チリ大統領選挙、保守派ピニェラ氏が当選
南米チリで17日に実施された大統領選の決選投票で、保守派の大富豪で前職のセバスティアン・ピニェラが勝利した。
左派のアレハンドロ・ギジェル氏は敗北を認め、ピニェラ氏への祝辞を述べた。ピニェラ氏は4年間の空白を経て再び大統領職に復帰する。
開票はほぼ完了しており、ピニェラ氏は54%以上の得票率を獲得している。
チリでは現在、社会党のミシェル・バチェレ氏が大統領を務めており、今回の選挙結果は右派への旋回を明確に示した。バチェレ大統領はギジェル氏を支持していた。
有権者の数は約1400万人。今回初めて海外在住者にも投票資格が与えられた。
しかし投票率は低く、48.5%にとどまった。投票率が高ければギジェル氏が有利とみられていた。
ピニェラ氏は勝利後に国民の結束を呼びかけた。
「チリは対立よりも合意を必要としている」とピニェラ氏は述べた。「未来へ向かう道は我々を結束させる。過去の物語は時に我々を分断する」
さらに対立候補ギジェル氏にも呼びかけ、こう付け加えた。「意見が一致する点について、ギジェル氏と対話がしたい」
大富豪の実業家ピニェラ氏は、決選投票前の候補者が8人から4人に絞られた際の投票では他候補を引き離して得票率1位だった。
ピニェラ氏はすでに2010~2014年にかけ大統領を務めている。一期目の就任では、20年間にわたった中道左派政権の支配を終わらせた形となった。しかし17日の投票日前の最新世論調査では、ピニェラ氏と自身が所属する「チレ・バモス」野党連合は僅差でしか首位に立っていなかった。
ピニェラ氏は実業界の支持を受け、減税による経済の再成長を公約にしている。
選挙運動中、ピニェラ氏はバチェレ大統領が行った改革を抑制すると約束した一方、対抗馬のギジェル氏は改革路線を続けるべきだと訴えた。
バチェレ大統領の革新的な政策は国外で称賛されたものの、国内での支持率は、2015年に義理の娘が絡んだ汚職疑惑もあり、2期目で急落した。
しかし今年、バチェレ大統領は野党保守派からの反対を乗り越え、チリの厳格な中絶禁止法の緩和に成功した。
保守派の反対勢力は、バチェレ氏が改革を推し進め過ぎたとしている。チリの法律では、バチェレ氏の連続再選は認められていない。
ギジェル氏は6党で作られる左派連合を代表していた。2017年4月に行われた大統領候補者を決める社会党の予備選挙では、バチェレ大統領の改革を続行すると約束してリカルド・ラゴス元大統領を破った。
10年前までは、アルゼンチンやボリビア、ブラジル、チリ、キューバ、エクアドル、ホンジュラス、ニカラグア、ウルグアイ、ベネズエラの10カ国で左派勢力が政権を握っていた。
しかし近年、アルゼンチンやブラジル、パラグアイで保守派が政権を取り、ベネズエラが提唱した「ボリバル革命」は厳しい圧力にさらされるようになった。ベネズエラでは反政府勢力によるデモが何カ月も続いている。大統領選をピニェラ氏が制したことで、この傾向をさらに強固なものにした。
(英語記事 Chile election: conservative Piñera elected president)