東京地検特捜部と公取委、独占禁止法違反容疑で
リニア中央新幹線建設工事を巡る不正受注事件で、東京地検特捜部と公正取引委員会は18日、大手ゼネコン4社が受注調整を行っていた疑いが強まったとして、独占禁止法違反(不当な取引制限)容疑で鹿島(東京都港区)と清水建設(同中央区)の捜索に乗り出した。今後、大成建設(同新宿区)と、既に偽計業務妨害容疑で捜索している大林組(同港区)についても独禁法違反容疑で捜索に入る方針。
特捜部は「スーパーゼネコン」と呼ばれる4社がリニア関連工事で事前に受注調整し、事業主体のJR東海(名古屋市)に一番低い見積額を提案する1社を決めていたとみている模様だ。こうした事前の調整で、4社は他企業の参加を事実上排除し、正常な価格競争が行われなかった結果、契約額がつり上げられていたとみられる。
JR東海は2015年以降、リニア関連工事22件で建設会社側と契約を締結。大手4社がそれぞれ中心となった各共同企業体(JV)が、このうち約7割に相当する15件を3~4件ずつ受注している。リニア工事は山岳地のトンネルなど大手でないと困難な工事も多いとされる。
今回の事件を巡っては、特捜部が今月8日、大林組を先行して捜索。名古屋市中区の「名城非常口」の工事を巡り、大林組がJR東海の業者選定手続きを不正にゆがめ、契約締結に至った疑いの一端が浮かんでいた。その後、大林組以外のゼネコン関係者やJR東海の社員からも任意の事情聴取を進め、大手4社による受注調整の疑いが濃厚になったとみられる。
独禁法は、工事の業者選定手続きや物品の入札などで事前に受注業者や受注金額などを決める行為を禁じている。
大林組幹部は取材に対し「リニア工事で他のゼネコンと情報交換したことはあったが、(法的に)許される範囲の情報交換だったと認識している。不正な受注調整を行ったことはない」と疑惑を否定している。
また、鹿島は「捜査中のためコメントできない。捜査には全面的に協力していく」、清水建設は「捜査中のため詳細は控える。捜査には全面的に協力していく」、大成建設は「検察の捜査に関わることなので詳細はお答えを差し控える」とコメントしている。【飯田憲、平塚雄太、巽賢司】