いま、米政界は「セクハラ疑惑」で揺れており、上下両院議員が相次いで辞職に追い込まれています。
上院では、12月7日、NBCテレビの人気番組「サタデーナイト・ライブ」の元放送作家でコメディアンとしても知られる、野党民主党のアル・フランケン議員(ミネソタ州)が、数週間以内に辞職する意向を表明しました。
また下院では、同じく野党民主党で最古参のジョン・コンヤーズ議員(ミシガン州)と与党共和党のトレント・フランクス議員(アリゾナ州)が辞職を、ブレイク・ファレンソールド議員(テキサス州)が引退をそれぞれ発表しました。
被害者によるセクハラ告発の動きが止まらず、今後他の議員まで波及すれば、中間選挙における両党の獲得議席数に影響を与えることはもちろん、セクハラが中間選挙の主要な争点になることも考えられます。
ロイター通信とグローバル世論調査会社イプソスが行った共同世論調査(2017年12月1-5日実施)によりますと、「もし連邦議会選挙が今日行われたら、民主党候補に投票しますか、それとも共和党候補に投票しますか」という質問に対して、37%が民主党候補、31%が共和党候補、5%が他党の候補、11%が「投票に出向かない」、16%が「分からない」と回答しています。
世論調査の結果を見る限り、野党民主党が有利になってきています。議席数が拮抗している上院(共和党51・民主党49)に焦点を当てると、接戦が予想される西部アリゾナ州とネバダ州で民主党が議席を奪えば、上院で多数派になります。
ただし、来年の中間選挙では改選となる民主党上院議員の数が共和党のそれを上回っており、民主党が守勢に立つ可能性は否定できません。しかも、今回選挙が実施される州は、民主党にとって有利な州ばかりではありません。
例えば、辞職するフランケン議員の地元である中西部ミネソタ州は民主党の地盤なのですが、2016年の米大統領選挙でトランプ大統領が約45%を獲得し、ヒラリー・クリントン候補に1.5ポイント差まで迫った州です。
上院で与党共和党が過半数を維持しても、あるいは野党民主党が過半数を奪還しても、いずれにせよ議事進行妨害(フィリバスター)を阻止できる60議席を確保するのは困難なため、「統治できる多数派」にはならないでしょう。
さて、トランプ大統領は12月1日、ホワイトハウスで「公式にエルサレムをイスラエルの首都に承認する」と発表しました。エルサレムへの首都移転の根拠となる「エルサレム大使館法」の執行を延期する大統領令を発すれば、決断を6カ月間先送りできたのにもかかわらず、なぜこのタイミングだったのでしょうか。
昨年の米大統領選挙では、71%のユダヤ系米国人がヒラリー・クリントン元国務長官に、24%がトランプ大統領に投票しました。クリントン氏が47ポイントも上回っています。
ところが米国ユダヤ人委員会による世論調査(2017年8月10-28日実施)によれば、「敬虔なユダヤ教徒」の71%がトランプ大統領を支持しています。エルサレムへの首都移転の決断には、それに賛成する敬虔なユダヤ教徒の票を確保する意図が透けて見えます。
また、米国内のキリスト教右派の多くは「イスラエルは神がユダヤ人に与えた土地である」と信じており、エルサレムへの首都移転を支持しています。一方で、ロイター通信とイプソスによる共同世論調査では、キリスト教右派におけるトランプ大統領の支持率は、