2017年を振り返って(その1)

新年の迎えかたは、日本式のほうが好尚にかなっている。
イギリスやニュージーランドでは、ご存知のとおり、人がおおぜい集まってきて、広場で、カウントダウンを唱和して、年が明けると、ドドオオオーン、ヒュヒューで花火が盛大にあがって、大好きな人と、あるいは単に隣り合わせた人と、キスをして、シャンパンで飲んだくれて盛り上がる。
オークランドでは派手さが足りないので、橋ごとブオオオオンと花火に包まれるシドニーまで出張る人もたくさんいる。

わしは性格が温和でおとなしいの(そこのきみ、なにを笑っておる)大騒ぎは嫌いで、ふだんの日にしかやらなくて、わざわざ年が変わった次の刹那までバカ騒ぎをしようとはおもわない。
いちど、高いビルのペントハウスから年を迎えるバカ騒ぎを眺めていたことがあったが、若い衆は、屋根の上にのぼって、ビールを飲みながら、花火を眺めている。
観ていると、エッチしてるやつまでいる。
あんなタイミングだと姫終わりと姫初めの二度に及ばなくてはならなくて、新年早々大義である、とおもうが、本人たちは辺りに人目がなくなればのべつまくなしにイチャイチャモンモンしているだけで、特に新年とは関係がない通常行為なのかも知れません。

日本のお正月はドラマや映画で観るだけで、実態というか内情が判らないが、ひとに聞くと、紅白歌合戦というベラボーな長寿番組を観て、行く年、来る年をみて、永平寺には雪がふっていて、鎌倉ならば、ごおおおーんごおおおーんと鳴り渡る除夜の鐘を聴いて、おめでとうございます、と述べあうのが正統であるらしい。

そっちのほうが、ぜんぜんカッコイイじゃん、とおもう。

いちどだけ飛行機のなかで新年を迎えて、1月1日をシンガポールで迎えたことがあったが、ホテルの受付のマレー系のねーちゃんに、いつものごとく、アホな軽口を利いて「シンガポールは洋式と春節と二回正月があって、いいですね」と言ったら、ものすごく怖い顔で、「あれは中国のやくざもんたちが、勝手にやっているだけで、違法です。我が国には正月は今日一日しかありません」と言われたのを明瞭におぼえている。

2017年はトランプで始まってトランプで終わる年だった。
あの見るからに頭がわるそーな、巨大なエゴと、貪欲と、四六時ちゅう欲望がおっ立った醜悪な老人の顔を毎日みることになったのだから、もうそれだけで世界の人間の悲劇は底が知れない。
スティーブ・バノンが去って、これで、まあ、なんとかなるべ、後はアメリカ国内の問題だから、アメリカ人が勝手に沈没すればええわ、と考えたのは浅慮で、気まぐれと、玉突きのごとく右往左往する感情とで、テキトーに巡航ミサイルをぶっ放したりする老人の考えは、予測するということが出来なくて、当初は、そもそもトランプの雇い主なんじゃないの?と疑われているプーチンですら、当惑が隠せないのが見てとれた。

近所のおおきな家を買った中国の富豪だかなんだかという噂の人が買って、貸家にしたことがあって、賃貸管理会社がええかげんで、11人くらい集めて来た店子がとんでもないやつばかりで、なにしろ毎晩遅くまでパーティでどんちゃん騒ぎを繰り広げていたことがある。
いま考えてみると、あれはPパーティで、「P」というのは覚醒剤のメタンフェタミンのことだが、このフェニルメチルアミノプロパンで、すっかりいかれて、ある日曜の朝などは屋根の上で20人くらいが踊り狂うというくらいひどかった。

