藤浩介らの研究グループは、音や音楽を聞くと色を感じる脳の現象“共感覚”において、隠れた法則を明らかにしました。
成果のポイント
- 音や音楽を聞くと色を感じる音楽家がいる。
- どんな音に何色を感じるかには個人差があり、ひとりひとり、でたらめに決まっていると思われていた。
- 詳しく調べたところ、音階の七音が虹の七色に対応する、隠れた法則を発見した。
成果の概要
音や音楽を聞くと色を感じる脳の現象を共感覚といい、F.リスト、N.リムスキー= コルサコフ、J.シベリウス、エドワード・ヴァン・ヘイレン、佐渡裕など、古今東西、音楽家には比較的多くみられます。ただし、ニ長調などの調性の色についてリストとリムスキー=コルサコフの意見が食い違ったように、色の感覚には個人差が大きく、音と色の対応には一定の法則はないと思われていました。
しかしこれまでの研究は、少数の共感覚者を対象としたものが散発的にあるのみで、十分な検討はされていません。そこで15名という多数の共感覚者を集めて、あらためて詳しく調べてみました。
音に感じる色を自由に選んでもらうと、確かに個人差がありました。しかし、選ばれた色の平均値を計算して背後に共通するパターンを探ると、ドレミファソラシの七つの音と虹の七色が順序良く対応する、隠れた法則が明らかになりました(次ページ図)。心理学実験でさらに詳しく調べると、色は音そのものではなく、音の名前(階名)と結びついていることも分かりました。
なぜこのような結びつきが生じるのか、原因は不明です。「レはレモンのレ」や「ソは青い空」など、誰もが小さい頃に歌う「ドレミの歌」が原因かもしれません。しかしドの赤や、シの紫など、説明できない部分も残ります。海外ではどうでしょうか?この現象の究明は、我々の脳が、何故どのように音楽に心を動かされるのかという未解明の問題に、ヒントを与えてくれるかもしれません。
図. 共感覚者15名の選んだ色を〇、全員の色の平均を□で示した。ドの赤からシの紫まで、音階に虹のような色が付いている。
成果の公表
本研究成果は、Scientific Reports 誌(日本時間 2017年12月19日19時)にて発表されました。
発表論文:Kosuke Itoh, Honami Sakata, Ingrid L. Kwee, Tsutomu Nakada. Musical pitch classes have rainbow hues in pitch class-color synesthesia, Scientific Reports, 2017. (https://www.nature.com/articles/s41598-017-18150-y)