あなたが土地を相続する事になった場合、土地にかかる相続税がいくらなのかという事が気になると思います。そもそも相続税はどういう計算方法で求めるのか、みなさんご存じないですよね。いくつかのステップを踏まえて相続税は求められますのでこれからその方法については順を追って説明させて頂きます。
しかし、まず皆さんにご理解頂きたいのは、“相続した全財産の金額に対してかかる税率”を求めなければ、本来は実際にあなたが支払う”相続税”がわからないという事です。
つまり、相続税とは相続する財産の一つである土地“だけ”の金額を判断して、相続税が決定しているわけではありません。相続するすべての財産の金額に対して税率をかけて計算して初めて、相続税を算出し、そこから一つ一つの財産に対してどれだけ相続税がかかるか割り振るのです。
そうは言っても土地“だけ”にかかる相続税が大体いくらなのか知りたい、という方の為に今回はその計算方法について順を追って説明してきます。
具体的にこれからご説明するのは以下になります。
- 土地の相続税の求め方
- 土地の評価の仕方
- 路線価方式、倍率方式の判断方法
こちらのステップ踏まえて計算が出来れば土地だけに掛かる相続税を求める事が出来ますので、是非あなたもこのやり方を理解して実際に計算して求められるようになって下さい。
目次 [非表示]
1.土地の相続税の計算方法
それでは具体的に土地の相続税の計算方法についてこれからご説明していきます。
土地の相続税を計算する際に大切な3つのステップがありますのでそちらをまずはこの章で理解を深めて欲しいと思います。
1-1 計算方法の全体像と3つのステップ
あなたが土地を相続する事になった場合、土地の相続税を計算するためにはまずは土地の評価額がいくらになるのか知らなくてはいけません。なぜなら正確な土地にかかる相続税を計算するためには必要不可欠だからです。土地の相続税の計算方式は以下の通りです。
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土地の相続税の計算式=(土地の評価額-基礎控除額)×相続税率-控除額
参考:https://fudousan-kyokasho.com/route-value-8492(不動産投資の教科書)
上記の計算式を分解すると3つのステップを踏む必要があるのがわかります。
- ①土地の評価額を計算して算出する
- ②土地の評価額から相続する人数分の基礎控除額を引く
- ③最後に①-②を引いた金額に相続税率を掛け、控除額を引く
つまり、図に表すと下記の流れになります。
上記の3ステップからわかるようにまず土地の評価額を求める事が大前提となります。
土地の評価額の計算方法は「路線価方式」と「倍率方式」の2通りがあり、相続した土地によって計算方法が異なります。
まず第2章では路線価方式で土地の評価額を求めた場合、次に第3章では倍率方式で土地の評価額を求めた場合、それぞれで①~③のステップの計算方法についてまとめていきます。
1-2 2つの土地の評価方式の見分け方
実際に土地の相続税の計算を始める前に、まずは先程ご説明をしたようにあなたの土地が「路線化方式」と「倍率方式」のどちらで計算するべきなのか判断する必要があります。
基本的に「路線化方式」で計算する際は市街地、「倍率方式」で計算する際は市街地以外の地域である宅地や田、畑、山林などになります。
しかし、どのようにそれは判断されているのか分からないですよね。
実は、国税庁のHPを見れば実際に路線価方式か倍率方式で計算するべき土地なのかが判断する事が出来ます。因みに、「路線価方式」で求める場合は数字とアルファベットの記載があり、「倍率方式」で求める場合は倍率地域と記載があります。
下記に国税上のHPの見方を4つのステップで説明していますので、写真を見ながら理解をしてみて下さい。そして、実際にあなたの土地がどちらの評価方式に該当するのか国税庁のHPから判断してみましょう。
路線価方式の方は2章で、倍率方式の方は3章でそれぞれの計算方法をまとめているので該当する章で実際に計算してみて下さい。
①国税庁の路線価図・評価倍率表のHPに入ると下記のトップページが出てくる
②調べたい都道府県を選択し市区町村を選ぶと下記の画像が出てくる
③路線価が示されている場合は下記のような場所
参考:http://osd-souzoku.jp/tochihyouka(表参道相続専門税理士事務所)
④それ以外の場所は倍率地域と書かれている