ふだんは、お互いに姿を見かければ手をふって挨拶するだけで、「近所づきあい」は年に1回くらい一緒に夕食を食べにいく程度しか行わないのがニュージーランド式だが、あんまり無軌道でうるさいので、だんだん通りで近所の者同士が寄ると触ると噂を述べあうようになった。
結局、近所人が列席して、ミーティングを開いて、弁護士が雇われ、中国の人の所有だというのはアジア人への反発をうまく使った偽装で、マフィアだかなんだかだと判明した家主の正体を事務弁護士が突き止めて、出ていきなはれ、と勧告して、追いだしてしまったが、この「無軌道で、なああああーんも考えてない、欲望のみにしたがったケダモノじみた若者たち」が、トランプと行動パターンがそっくりであることには、近隣のひとびとは皆気が付いていて、近所迷惑事件以来、不思議にもお互いを誘ってパブやなんかに行くことが多くなったテーブルで、よく話題になっていた。
なにしろ、頭のなかに論理や未来への展望というものが存在しないので、やることに予測がつかない。
欲望のまま、あの野郎は黄色い野郎だから虫がすかねえ、と内々に言っていたかとおもうと、オカネニンジンを目の前にぶらさげられたとかで、突然、習近平って、いいやつじゃん、と言い出すというデタラメさで、2017年は、アメリカが、ここまで積み上げた、自由だの平等だの、アメリカンドリームがうんちゃらで、希望の国なんだぜ、ここは、のソフトパワーが一気に化けの皮が剥がれて、ゼロになって、ゼロの床も突き抜けてマイナスになって、あっという間に「ふつーの国のなかでいっちゃん強い国」というだけの存在に変わっていった。

日本の人に判りやすくいえば、バブル絶頂期の日本と似た存在で、世界でいちばん繁栄していて、うらやましいとはおもうが、誰も尊敬しない国になった、ということです。

トランプの大統領職への当選は、ビンボ白人パワーの炸裂ということになっているが、それは見かけだけのことで、だんだん調べていくと、構造的には例のCollateralized Debt Obligationを手品にしたウォール街人たちの犯罪を、訳はわからないなりにインチキを嗅ぎ取って、北欧州ならば絶対に大量の逮捕者を
出して、犯罪性が詳細に追究されるべき事態であるのに、野放しにして、末端のヘータイに至るまで別荘を手に入れ、ウハウハウハ、だからアメリカンドリームは好きなのよおー、儲かっちった、ビンボ人の犠牲? 負け犬がガタガタ言ってんじゃねーよ、あんたに複雑な金融が判るわけないでしょ、をしている醜悪な人間たちを見て、「これがアメリカであるはずがない」と考えて、ラッダイト運動に似た破壊行動に出たのがトランプへの支持、というよりもヒラリー・クリントンへの激しい拒絶と不支持の原因だった。

ラッダイト運動である以上、トランプがダメ男であるのは承知のうえで、これまでヒラリー・クリントンが象徴するエスタブリッシュメントやバラク・オバマが象徴する理念を完膚ないまでに破壊する人間なら誰でもよかったわけで、マスメディアの予測とは異なって、次期大統領も、昼ご飯に、ビッグマックふたつとフィレオフィッシュふたつ、山盛りチップスを特大コーラで流し込むトランプが元気ならば、75歳のならず者が再選されるだろうし、もうこりゃボロくなって使いものにならねーな、ということになれば、もっとひどいのが大統領になるだろう。

