(英エコノミスト誌 2017年12月9日号)

故マンデラ氏の伝記、遺族の抗議で出版直後に回収

故ネルソン・マンデラ元大統領。南アフリカ・ケープタウンで(2010年2月11日撮影)。(c)AFP/SCHALK VAN ZUYDAM〔AFPBB News

ひどい機能不全が20年続くのを防ぐために、与党ANCはズマ一族を排除すべきだ

 南アフリカの憲法裁判所は、人の感情を揺さぶる力が世界で最も強い建物かもしれない。

 法廷の壁には、かつてネルソン・マンデラやマハトマ・ガンジーを収監していたオールドフォート刑務所のレンガが使われている。

 その壁に、法廷を取り囲むように設けられている帯状のすき間は、外の廊下からガラス越しに中をのぞくことができるという透明性の象徴だ。

 入り口の上部には憲法の不変の価値観が、アパルトヘイト(人種隔離政策)廃止後に最初に任命された憲法裁判所の判事たちの手で記されている。

 中には子供が書いたような字もあるが、これは白人政権の治安警察の爆弾で右腕を吹き飛ばされ、左手で文字を書かなければならなかったアルビー・サックス氏によるものだ。

 しかし、このような見る者の精神を鼓舞する環境とは裏腹に、本誌エコノミスト記者とこの建物に勤務する職員との対話は、職員の希望により建物の外で行われた。しかも、今日の治安警察による監視を警戒しているとの理由で、記者は携帯電話を建物の中に置いていくよう要請された。

 アパルトヘイトを廃止して生まれ変わったときに掲げられた理想から、南アフリカがいかに遠く離れてしまったかがうかがえるエピソードだ。

 ジェイコブ・ズマ大統領の下、この国は失敗しつつある。政府が発注する仕事は賄賂とコネで配分され、うまみのある公務員のポストをめぐって与党の党員が殺し合い、悪者が罰せられずに大手を振って歩いている。