アントレプレナーはいつ生まれるか?(前編)
内閣総理大臣安倍晋三夫人 / 安倍昭恵(あべあきえ)

日本全国そして世界を舞台に活躍するアントレプレナーを紹介し、その成功のメソッドを解き明かす企画。アントレプレナーとは何か。普通の人がアントレプレナーに変わる契機とはどんなものか。連載の第1回目では、歴代日本のファーストレディの中でも最もアクティブに活動し、自らの考えを発信する安倍昭恵さんをINTILAQ東北イノベーションセンターにお招きして、話を聞いた。
内閣総理大臣安倍晋三夫人
1962年東京都出身。87年に安倍晋三氏と結婚。ミャンマーでの寺子屋設立や、山口県産の無農薬米「昭恵米」栽培、居酒屋UZUの経営など、従来ステレオタイプの「ファーストレディ像」には収まりきれない幅広い活動を行う。安倍政権の政策に公然と異議を唱える「家庭内野党」を公言している。
<インタビュアー>
齋藤ウィリアム浩幸
1971年カリフォルニア出身の日系二世。内閣府本府参与。自身も20代で米マイクロソフト社に事業売却を果たしたアントレプレナーであるが、現在は次世代リーダーの育成をテーマに活動しており、社団法人IMPACT Foundation Japanを設立、理事長を務める。IMPACT Japan Foundationはカタールフレンド基金による活動の拠点としてINTILAQ東北イノベーションセンターを設計、開設、運営している。
きっかけはどん底の体験。
残った悔いが、自分らしく生きる決意に繋がった。
インタビューの趣旨は若いアントレプレナーの支援です。私自身、アメリカでベンチャーを起業した経験がありますが、いつ倒産してもおかしくないような危機を、日本企業で働くビジネスの先輩たちからの支援によって乗り越えて、何とかマイクロソフトへの事業売却、というゴールに辿り着かせてもらったという過去にとても感謝しています。INTILAQのブログ誌面でこれから掲載していきたいと考えているインタビューの連載記事では、先人たちの成功体験や失敗体験から、チャレンジを継続しギブアップすることなく目的とする成果へ到達するための指針を示せたらと考えております。その記念すべき第1回目のゲストとして、安倍昭恵さんにお越しいただきました。
私はチャレンジャーではまったくないので、あんまり役に立たないかもしれませんが大丈夫ですか?
そうは仰いますが、東北復興支援、無農薬米「昭恵米」の栽培、居酒屋UZUの経営などなど…短い期間の中だけでも幅広い事業を精力的に立ち上げていらっしゃいます。新しいことをやってみよう、挑戦してみようという、イノベーティブな気質は、生まれ持ったものなのでしょうか。それとも何かきっかけがあって、意識されるようになったのでしょうか。
きっかけがあるとしたら、2007年に主人が総理大臣を辞任したとき、ですね。健康上の理由からの苦渋の決断だったのですが、当時は多くの人から「たった1年で総理大臣の職を投げ出すなんて」と厳しい批判を受けました。主人が入院中、病院と公邸を往復する車の中で私、泣いてしまいました。道を行く人の笑顔を見るだけで、辛い気持ちになったんです。なんでみんなが楽しい気持ちで過ごしているのに、自分はこんなにも辛いのだろう。この悔しい気持ちを本当にわかってくれる人はいない、話せる人もいない。そう考えると、とても孤独を感じて…どん底の経験ですよね。だから、主人が2回目の総理大臣に就任することが決まったときには、自然と思えたんです。2回目の政権では、1回目にはできなかったことを悔いなくやり尽くしたい。できることは何でもチャレンジしようって。
首相夫人も借金をする。
起業のリスクは誰にでも平等である。
私、今は山口県に宿泊施設を作ろうとして、クラウドファンディングでお金を集めているところなんです。東京でやっている居酒屋UZUを開店するときにも銀行から融資を受けました。お恥ずかしい話ですが、私には自分で自由に使える貯金があまりなくて…。事業計画を作成して、審査を受けてと、当たり前のことですが、起業を志す他の方々と同じプロセスを踏まなければならなかったのです。今回の宿泊施設のオープンに際しても、私にしてはちょっと大きな借金をすることになっているのでクラウドファンディングにご協力をいただけると幸いです(笑)
※クラウドファンディング:インターネットを経由し、不特定多数の人に出資を募る新しいタイプの資金調達手法。アントレプレナーが起業する際、従来的には資金調達の手法は機関投資家や金融機関からの融資、株式の分配、といった大掛かりな資金調達のハードルがあった。
※山口県の宿泊施設:『下関を世界有数の港町に!複合施設ウズハウスで町を元気にする』(https://readyfor.jp/projects/uzuhouse)
ぜひ協力させていただきます(笑)
起業のリスクは首相夫人も他の人と変わるところがないとわかれば、もっと「自分も!」という人が増えるかもしれませんね。安定、安心を求めてチャレンジすることを怖れている日本人は非常に多いですが、現状を維持するということは決してノーリスクの選択ではないという事実は、変化の激しい現代ならではの問題です。だからこそ前向きな変化を楽しもうとする安倍昭恵さんの姿勢は、ぜひ多くの人に見習ってほしいと感じます。
INTILAQアントレプレナーインタビュー:安倍昭恵さん(中編)に続く…