2.路線価方式路線価方式の場合の計算方法
「路線価方式」とは、国税庁が定めた路線価(道路・路線に面する宅地1平方メートルあたりの評価額)に土地の面積を掛けて土地の評価額を求める方やり方です。2つ以上の道路に面している、または複雑な形をしている土地は、評価時に補正率を使い調整して計算されます。
主に路線価方式が適用されるのは、路線価が定められている市街地になります。また、路線価とは毎年1月1日に評価され、8月頃に国税庁のHPから発表されます。そのため、路線価は毎年変更されるので、計算する際は必ず忘れずに確認して下さい。
それでは、1章で説明した下記の3つのステップに沿って土地の相続税を実際に計算して求めていきましょう。
2-1 土地の評価額を計算する
あなたの土地が実際に路線化方式で計算できる土地である市街地だと分かったら、実際にステップ①の路線化方式で土地の評価額を求めてみましょう。
路線化方式の計算方式は下記の通りです。
路線価方式の計算式=正面路線価×奥行価格補正率×土地の面積
奥行価格補正率とは、土地の奥行が複雑な土地や、土地の活用がしにくい土地など、土地の評価額が下がらないように調整を果たす役割として設定されています。
そのため土地の奥行距離により、奥行価格補正が異なります。詳細は下記の表の通りです。
参考:https://www.nta.go.jp/shiraberu/zeiho-kaishaku/tsutatsu/kihon/sisan/hyoka/02/07.htm(国税庁HP)
以上を踏まえて実際に路線価方式で計算してみましょう。国税庁のHPに計算例があるのでそちらを抜粋した物が下記になります。
路線価方式による評価額の計算例
- 正面路線価:30万円(300×1000円)
- 奥行価格補正率:1.00(上記、奥行距離一覧表記載)
- 土地の面積:180m2(18m×10m)
- 土地の評価額:30万円×1.00×180=5,400万円
- 注:普通住宅地区における奥行18mの場合の奥行価格補正率は、1.00です。
参考:https://www.nta.go.jp/shiraberu/ippanjoho/pamph/koho/kurashi/html/05_4.htm(国税庁HP)
上記のように路線化方式で計算した場合、土地の評価額が5,400万円だと求められました。
2-2 基礎控除額を引く
実際にステップ①の路線価方式で土地の評価額が算出されました。それでは次はステップ②の土地の評価額から基礎控除額を引いていきましょう。
まず、その前に基礎控除額についての説明ですが、相続税法により基礎控除額が決められているため相続する人数分の金額が非課税となります。そのため、まずは土地の評価額が計算する事が出来たら、次に相続する人数分の基礎控除額を求める必要があります。
国税庁の続税法で定められた基礎控除額の固定金額は3000万円、さらに相続人数分1人につき600万円です。つまり、相続人数に合わせて基礎控除額の金額は違います。
下記に基礎控除額の金額一覧を作成しましたのでこちらもご確認下さい。
参考:https://souzokuzei-pro.com/columns/68/(相続税相談ナビ)
基礎控除額の計算方式は下記の通りになります。
相続税の基礎控除額=3,000万円+相続人の数×600万円
ステップ①で求めた5,400万円の土地を相続する人が1人だとします。
その場合の基礎控除額を求める計算式は【相続税の基礎控除額=3,000万円+相続人の数×600万円】なので、3,600万円になります。
土地の評価額は5,400万円、基礎控除額は3,600万円でした。つまり、土地の評価額-基礎控除額をした場合、5,400万円-3,600万円=1,800万円となります。
2-3 相続税率を掛けて控除額を引く
ステップ1、ステップ2でそれぞれ金額を求める事が出来ました。それでは最後のステップ3で、ステップ2で求めた金額に相続税率を掛けてから、そこから控除額を引いて土地の相続税を求めていきましょう。
まず、その前に相続税率は対象となる資産の金額によって相続税率と控除額が違います。つまり、計算する際にその事を理解しておく必要があるため注意が必要です。
相続税の税率及び控除額の速算表は、以下の通りとなりますのでご確認下さい。
参考:https://www.nta.go.jp/taxanswer/sozoku/4155.htm(国税庁HP)
