市場価格の高騰ぶりから、その投機的側面のみが独り歩きした感のある、仮想通貨。
その中でも、時価総額では 断トツの1位 を誇るビットコインの市場価格は、2017年1月1日には116,000円で始まり、5月中旬には200,000円を足掛かりに、その後は一気に上昇気流に乗ります。11月27日には100万円の大台を軽く超え、12月7日には200万円越えと、未だに驚異的な価格の伸びを見せつけています。
ビットコイン以外のコインの総称である、アルトコインの値動きも、ビットコインに影響されて活発化しています。
ビットコインを筆頭に、仮想通貨のメディアへの露出度も鰻登り。普段は投資に関心のない方でも、「話のタネに、ポケットマネーで買ってみるか」と、年初から春先にかけて、軽い気持ちで仮想通貨を購入した向きも少なからず、いらっしゃるのではないでしょうか?
それが、あれよあれよという間に、相場価格は高騰し、手持ちの仮想通貨も尋常ではない値を付けました。誠にうらやましいお話です。
ただ、喜んでばかりもいられません。
株を引き合いに出すまでもなく、投資で利益が出れば、国税局への届出が義務付けられています。所得税の対象ともなり、相応の税金を支払わなければなりません。
それは、仮想通貨でも同じこと。
この稿では、仮想通貨と税金の関係、更には、仮想通貨で利益を得た際の申告などについて、考察していきます。
仮想通貨に対する政府の動き
2016年5月25日、参議院保会議において、「改正資金決済法」、別名、「仮想通貨法」が可決され、2017年4月1日、施行されました。
この法律により、それまで「モノ」扱いされてきた仮想通貨は、初めて「通貨」として定義されたことになります。
それに伴い、仮想通貨を取り扱う取引所も、登録制となりました。監督官庁には金融庁があたり、仮想通貨取引所や販売所などが不正を働いた際は、業務改善命令や、場合によっては業務停止命令が出される事になったのです。従来は法律上、仮想通貨は規定が曖昧でしたが、この法律により貨幣として定義される事により、利用者の保護が強化され、マネーロンダリングなどの悪用防止に、一層の拍車がかかる事に期待が持たれています。
仮想通貨と消費税
しかし、通貨としての定義を獲得した、という事は通貨としての規制も受ける事を意味します。
2016年12月8日、政府は、平成29年度「税制改正大綱(ぜいせいかいせいたいこう)」を公表しました。
その中には、ビットコインをはじめとした仮想通貨について、消費税の扱いについての記述があります。
消費税は、日本国内において、事業者が対価を得るために行う取引に対して課される税金です。ただ、国税局の判断としては、国内事業者が事業として対価を得て行う資産譲渡であっても、課税対象になじまないものや、社会政策的配慮から、消費税を課税しない取り引きが認められています。
非課税対象とされている取り引きには、以下のようなものが存在します。
・土地の譲渡並びに、貸し付け
・有価証券の譲渡
・支払い手段の譲渡。銀行券、政府紙幣、少額紙幣、硬貨、小切手、約束手形など
・預貯金の利子及び、保険料を対価とする役務の提供など
・日本郵便株式会社などが行う郵便切手類の譲渡、印紙の売り渡し場所における印紙の譲渡及び、地方公共団体などが行う証紙の譲渡
・商品券やプリペイドカードなどの物品切手等の譲渡
・国等が行う、一定の事務に関する役務の提供
・外国為替業務に関する役務の提供
・社会保険医療の給付など
・介護保険サービスの提供
・社会福祉事業におるサービスの提供
・助産
・火葬料や埋葬料を対価とする役務の提供
・一定の身体障碍者用物品譲渡や貸し付け
・学校教育
・教務用図書の譲渡
・住宅の貸し付け
仮想通貨はこれまで、前述した、どの非課税取引にも該当しなかったため、仮想通貨を用いた取り引きは「もの」扱いされ、課税対象とされてきました。これは、諸外国における仮想通貨に関する取り引きは、消費税が非課税になっている事と無関係ではありません。
2016年5月25日に成立した、改正資金決済法により、仮想通貨が通貨として認識され、他の決済手段と同等の性格を有すると認められたために、消費税についても改正案が示される形になりました。
平成29年度 税制改正大網の冒頭にある、「第一 平成29年度税制改正の基本的考え方」の中で、「経済活動の国際化・ICT化への対応と租税回避の効果的な抑制」によって、以下のように明記されています。
資金決済に関する法律の改正により、仮想通貨の支払いの手段として位置付けられる事や、諸外国における課税関係等を踏まえ、仮想通貨の取引について、消費税を非課税とする。
仮想通貨と所得税の関係
上記の記述で明白な事は、「仮想通貨を入手する際は、消費税が課されない」という点です。つまり、仮想通貨を売買して得た利益については、所得税法上、課税の対象とされる、という事実です。
2017年12月1日、国税庁から「仮想通貨に関する所得の計算方法について」という情報が公表されました。
ビットコインを代表とする仮想通貨を売却し、利益を得た場合、原則として、雑所得に区分され、所得税の確定申告が必要になります。
情報では、確定申告の対象となる仮想通貨の損益や、その具体的な計算方法がまとめられています。
仮想通貨の取り引きにおいて、どのようなケースが所得税の対象となり得るか、以下に集約しました。
