一方、各省にも情報担当責任者が割り当てられているのだが、これが問題だ。通例では、各省庁の官房長がその役職を務めることになっているが、決してテクノロジーに精通している役人ばかりではないからである。
民間のCIOでも、役職を務めるうえで必要な資格はないが、情報処理、情報科学の知識は当然のように持っている。米国では、理工系分野の博士号(工学博士または理学博士)と法務博士の両方を取得している人が多い。
しかし各省庁の官房長は、法務に関しては十分な能力を持っているかもしれないが、彼らは9割以上が文系出身。理工系分野の博士号ほどの知識がある人はほぼいない。
これが官僚の実態で、なかにはプログラミングどころかコンピュータの操作すらおぼつかない人もいる。若手官僚から聞いた話では、某省の幹部が珍しくコンピュータをいじっていたという。すると「至急幹部室に来てくれ」と電話があり、行ってみると「これ以上マウスが動かせない」と、机の端にあるマウスを指さした。一度マウスを持ち上げて真ん中に戻す動作も知らなかったのだ。
府省での情報担当責任者同士の連絡会議は毎月のように行われているが、まともな会議になっているとも思いがたい。首相官邸のホームページを見ると、「持回り開催」という言葉が頻出しているが、これは資料を回しただけで会議をしたと言い張っているに過ぎないケースもある。
このレベルでは、サイバー対策が緩すぎるのは当然とも言えるのだ。
『週刊現代』2017年12月23日号より