東京新聞のニュースサイトです。ナビゲーションリンクをとばして、ページの本文へ移動します。

トップ > 政治 > 紙面から > 12月の記事一覧 > 記事

ここから本文

【政治】

進まぬ幼保一元化 70年前、すでに国会で論議

写真

 政府が三~五歳の保育・幼児教育無償化を打ち出し、子育て政策に焦点が当たる中、幼稚園と保育所の垣根をなくす「幼保一元化」の取り組みは停滞が続いている。十年前に双方の機能を併せ持つ「認定こども園」の制度ができたが、幼稚園からの移行は進んでいない。幼保一元化は、戦後間もない国会で必要性が指摘され、七十年を経た今も道半ばだ。 (坂田奈央)

 日本には、明治時代から幼稚園と託児所(一九四七年に保育所に名称統一)があり、それぞれ当時の文部省と厚生省が所管。今も担当は文部科学省と厚生労働省に分かれている。

 国会議事録によると、女性が参政権を得た四六年四月の衆院選で初当選した越原春子は、七月の衆院の委員会審議で「婦人の職場への進出を容易ならしめるために」と幼保一元化を提案。「幼児の保育・教育こそ真に国民教育の基礎をなす」と訴え、当時の田中耕太郎文相は「大いに研究を要する問題」と応じた。

 参院事務局によると、一元化の議論は明治時代の帝国議会でも行われていた。戦後、ほとんどの四、五歳児がどちらかに通うようになった六、七〇年代に論議が活発になったという。

 認定こども園の制度が創設されたのは二〇〇六年。内閣府が所管し、今年四月時点の認定数は五千八十一園。前年より約千園増えたが、約一万ある幼稚園からの移行は三百七十七園にとどまった。保育の方が子どもを預かる時間が長いことなどが足かせになっているとみられ、待機児童が多い東京都でも幼稚園九百九十五に対して認定こども園は百二十しかない。

 共働き世帯の増加に伴い保育所が不足する一方、幼稚園の定員に余裕がある地域もある。縦割り行政が待機児童解消の障壁になっているとの指摘も出ている。

◆無償化より「待機」解消を 日本総研主任研究員・池本美香さん

写真

 保育・幼児教育問題に詳しい日本総研の池本美香主任研究員に、無償化や一本化のあるべき姿を聞いた。

 -政府の無償化方針をどうみる。

 「待機児童問題や保育の質の低下に対して十分な対策がないまま、突然、無償化の話が出てきた。無償化されても待機児童になったら何も得られない。深い議論をせずに、お金だけつけたところで、根本的な解決にならない。本来、制度を納得感のあるものにしてから最後にすべきことだ」

 -何を優先すべきか。

 「待機児童問題の解消が一つ。対症療法的なものではいけない。共働き世帯の増加で幼稚園のニーズは減っているが、認定こども園への移行は進んでいない。保育・幼児教育の制度全体を見渡し、課題を洗いざらい挙げ、抜本的に見直す必要がある。省庁の所管の一元化も検討すべきだ」

 -幼保を一元化すれば制度改善が進むか。

 「ニュージーランドは、一九八〇年代に幼児教育施設と保育施設を所管する省庁を一元化したのを起点に、国の機関がすべての施設の質を定期的に評価し、結果を園ごとに公表する仕組みを整えた。保育の質の担保や行政事務の効率化を二十年かけて実現し、二〇〇七年に無償化した」

 

この記事を印刷する

東京新聞の購読はこちら 【1週間ためしよみ】 【電子版】 【電子版学割】