仮想通貨の売却した場合
保有する仮想通貨を売却し、日本円などの法定通貨に換金した場合、その売却価額と仮想通貨の取得価額との差額が、所得金額となります。
<ケース1>
4月10日 2,000,000円(支払手数料含む)で4BTCを購入。
7月25日 0.2BTC(支払手数料含む)を110,000円で売却。
110,000円-(2,000,000円÷4BTC)×0.2BTC=10,000円
仮想通貨で商品を購入した場合
保有する仮想通貨を、商品購入の決済に利用した場合、使用時点での商品価格と仮想通貨の取得価格との差額が、所得金額です。
<ケース2>
4月10日 2,000,000円(支払手数料含む)で、4BTCを購入した。
10月23日 155,000円の商品の購入に、0.3BTC(支払手数料含む)支払った。
155,000円―(2,000,000円÷4BTC)×0.3BTC=5,000円
仮想通貨と仮想通貨との交換の場合
保有する仮想通貨で、他の仮想通貨を購入した場合、その使用時点での他の仮想通貨の時価と、保有する仮想通貨の取得価額との差額が、所得金額です。
<ケース3>
4月10日 2,000,000円(支払手数料含む)で、4BTCを購入した。
11月6日 他の仮想通貨を購入する際の決済に、1BTC(支払手数料含む)を使用。
※他の仮想通貨の、決済時点での価格は、600,000円。
600,000円-(2,000,000円÷4BTC)×1BTC=100,000円
まとめ
3つのケースを紹介しましたが、一言でまとめると
「仮想通貨を通じて得た利益が課税対象になる」ということになります。
仮想通貨を現金化したり、仮想通貨の利益分で買い物をしたり、仮想通貨で他の仮想通貨を購入して得た利益…
大雑把にいえば、それら利益がすべて課税対象になります。
確定申告では仮想通貨の取引の記録や、仮想通貨に関する領収書などの申告が求められますので、普段からそういった書類は用意しておきましょう。
その他、仮想通貨に関する税金の知識
課税対象について説明しましたが、他にも仮想通貨に関する知識を伝えようと思います。
すでに仮想通貨を始めている方もぜひご参考にしてください。
仮想通貨の分岐(分裂)
所得税法をひも解くと、経済的に価値のあるものを入手した場合、取得時点における時価を基準として、所得金額が発生します。
ただ、仮想通貨の分岐(分裂)に伴い、新たに取得した仮想通貨は、分岐時において、取引相場は存在せず、分岐時には価値はないと考えられています。
従いまして、新規仮想通貨取得時には所得は発生しません。但し、取得した新仮想通貨を売却、あるいは使用した時点で、所得が生じる事になります。その際、取得価額は0円となります。
仮想通貨における所得区分
仮想通貨を使用する事により生じた損益は、事業所得の各種所得の原因となる行為に付随している場合を除き、原則、雑所得として認識されます。しかし、事業所得者が事業用の資産として、BTCを所有し、決済に利用した際は、生じた損益については、事業に付随した所得とみなされますので、所得の区分は「事業所得」となります。
仮想通貨における損失の取り扱い
仮想通貨の取り引きにより、雑所得の金額に損失が生じた場合、雑所得の以外の所得と通算する事は出来ません。所得税法上、他の所得と通算出来るのは、不動産所得、事業所得、譲渡所得、山林所得に限られます。雑所得については、これらに該当しないため、所得金額の計算上生じた損失は、他の所得と通算する事は出来ません。
仮想通貨における証拠金取引
仮想通貨における証拠金取引による所得は、申告分離課税の適用がないため、総合課税による申告が必要になります。FX(外国為替証拠金取引)は、金融商品取引法に準ずる取り引きのため、租税特別措置法の、「先物取引に係る雑所得等の課税の特例」の規定により、申告分離課税の対象となります。
租税特別措置法では、先物取引に関連する雑所得の課税の特例対象は、下記の通りです。
・金融商品先物取引等
・カバーワラントの取得等
仮想通貨による証拠金取引は、上記のどれにも該当しないため、申告分離課税は適用されず、取り引きにより取得した利益は、総合課税により申告することが義務付けられます。
仮想通貨におけるマイニングについて
仮想通貨においては、新規通貨の発行を主に「採掘(マイニング)」と呼びますが、マイニングにより取得した仮想通貨は、事業所得あるいは雑所得の対象となります。
この際、マイニングにより取得した仮想通貨の取得時点での時価から、マイニング時に費やした経費を差し引いた金額になります。
因みに、マイニングにより取得した新規通貨を売却、あるいは商品購入時の決済に使用した場合は、所得計算における取得価額は、通貨を採掘した時点での時価になります。
最後に
いかがでしたでしょうか、仮想通貨の税金に関する説明は。
仮想通貨も徐々に法整備が進んできており、課税などのルールが整備されてきています。
値上がりばかりがうわさされて、夢のようなお話が多々ありますが…いざ始めてみたときに税金の知識がないことが仇になって、多額の税金に苦しむなんてこともあるかもしれません。
税金のこともしっかりと意識したうえで、coincheckなど取引所への登録をご検討くださいね。
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