脚本家、島田満さんの訃報に接して(2017.12.16)

今晩だけは、普段と違う形で綴らせて頂きます。

昨日、脚本家の島田満さんがお亡くなりになられたとの報道が伝えられました。

島田さんは、30年以上に渡って主にTVアニメーションの脚本を手掛けていらっしゃった方です。

ジュエルペットてぃんくる☆制作前に作られていた、ご本人による作品歴の紹介と、制作前後に開設されていたブログのリンクを掲載しておきます。現時点では閲覧可能です。

脚本家としての制作の背景について参照されたい方は、同じくジュエルペットてぃんくる☆のBD/DVDでライナーノーツも執筆されている、漫画研究家/ライターの泉信行さんによる『アニメ脚本家・島田満さんのお仕事と、イマジナリーフレンドの関係』(ピアノ・ファイア)をご覧ください(12/17追記)。

皆様がご存知の作品では、世界名作劇場の「若草物語ナンとジョー先生」及び、「ロミオの青い空」の全話脚本や、Dr.スランプ、ドラゴンボール、ONE PIECE、るろうに剣心といった著名作品、更にはオリジナルとなるジュエルペットてぃんくる☆、ゲーム原作のリトルバスターズ、昨年から今年に掛けては、若手アニメーター育成から派生したリトルウィッチアカデミアの映画及びTVシリーズの脚本、シリーズ構成を手掛けられており、現在NHKの教育テレビで放映されている『うっかりペネロペ』でもシリーズ構成と脚本を手掛けられています。

9月に、秋から始まった『うっかりペネロペ』でシリーズ構成を担当される事をSNSでご本人が伝えられていましたが、その後、ご本人からの発信が滞るようになり心配しておりましたが、本日、ご親族の方から上記の内容が伝えられております。

本当に最後の最後で、くだらないリプに丁寧にご返信頂いた立場としては慙愧に堪えないところではありますが、ここに謹んでご冥福をお祈りする次第です。

私にとって島田さんの脚本との出会いは、遥か昔に遡る「クリーミィマミ」の時代。オリジナル作品らしく凝ったシナリオが散りばめられた作品の中で、一際に可愛らしさの感じられるMr.ドリームのストーリーに魅せられたのが初めての出会いだったと思います。

その後に続く、うる星やつらにおける「純情きつね」と、しのぶが登場するシナリオや、「ハイスクール奇面組」での可愛らしいシナリオなど、どちらかというと少女趣味的なシナリオを書かれる方(当時は美人脚本家という触れ込みもありました)だなという、イメージが当初は強かったと思います。

そのようなイメージを一新されたのが、世界名作劇場への参加。ピーターパンの冒険に続く、「若草物語 ナンとジョー先生」における、登場人物にじっくりと寄り添いながら、全話に渡って丁寧に物語を描いていくシナリオ展開は、多くの方に印象を残した「ロミオの青い空」(この題名のインスピレーションも島田さんが出されたと楠葉監督が述べられています)の全話脚本に繋がっていきます。

この時点で、世界名作劇場を代表する脚本家との名声を得た島田さんですが、一方で「家なき子レミ」の脚本を事情により途中降板、結果として長年に渡った世界名作劇場が一旦幕を閉じるという苦渋を味わうことになったのも事実です。

その後、前述の週刊少年ジャンプ原作の作品群のアニメ化におけるスタート段階の脚本チームに加わり、現在まで続く人気のけん引役を果たす一方、ご本人が得意とされる、よりファミリーなテーマに基づいて、その作品をとても愛されていた「とっとこハム太郎」、そして「アンパンマン」の映画2作の脚本を手掛ける等、多方面な活躍をされていました。

その延長にある、現在のアニメファンの方々に繋がる作品たち。少女漫画原作の元気あふれるストーリーに、奥行きのあるしっかりとした骨組みを持たせることで通算3年に渡るシリーズに育て上げた「しゅごキャラ」、深夜アニメとしては異色のハートフルなシナリオを美しい映像で魅了した「ななついろドロップス」、同じスタッフが集結して、土曜の朝に一年に渡って放送された、販促アニメとしては異例のストーリーを優先させたプロット、錬り込まれたシナリオ、高水準な作画で少女の成長を丁寧に描き切った「ジュエルペットてぃんくる☆」。

これら作品によって培われた魅せるストーリーの成果は、早いサイクルでよりコアなユーザー層に向かうアニメーション作品の中で、ややもすれば古いテイストとも捉えられるスキームが、逆に物語に深い重みを与える事を印象付ける事になります。ゲーム原作で、決してアニメーションでは実現できないであろうと云われた登場人物毎に組まれたシナリオを、娘さんと一緒になってご自身でゲーム全シーンを制覇した上で書き上げ、見事に3クールのTVアニメーション作品のシナリオとして、何ら欠けることなく一本の作品として纏め上げた「リトルバスターズ」。更には、最終局面に於いて、苦悩されている発言を残しつつも、物語のストーリーに確固たる骨子を与える事に意を砕かれた「リトルウィッチアカデミア」。

そのキャリアに於いて、常に最前線で活躍されて、「現場で最も年齢が高く」と直近では述べられながらも、若手クリエーターの輪の中に入って更なる創作活動に邁進されていた島田さん。

既に病魔に侵されていた事がご家族の方から伝えられていますが、その中でも精力的に最後まで執筆をされていた作品は、現在も放映されています。

アニメーション作品に於いて、脚本家は後方に配されて表立っての姿がなかなかに見えにくい事が多いのですが、その中でもずば抜けた才覚(演出家志望であった片鱗は、時に「シナリオディレクター」という称号を与えられる点からも伺えます)と、作品に寄り添って魅力を引き出そうとする不断の努力から生まれた脚本たち。多くのファンの方が感銘を受けられて「島田満さんの脚本回」と呼ばれるようになっていたのは、誰しもがそのアニメーションという、動画が主役である作品をしっかりと裏から支えてくれるストーリーを描いてくれるという期待と、その現実を叶え続けて下さった結果だったかと思います。

これからも多くの作品を描き続けて下さると願っていた中での訃報。新たな作品を目にする事は出来なくなってしまいましたが、心に残る、数多くの作品を残して下さったことに感謝しながら、改めてご冥福をお祈りいたします。

女の子は誰でもステキな魔法使い!

貴女の残した魔法が、何時までもみんなの心を照らし続ける燈火でありますように。

2017.12.16

一年ほど前、掲載していた写真に直接「素敵ですね」と、お返事を頂いたページの一枚。30年来の一ファンとして、個人的にも大切な思い出です。

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