のっけから質問です。
「死にたいと思ったことがありますか?」
もし「No!」と言える方は、これからお話することはあんまりピンと来ないかもしれません。
ここでいう「死にたい」は、いわゆる「希死念慮(きしねんりょ)」を指します。
実際に死のうと決意して自死の方法についてあれこれ計画することは「自殺企図(じさつきと)」と言います。
希死念慮とは、ぼんやり「死にたい」と考えてしまう症状のことです。
「死にたい」と考えてしまう症状
死にたいという「症状」ですから、風邪をひいたときの鼻水や咳と同じように、ちゃんと原因があります。
一般的には、セロトニンなど脳内の神経伝達物質の代謝に問題が生じると、希死念慮が強くなるとされています。
分子栄養学的には、ビタミンB6や亜鉛・鉄の不足、銅の過剰といったところが代表的ですが、
もっと単純に、思うように身体が動かない副腎疲労・慢性疲労でも、死にたくなるには十分な状態が作れます。
「死にたい」と考えてしまうような血液データ
分子栄養学実践講座の症例検討会や個別のご相談で「これは死にたくなっても当然でしょう・・・」と感じるデータに出会うことがあります。
パッと見た目で分かります。
「ああ、これは辛そうだな」と。
全体的にエネルギーが回っておらず、いかにもATP作れてなさそうなデータです。
ATPとは細胞のエネルギー成分です。
副腎疲労や慢性疲労の方は、ATPの産生が低下しておりエネルギーが不足していますから、あらゆることが思うようにできません。
普段の仕事はちょっとした登山、気軽な外出や旅行がマラソンを走るようなハードルです。
病気には見えませんからそれなりに普通を演じていますが、1日動けば2日休んでようやくリカバリーの世界です。
普段からアドレナリンで踏ん張って生きてますから、自律神経のバランスなんてとれるわけがありません。
夜も寝つきが悪く、朝も辛い。
そりゃ死にたくもなりますよね。
希死念慮とまではいかなくても、その予備軍みたいな細胞の状態の方によくある例が、やたらと「幸せについて考える病」です。
細胞のエネルギーレベルが低下すると、何かにつけてセンシティブになりますから、
自己の存在や生きている意味、自分は社会の役にたっているか?など、
「それって生きていくのに必要なん?」と聞きたくなるような自問自答を繰り返します。
ちなみに、歴史に名を残す芸術家や作家は、その傾向が特に強いようです。
ギリギリのところで生きているがゆえ、その苦しみをクリエイティビティとして発散するのでしょう。
歴史をたどってみても、食生活もエキセントリックで栄養状態もかなりヤバそうな方が多いですから。
「幸せ感」とは
しかしながら、人間の感じる幸せ感とは、もっとシンプルでプリミティブです。
朝起きてお天気が良い、ご飯を食べておいしい、ウンチがすっきり出て気持ちいい、etc.
経済的に豊かでなくても、社会的な地位がなくても、元気でエネルギーが回っていれば、あまりマイナス思考にはなることはありません。
何か生きるための動機付けを考えなければならないというのは、細胞がそういう栄養状態ってことです。
そもそも副腎疲労・慢性疲労になる原因が、ご自身の完璧主義や真面目な性格にありますので
「死にたい」という自分の後ろ向きな思考を自分で認められない方が多いです。
ダメ人間だと自分で自分に烙印推すので、余計に崖っぷちなんですね。
たいていの場合はダメ人間でもなんでもありません。
ただの栄養不良、代謝不全、血液データを診れば一目瞭然です。
分子栄養学を勉強して思ったのは、人間は案外簡単に死にたくなる生き物だということです。
私自身、希死念慮も自殺企図も、一通り経験しました。
当時は自分の性格か?社会適応不全か?と思い悩むこともありましたが、今では理由が分かってすっきりしています。
現在は「こりゃ死にたくなって当然だ」という検査データをたくさん見ていますので、とりたてて特別なことだとも思わなくなりました。
人生で一度も「死にたい」なんて思ったことのない健康優良児には理解不能な世界でしょうが、
ちょっとした栄養不良とエネルギー不足が重なれば、消えていなくなりたいと思うのはごく自然なことなんですよ。
「死にたい」と考えてしまう時に必要な事
そんなときに必要なことは、温かいボーンブロスでも飲んで、エプソムソルト入りのお風呂でゆっくり温まって休むことです。
間違っても、ATPリッチの元気な人に悩みを相談してはいけません。
「希望を持て」とか「生きててよかったと思う日がいつかきっとくるから」といった、おせっかいな愛情攻撃を受けます。
それよりも、信頼のおける人に手をさすってもらってオキシトシンレベルを上げてもらい、
胃腸が緩んだところで上等なお肉でも召し上がったほうがよほど回復が早くなると思います。
日照時間の短い冬は、ダークサイドに落ちる人が増えます。
気圧の変動も夏場以上に身体に負担になりますから当然です。
たとえ「死にたい」病が襲ってきても、それは天候と栄養状態のせいですから、自分を無駄に責めないようにしてくださいませ。
著者:馬篭純子
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