今回ステップ②で求めた土地の評価額から基礎控除額を引いた金額は1,800万円でした。上記に表でまとめてありますが、資産の金額が「1,000万円超~3,000万円以下」の場合の税率は、「15%」となります。また、控除額は「50万円」です。
という事は、ステップ3で、ステップ2で求めた金額に相続税率を掛け、控除額を引いた場合は、数字を当てて計算すると、1800万円×15%-50万円となります。計算すると220万円が割り出されます。
つまり、土地にかかる相続税の金額は220万円になります。計算式でまとめると下記の通りです。
そもそも土地の相続税の計算式は下記でした。
土地の相続税の計算式=(土地の評価額-基礎控除額)×相続税率-控除額
それを3つのステップに沿って各章で求めたものが以下の通りになります。
- 土地の評価額:5,400万円(ステップ①、2-1参照)
- 基礎控除額:3,600万円(ステップ②、2-2参照)
- 相続税率:15% 控除額:50万円(ステップ③、2-3参照)
- (5400万円-3600万円)×15%-50万円=220万円
以上から、土地にかかる相続税は220万円となります。
上記の3つのステップに沿って、路線化方式で土地の相続税を計算する事が出来ました。3章では倍率方式で3つのステップに沿って計算していきましょう。
3.倍率方式の場合の計算方法
「倍率方式」とは、固定資産税評価額に国税局長が定めた地区と種類毎に定められている、一定の倍率を掛けて土地の評価額を求めるやり方です。主に倍率方式が適用されるのは、路線価が定められていない市街地以外の地域である宅地や田、畑、山林などになります。
また、固定資産税評価額は3年に1度改定され、都税事務所・役所などで確認をする事が出来るので計算する際は必ず確認をして下さい。倍率に関しても地区と種類毎に細かく設定されているため、国税庁のホームページで確認して下さい。
それでは、1章で説明した下記の3つのステップに沿って土地の相続税を実際に計算して求めていきましょう。
3-1 土地の評価額を計算する
あなたの土地が実際に倍率方式で計算できる市街地以外の地域である宅地や田、畑、山林などだと分かったら、実際にステップ①の倍率方式で土地の評価額を求めてみましょう。
倍率方式の計算方式は下記の通りです。
倍率方式の計算式=固定資産税評価額×税率
まず、固定資産税評価額を調べるには2通りの方法があります。
- ①固定資産税の「納税通知書」に同封された、「課税明細書」を見る。
- ②評価額を証明した「固定資産評価証明書」を取得する。
①の場合では、毎年6月前後に都税事務所または市区町村役場から送られてくる固定資産税の「納税通知書」の中に同封されている「平成○○年度 固定資産税・都市計画税 課税明細書」という明細書を見ると、固定資産税の金額がわかります。
以下が都税事務所発行の「課税明細書の見本」と「見方」になります。
参考:http://www.sato-legaloffice.jp/fudosan/koteishisansyomei.html(佐藤卓哉司法書士事務所)
②の場合では、都税事務所や市区町村役場で固定資産評価額だけを証明した「固定資産評価証明書」という証明書を発行してもらうやり方です。この「固定資産評価証明書」は、相続や売買、贈与、財産分与等で不動産の名義を変える登記を申請する際に、必ず必要になる添付書類です。
基本的には都税事務所または市町村役場の市民税課など、固定資産税を担当している係で交付を受ける事が出来ます。詳しくは、不動産を管轄する市町村役場に確認してみて下さい。
下記は都税事務所発行の見本になります。市町村役場の発行の様式とは異なりますが、記載されている内容は基本的にどこも同じです。
参考:http://www.sato-legaloffice.jp/fudosan/koteishisansyomei.html(佐藤卓哉司法書士事務所)
次に税率についての調べ方ですが、まず国税庁の路線価図・評価倍率表のHPに入ってから、調べたい地域の都道府県、市区町村を選択していきます。
左側に「この市区町村の表か倍率表を見る」というボタンを押すと、その下の図にあるような掲載例が出てきます。右上にあるよう宅地・田・畑・山林・原野・牧場・池沼など土地の分類毎に倍率が異なります。
自分の所有している土地の固定資産税評価額に、土地の分類にあたる倍率を掛けて計算すれば、倍率方式の計算式で土地の評価額を求めることが出来ます。
