レシピ付きの食材を宅配する「ミールキット」サービスが、最近日本でも増えていると聞く。毎日の献立を考える悩みを解消してくれるだけでなく、食材購入の手間も省ける。米国ではアマゾン・ドット・コムも参入するなど、日本以上の盛り上がりだ。筆者が知るだけでも10を優に超えるブランドがしのぎを削っている。筆者の経験を交えつつ紹介したい。
米国で最も高いシェアを獲得しているのがブルーエプロンだ。2012年創業で、ユーザー数は100万人を超え、月に800万食以上を会員に届けている。今年には株式上場も果たした。プロのシェフ考案のレシピを、厳選された産地の高品質の食材を使って、家で気軽に作ることができる。レストラン並みの質の食事を家で体験できるとあり、外食や中食のライバルとなる存在だ。
2人分かファミリー(4人分)の2つのプランから選ぶことができ、値段は1人1食あたり10ドルほど。週1回、指定した曜日に2~4種類のレシピと材料が入ったボックスが自宅に届く。毎週、月1回といった具合に、頻度はユーザーがコントロールできる。
夕食のレパートリーを増やそうと数週間試した。普段使わない食材の使い方を知ったり、新たな調理法を学べたりする点では有意義だった。しかし肉を常温に戻し、食材を切るところからスタートするため、手際の悪い筆者は思ったよりも時間がかかった。月数回など限られた頻度での非日常的な楽しみとして利用するものだと感じた。
ブルーエプロンよりもう少し日常的に利用できるサービスとして、ガブルがある。こちらは調理時間15分以内、フライパンひとつでできる点を売りにしている。材料はカットされ、レシピも3ステップとシンプルだ。こちらも2人分かファミリーから選ぶことができ、週1回3種類のレシピと材料が届く。
利用してみると、非常に手軽だ。ただ1食12ドルほどと、家計的には気軽ではない。ニールセンの米国のミールキット利用に関するアンケートでは、46%の人が「もう少し安ければ利用する」と答えている。
価格を抑え手間もかけずということで、今年7月にディナリーというサービスが始まった。こちらは1食5ドル、30分で調理できるレシピを提供している。1つのメニューは6種類の材料で構成され、材料を少なくすることでコストを抑えるとともに、プロセスを簡単にしている。レシピカードを付けないなど細かなコスト削減も行っている。
みうら・あかね 上智大学卒。サンフランシスコ在住。米国でアーリーステージのスタートアップ投資を行うスクラム・ベンチャーズ マーケティングVP。
こちらも試したが、スパゲティ、ミートボール、ハンバーガーなどアメリカ的なメニューが多く、長続きはしなかった。アメリカ人にはマッチするのかもしれない。
ほかにもヴィーガン特化、子供向け、ラーメン専門など、様々なミールキットが続々と生まれている。そしてアマゾンも今年6月からエリア限定(シアトル近辺)でミールキットサービスを始めた。価格帯は2人向けのキットが20ドルほどなので、1食で考えればブルーエプロンと同程度だ。
他社の後追いのように見えるが、大きく勝っている点がある。1つからアマゾンフレッシュで注文できる点だ。アマゾンフレッシュの物流に乗せることができるため、1週間単位で複数のレシピをまとめて宅配するのではなく、必要なタイミングで必要な分だけ注文することができる。
1週間単位の注文は予期せぬ外食などにより、食材を翌週に持ち越してしまうことがままあるが、アマゾンの方式なら、冷蔵庫で待っているミールキットにプレッシャーを感じることもないのだ。将来アマゾンプライムナウなどと連携されれば、1時間程度で届くことも考えられるだろう。
アマゾンの参入で、物流面での工夫も課題になりそうなミールキット市場、はたして18年はどうなるか。利用者視点ではさらに便利になりそうで、これからの展開が楽しみである。
[日経MJ2017年12月15日付]