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単独経営が困難に、沿線自治体に協議要請へ 近江鉄道

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 県内で鉄道、バスなどを運行する近江鉄道(彦根市)が、鉄道経営を同社単独で維持することが将来的に困難になるという見通しを、沿線の自治体に伝えていることが分かった。赤字が続いている上に設備の老朽化で維持コストが増すためで、存続に向けた協議の場を設けるよう各機関に呼び掛ける。

 同社の鉄道事業は一九九〇年代中ごろから赤字に転落。二〇一六年度には赤字額が経費の約二割に当たる三億円を超え、バス事業などの黒字で穴埋めしている。年間の輸送人員は四百万~五百万人の水準を維持しているが、今後は老朽化したレールや車両の更新が重なる。このため設備投資は今の一・五倍に増える試算で、収支の改善は難しいという。

 同社は採算ラインを輸送密度(一キロあたりの一日の輸送人員)二千人としている。路線のうち八日市線(近江八幡-八日市)は四千人を超えているが、本線の大半は二千人を下回り、一部では千人を切っているという。

 すでに県や沿線五市五町の担当者に説明を始めており、今後本格的な協議に移りたい意向を示す。国の支援を受けられる法定協議会の設立も念頭に「まずは鉄道が地域に必要かどうか考え、必要なら存続に向けた方策をともに講じてほしい」としている。

 将来的な選択肢として、鉄道設備を第三セクターなどが保有する「公有民営方式」など公的支援を受けて存続することや、一部区間をバスに転換することなどを挙げる。小端努・執行役員は「今後の近江鉄道線のあり方を検討するべき時期にきている。地域や行政と誠実に協議したい」と話している。

 近江鉄道は彦根市、東近江市など五市五町にまたがる三路線五九・五キロの鉄道線を営業。一六年に西武鉄道(東京)の完全子会社になった。

◆「なくしてはならない」「バスで十分」各市反応

 近江鉄道側の意向に対し、自治体の担当者からは不安や戸惑いの声が聞かれた。

 東近江市の太田久男・交通政策課長は「市の中心を通る基幹交通としてなくしてはならない。仮に廃止となれば、代替バスも十分な本数が走るとは思えない」と強く存続を求める構えだ。

 近江八幡市の担当者は「イベント列車の運行など、ソフト事業はやり尽くした感がある」と協議の場の設置に一定の理解を示す。一方、甲賀市は「自治体は既に補助金を負担している」、米原市の幹部も「バスでも十分輸送できるのが現状だ」と財政負担に慎重だ。

 近江鉄道側が例示する「公有民営方式」は、信楽高原鉄道(設備保有者は甲賀市)や、三重県の四日市あすなろう鉄道(同・四日市市)などに例がある。固定資産税がかからない一方、自治体の財政負担は増える。

 (野瀬井寛)

 

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