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トヨタとパナソニック提携の裏に潜む「中国企業の大きな影」

トヨタは天秤にかけるつもりか?

気心知れたパナとの提携

トヨタ自動車の豊田章男社長とパナソニックの津賀一宏社長は13日、共同記者会見して、車載用電池の共同開発で提携を検討すると発表した。提携の内容について両社ともに詳細を明らかにしていないが、電気自動車(EV)の航続距離を飛躍的に伸ばす次世代の電池として期待される「全固体電池」の共同開発が有力視されている。

同時に豊田社長は2030年頃にハイブリッド車(HV)、プラグインハイブリッド車(PFV)、EV、燃料電池(FCV)が世界販売に占める割合(電動化比率)を50%にする計画も明らかにした。すでにホンダも2030年までに電動化比率を65%にする方針を明らかにしている。こうした日本メーカーの動きに合わせて、高性能で低コストの電池の需要が増すと見られる。

 

日本の自動車、電機業界のトップ企業であるトヨタとパナソニックが組むことで、国内の開発基盤を強化して安定供給を構築していく狙いもある。トヨタは、他社にもこの提携に参画するように呼び掛ける考えで、電池の「日の丸連合」構築を目指す。

パナソニックは米テスラモーターズとも提携して車載電池を提供しているが、テスラ向けはパソコンなどに使われる円筒形電池。トヨタとの提携で開発を目指すのは、角形電池と言われるもの。現在もパナソニックは多くの自動車メーカーに納入しており、洲本工場の能力を拡張し、中国大連でも生産を始める。

パナ製の電池が採用されたテスラのSUV「モデルX」(Photo by gettyimages)

現在の角形のリチウムイオン電池は電解質に液体を用いているため、気温によって電池の機能が低下するケースがある。トヨタとパナソニックが共同開発すると見られる全固体電池は、電解質に液体を用いないため、航続距離などが伸びると言われている。

もともとトヨタとパナソニックは車載電池で提携関係にある。1996年、両社はニッケル水素電池などを生産する合弁会社「パナソニックEVエナジー」を設立、トヨタのプリウスなどのハイブリッド車に電池を提供してきた。当初、パナソニックが株式のマジョリティーを持っていたが、現在はトヨタがパナソニックから株を引き取ってトヨタ主導の会社になり、社名も「プライムアースEVエナジー」に変更した。

トヨタとパナソニックは車載電池以外にも自動車ビジネスで関係が深いほか、考え方や社風が似たところがある。人事制度も相談して決めることもしばしばあった。そうした意味でトヨタからすればパナソニックは手の内が分かった組みやすい相手だ。

パナソニックにも同様のことが言える。開発の初期段階から、気心が知れた両社の技術陣が意思疎通し合うことで、自動車メーカーが求める電池が開発しやすくなり、かつ、そのスピードも速くなる利点があるだろう。