これは凄かった。久々の一気読みミステリー。
上下巻合計600ページ超の長編。1930年代と2003年のイギリス・ロンドンとコーンウォールという田舎を舞台に、時代と場所を行ったいり来たりしながら話は進む。
事件は1933年のコーンウォールにおいて、エダヴィン家の4姉弟の末っ子で当時1歳だったセオ・エダヴィンが行方不明になることから始まる。
セオは当時18歳から12歳の姉が3人おり、さらに愛情深い両親と乳母にも囲まれてすくすくと成長していた。エダヴィン家にとって待望の男の子であり、親族中からの愛情を一身に受けていたセオがパーティーの夜に突然いなくなったことにより、家族は深い悲しみに包まれ、最終的にはコーンウォールの屋敷【湖畔荘】を引き払ってロンドンへと引っ越して行ってしまう。
この事件に対して、とあるきっかけから興味を抱くことになった刑事セイディ・スパロウが、2003年のコーンウォールにおいて70年の時を経て謎解きに挑んでいくのがストーリーの核になっている。
登場人物が多くて時代もいったりきたりして、揚句が交錯する人間関係と心理状態が複雑に絡み合いまくっているので、上巻を読破するまでかなり労力が必要だった。謎解きは全然進まないしで、読むのやめようかな…と思いながらなんとか上巻のラストまで行くと、急激に話が進み始める。下巻は一気読み。久々にページが止まらない感覚だった。
巻末の解説を読むと、本書は『大人のおとぎ話』と呼ぶべきだとあったが、まさにそういった結末だった。人によっては「それありかよ!?」って感じるラストだと思うので、賛否両論あるのは間違いないと思う。が、僕はまんまと全面的に受け入れて、本書のまさかの結末に思わず涙が出てしまった。
時代と場所を行ったり来たりするので、長い長い旅を終えて辿り着いた場所で見た景色が本当に信じられないような素晴らしいものだった…って感じだ。
出来すぎていて冷めちゃう人もいるんじゃない?っていうのと、おとぎ話ならこれくらい素晴らしくてもいいんじゃない?っていうのの両方あるだろうなと。
とりあえず読み終わった僕の感覚としては『今年一番のミステリー』だった。重厚で結末であっと言わされるようなミステリーを求めているなら、是非手に取ってみてもらいたい。