原発事故によって甲状腺がんが発生しているかのような印象操作

2017年11月11日

2017年10月3日放映の「NHKクローズアップ現代+」は、福島第一原発事故の影響で生活環境を損なったことを訴える訴訟(いわゆる「生業訴訟」)を取り上げました。

番組中、子どもが甲状腺検査でごく小さな「嚢胞」が見つかり「A2」と判定されたことについて、(原発事故後に避難せず、福島にとどまったという)「親としての判断が間違っていたんじゃないかと今でも悔やんでいる」とのテロップが流されました。

これは事実を誤解させ、不安や偏見の原因をつくる印象操作報道です。

画像の出所

放送された当該番組より

2017年103日放送NHKクローズアップ現代+「全国最大の“原発訴訟” 責任は誰に?」をめぐって
https://togetter.com/li/1157599

経過

2017104日、番組の内容を批判するtogetterまとめが作成されました。

2017年103日放送NHKクローズアップ現代+「全国最大の“原発訴訟” 責任は誰に?」をめぐって
https://togetter.com/li/1157599

情報の検証

国連科学委員会の報告書などでも発表されているとおり、「福島県の甲状腺検査で見つかった甲状腺がんは原発事故による放射線被曝の影響ではない」という点で、国内外の専門家の意見はほぼ一致しています。

今回NHKは「A2」という判定について“経過観察が必要”と強調しましたが、「A2」についての「経過観察」とは、何もしなくても問題がないものの、定期的に甲状腺検査が行われるという特殊な状況にある福島では「次回の検査まで何もしなくて良い」という表現をされるという意味に過ぎません。

本記事に関する基礎知識はこちら

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