(英フィナンシャル・タイムズ紙 2017年12月11日付)
米インディアナ州インディアナポリスで、共和党の税制改革案について演説するドナルド・トランプ大統領(2017年9月27日撮影)。(c)AFP/Brendan Smialowski〔AFPBB News〕
米国連邦議会で税制改革法案の審議が煮詰まり、近く大統領の承認を得るためにホワイトハウスに回される。
企業を利するだけのムダ事だが、これを擁護する人々は、法人減税は最終的には労働者のためになる、浮いた資金の一部が雇用の増加や賃金の上昇という形で「トリクルダウンする(したたり落ちる)」からだと主張している。
筆者が以前のコラムで指摘してきたように、少なくとも過去20年間にそのような現象が生じた証拠は存在しない。
とはいえ、企業の利得と労働者の利得は足し合わせると常にゼロになるとの見方は事実に反する。
両者に利得をもたらすカギは、「トリクルダウン」を期待して企業の税負担を減らすことではなく、従業員のパフォーマンスを劇的に高めて企業に増収増益をもたらし、生産性もじわじわ上昇させるような投資を労働者に行うことにある。
「グッド・ジョブ(良い仕事)を作り出す唯一の方法は、企業がオペレーショナル・エクセレンス(注1=事業活動の効率や効果を引き上げることによって得られるライバルとの大きな差)を手にすることであり、そのオペレーショナル・エクセレンスを呼び込むのは人への投資だ」
マサチューセッツ工科大学(MIT)スローン経営大学院のゼイネップ・トン教授はこう指摘する。
教授は昨年、グッド・ジョブ・インスティテュートという組織を立ち上げた。