マリーンの風 成績不振からの復活を
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技術的な問題。昨年から蓄積された疲労。3月に行われたWBC(ワールド・ベースボール・クラシック)の影響。周囲は不振の理由として様々な憶測を立てている。しかし、プロ野球の世界において「成績がなぜ良くないか?」の答えを明確に導くことは難しい。運、不運も含めて様々な要素が絡み合っているはずだからだ。
そんな渡辺俊と、つい先日、遠征先で夕食を共にした。やはり、どこか元気がなく、落ち込んで見えてしまう。とりとめもない会話が1時間ほど続いただろうか。突如、食事を共にしていた初老のチーム関係者が切り出した。
「なあ、俊介よ。成功者にもっとも必要な要素って何だと思う? 例えば、経済界においてどんな人が成功を収めていると思う?」
周囲を見渡して誰も答えを思いつかないでいると察すると、少しの間を置いて、彼は淡々とした口調で話を続けた。
「それは冷や飯の食い方がうまい人だよ。どんな成功者だって、一度は冷遇されたり、挫折を味わったりしているものなのだ。絶対にそう。どんな成功者だって、そうだ。そんな時に、どうふるまうかで人間の価値は決まると思う。将来が決まると思う。七転び八起きという言葉もあるよね」
ハッとさせられたのだろう。渡辺俊の目は明らかにそれまでと違っていた。輝いて見えた。確かに今年、白星から遠ざかっている。それで落ち込むことは簡単だ。しかし、ただ落ち込むだけでは、なんの進歩もない。その中で、再び成功を収めるために、何を反省し、この経験をどう生かすか? 実は今年の挫折は輝かしい未来のためへの大きなステップなのかもしれない。そう思うだけで不思議とエネルギーが沸いてきたようだ。
「ピンチは実はチャンスだったという言葉を本で読んだことがある。失敗を糧に、その後をどう過ごすか。クヨクヨばかりはしていられないよね」
店を出たとき、もう日付は変わっていた。そして小さく見えた渡辺俊の背中が少しばかり大きく見えた。今、渡辺俊は確かに苦しんでいる。だが、今こそ彼の真価が問われる時なのだろう。これまで、何度となく挫折を乗り越えてきた背番号「31」のことだから、きっとこの苦境も乗り越えてくれるだろう。復活の日が今から楽しみでならない。
(千葉ロッテマリーンズチーム付き広報 梶原紀章)
俊介は必ず復活するね。俊介は出来るコ。