耐震強度偽装に続き、外壁のタイルはく落が神戸・三宮の高層マンションを揺るがした。
「老後にゆっくりと過ごすために買った住民も多い。また苦労させられるなんて…」。「アパタワーズ神戸三宮」に住む男性(56)はため息をつく。
男性は都心の好立地を気に入りマンションを購入したが、直後に偽装が発覚。揺れの際に力が一部分に加わることを防ぐ隙間「スリット」が柱と壁の間にないなど、建物の強度不足が判明したという。「一度は別の場所に転居した。耐震補強工事や補償問題など、本当に大変な目に遭った」と振り返り、「またかという気持ち」と憤る。
女性住民(66)は「震災後に建てられた神戸の建物は、安心できると思っていたのに」と困惑する。
住民側は施工側に補修を求めたが、「経年劣化」として受け入れられなかった。マンション全体をネットで覆うなど緊急の安全策は取ったが、「いつまでもこのままではいけない」と、2016年11月に劣化したタイルの張り替えを決定。管理組合の積立金では賄えず、約1億円を借金することになった。
アパホームとの契約では、欠陥などがあった場合に売り主が買い主に対して負う「瑕疵(かし)担保責任」の期間は、引き渡しから2年とする特約が結ばれている。
住民側は「外壁タイルのはく落や浮きといった欠陥は、完成後相当期間を経過しなければ発覚しない」と指摘。訴訟では「2年で責任を免れられるという主張を許せば、買い主から売り主への責任追及の機会を奪うことに等しい」と訴える方針で、争点の一つになる可能性がある。
タイルは最高で14階からはく落。男性は「責任から逃げるのではなく、住民の安心や安全を考えてほしい。これ以上、苦しめないでほしい」と話した。(篠原拓真)