上記に計算例が出ていますが、倍率方式で宅地と畑の土地の評価額が算出されました。
- 宅地⇒1000万円(固定資産税評価額)×1.1(税率)=1100万円
- 畑⇒5万円(固定資産税評価額)×48(税率)=240万円
それではこのまま上記の条件を引き続き用いて、実際に土地の相続税を算出してみましょう。
3-2 基礎控除額を引く
実際にステップ①の倍率方式で土地の評価額が算出されました。それでは次はステップ②の土地の評価額から基礎控除額を引いていきましょう。
まず、その前に基礎控除額についての説明ですが、相続税法により基礎控除額が決められているため相続する人数分の金額が非課税となります。そのため、まずは土地の評価額が計算する事が出来たら、次に相続する人数分の基礎控除額を求める必要があります。
国税庁の続税法で定められた基礎控除額の固定金額は3000万円、さらに相続人数分1人につき600万円です。つまり、相続人数に合わせて基礎控除額の金額は違います。
下記に基礎控除額の金額一覧を作成しましたのでこちらも再度ご確認下さい。
参考:https://souzokuzei-pro.com/columns/68/(相続税相談ナビ)
基礎控除額の計算方式は下記の通りになります。
相続税の基礎控除額=3,000万円+相続人の数×600万円
上記の宅地の1,100万円の土地を相続する人が一人だとします。
その場合の基礎控除額を求める計算式は【相続税の基礎控除額=3,000万円+相続人の数×600万円】なので、3,600万円になります。
土地の評価額は1,100万円、基礎控除額は3,600万円でした。土地の評価額よりも基礎控除額の方が高くなります。
上記の畑の240万円の土地を相続した場合も土地を相続する人が一人だとして計算した場合、土地の評価額は240万円、基礎控除額は3,600万円となります。こちらも土地の評価額よりも基礎控除額の方が高くなります。
- 宅地⇒1,100万円-3,600万円=▲2,500万円
- 畑⇒240万円-3,600万円=▲3,360万円
この場合は計算するとどちらもマイナスになってしまいました。
3-3 相続税率を掛けて控除額を引く
ステップ1で金額を求められましたが、ステップ2で計算した場合マイナスになってしまいました。
通常は最後のステップ3で、ステップ2で求めた金額に相続税率を掛けてから、そこから控除額を引いて土地の相続税を求めていく流れとなります。
因みに、相続税率は対象となる資産の金額によって相続税率と控除額が違います。相続税の税率及び控除額の速算表は、以下の通りとなりますので再度ご確認下さい。
参考:https://www.nta.go.jp/taxanswer/sozoku/4155.htm(国税庁HP)
今回の場合はステップ2で計算をして求めた際に、土地の評価額が基礎控除よりも低いためマイナスになってしまったので、ステップ3で計算する必要がありません。今回のような場合は、宅地の場合も畑の場合も相続税は発生しません。
つまり、相続税は【相続税の基礎控除額=3,000万円+相続人の数×600万円】以下の場合は、相続税を支払う必要がないのです。あくまでそれ以上の場合のみ、相続税は発生します。
そもそも土地の相続税の計算式は下記でした。
土地の相続税の計算式=(土地の評価額-基礎控除額)×相続税率-控除額
上記の3つのステップに沿って、倍率方式で土地の相続税を計算した場合、今回は上記の理由で相続税は発生しませんでした。倍率方式のような土地の場合、土地の評価額が3,000万円よりも低い場合のほうが多く、基本的には相続税は発生しない可能性があります。
あなたの土地がどちらにあたるのかまずは土地を確認して上記の3つのステップを踏まえて計算して頂くと、どちらの場合も相続税を求められるますので是非参考にしてみて下さい。
4.まとめ
さて、今まで土地の相続税の求め方について3ステップの順番に沿って説明をしてきましたがいかがでしたでしょうか。少しでも理解が深まったのであれば幸いです。
それでは、ここまで1章~3章までいくつか計算式が出来てきましたのでそちらをまとめておきたいと思いますので、最後にこちらをご確認下さい。
今回ご説明した3ステップの手順通り、計算式を利用して頂ければあなたも土地の相続税について計算できるようになると思いますので是非参考にしてみて下さい。
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