ロイヤルホストなどを運営するロイヤルホールディングスが試験的にオープンした「現金支払いお断りの店」が、ちまたで話題となっている。SNSなどでは批判的な意見も多くあり、「消費者視点が欠けている」「現金で払おうとしている人は一方的に断るのか」「店員とのコミュニケーションがない店にはいかない」などネガティブな意見が多く発信された。
しかし、筆者からすれば「いまの時代、現金主義者こそが社会悪なのである」。
このようにTwitter(@310JPN)でつぶやいたところ「別に社会に迷惑かけてねーわ!」という怒りのリプライが返ってきた。そうか、分かってもらえないのか…。
そこで今回は、なぜ現金主義者が社会に迷惑を掛けることになるのか、また、その「思考停止」によってあなたの人生にどれだけの損失が生まれているのか、そして、本当にキャッシュレス社会を実現することは可能なのか、を記したいと思う。
ロイヤルホールディングスはなぜ現金お断り店を作ったのか。まずはそこから考えたい。
飲食ビジネスで最も重要なポイントが「人件費の調整」であることは論を俟たない。人件費をいかに削減するかは、健全経営を目指すうえでの至上命題だ。ロイヤルホールディングスの狙いは、まさにそこにある。客の利便性向上が狙いではなく、わずらわしく人手がかかる現金の管理をなくし、注文もタブレットにすることで作業効率を上げ、人件費を抑えることが、「現金お断り」の目的だ。
今後、飲食店ビジネスでは、提供するべき価値の「切り分け」が進んでいくと考えられている。大まかには、➀食事を提供する機能と、②顧客が滞在する場を提供する機能、そして③コミュニケーションの場としての機能、だ。
簡潔に説明すると、➀食事を提供する場とは、とにかく食べるための空間にするということ。吉野家の牛丼のような、早い、安い、美味い、を追求した形態だ。
続いて②滞在の場は、デートや接待で使ってもらうための空間を目指す形態。そして、③コミュニケーションの場は、その店に集まる人たちや店主との関係性を楽しむことに、対価を支払ってもらう、という形である。
このように、従来の「幕の内弁当的」な飲食店の形態から、顧客がそれぞれの機能を、その時の気持ちで選んでいく時代に突入していく。そのなかでチェーン店が生き残るためには、(店長や常連客とのコミュニケーションの場としては機能するはずがないので)食事提供機能を充実し、一部、滞在の場として利用してもらうことを追求するしか生き残る道はないのだ。
そのために重要なのは、必要とされる機能を研ぎ澄ますことだ。人手不足が叫ばれる中、さらに人件費が高騰すれば、当然、メニューの値段を上げなければ人件費を吸収できなくなる。しかし、これ以上値段が上がれば、顧客離れが起きるだろう。
ロイヤルホールディングスは、「安くて美味しいもの」を提供すべく、そして人件費コストを下げるために、「現金お断り店」を試験的に導入したのだろう。これは、企業の生存戦略としては正しい選択だ。それに対して現金主義者が「我々を見捨てるのか!」と声高に叫べば、関係企業は委縮して、新たな時代に対応するための選択を採れなくなってしまう。
いち優良企業の成長と、新たな経営モデルが阻害されることは、社会全体の損失といってもいいだろう。これが、「社会悪」の一つ目の理由だ。