つまりは「オバマまでのアメリカ」の理念が瓦礫の山になるまでは、止まらないのではないかという気がする。

通俗版バノン戦略みたいなことになっている外交は、これも滅茶滅茶で、国務長官時代の実績をみれば外交の勘がよかったヒラリー・クリントンならば、とっくの昔に世論を誘導して、「アメリカの大義」を盾に周到に準備して北朝鮮と開戦しているだろうが、ツイッタを使って罵りあいをするという、あんた高校生ですか、な挙にでて、どんどん「偶発戦」の可能性が高まって、その結果、どういうことになったかというと、あっというまに中国に東アジア全体のヘゲモニーを握られて、それまでは戦域から一衣帯水の、隣に位置し続けることによって弥栄に栄えてきた日本は、戦域下の国になってしまった。
もっとも、副産物としてひとつ1000億円を超えるミサイル迎撃システムをいくつも買わせたり、一発1億6千万円の巡航ミサイルを、これから先どんどん仕入れさせる、F35も、ま、おひとついかがですか、お代はリボルビング払いで結構です、という軍需商売に、日本政府はホイホイ払ってくれるのが判ったので、運がいいというか、いまのトランプの頭にあるのは、時期を見計らって、日本に北朝鮮と代理戦争をやらせて、アメリカは「忠実な同盟国として支援する」という黄金シナリオでしょう。
この方式であると、北朝鮮が例えば大気圏への再突入技術を確立していないのでまだダイジョブをしておけば、国民が不安になることもなく、先延ばしをして、韓国と日本に地上軍を編成させて、アメリカ軍はその指導にあたって、ベトナム方式で、例え、いまはあっというまに敗北するだろうということになっている北朝鮮のゲリラ戦に特化した部隊が意外に強くて長期化しても、地上戦も経営してゆくことが出来る。

核の標的も日本なので、日本が「平和国家でいたい」と言い出すと困るが、その心配はなさそうなので、どんどん兵器を買ってもらいながら、戦争当事者をアメリカから日本にすり替えるチャンスが増えてくる、という考えなのでしょう。

トランプと周囲を固めた軍人内閣みたいなヘンテコなホワイトハウスの浅慮から生まれた新しい東アジアの情勢の最大の変化は、アメリカと日本の側から見るかぎり「日本の戦域化」だが、実はほんとうになにが起こっているかは、外交・軍事でいえば、太平洋の西側を南北につなげて見ている習近平のほうから眺めないと、うまく理解できない。
習近平は、どうやら十九大後の動静を見ていると2022年頃までに台湾を併合するつもりでいるらしい。
あいだの説明をとばして言うと、これには意外な意味があって、しかも日本にとってはおおきな意味があって、一面、アメリカとの直截対峙の第一歩を踏み出したことになる。
やってみて手強ければ、手を緩めて、米中直截対話型の和平で時間を稼ぐだろうし、一気に西太平洋に覇権を確立して、太平洋の西側を「中国の海」にする可能性がある。
日本人からすると、最も恐ろしいのは金正恩でもプーチンでもなくて、習近平で、この強運に恵まれた政治家は、国内にライバルがおらず、経済は躍進して、人民解放軍にも伝統の独立性を維持しうる人材がいない、という好運に恵まれて、十九大で高らかに宣言したように、いまや鄧小平を越えて、毛沢東にほんの僅か足りない権威を持ったと自覚している。
次に目指すのは毛沢東をはっきりと超えた権威を持つことで、台湾併合は、そのためにどうしても必要な外交成果と考えているもののようです。

日本が遅かれ早かれ戦争に巻き込まれることを、このブログでは何年も前から書いて、それに対する日本の人の反応は「誰の得にもならない戦争なんて起こるわけねーじゃん、頭おかしいw」から、「マジかも」に変わってきた。
だから、もう、「危ないんちゃう?」と述べる時期は終わったのだとも言えて、これから日本が入ってゆく戦乱の世紀を、多分、その頃には安倍政権を選択したことの非を悟っているはずの日本国民が、どう舵をとってゆくか、遠くから眺めていこうと思っています。

肝心要の経済を、ここから書かなければならないが、いつものことで、ぶちくたびれてしまった。

また回を分けて書きます。
産業を育成しなくても経済は繁栄しうるという安倍内閣や黒田総裁の信念が、どうなるか、アベノミクスはひどい失敗に終わったが、国のオカネで買い支えた高い株価をテコにした心理効果で、なんとか財政がおっちゃぶれる前に、国民ごと浮かれて好景気ブームを起こそうというマスメディアも一丸となった手で、景気がよくなっていくかどうか、自分で考えて観たこと書き記しておこうと思っています。

来年になっちゃったりするかもだけど。

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