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【社会】

MX「ニュース女子」沖縄基地番組 BPO「重大な放送倫理違反」

 沖縄の米軍基地反対運動を取り上げた東京MXテレビの情報バラエティー番組「ニュース女子」について放送倫理・番組向上機構(BPO)の放送倫理検証委員会は十四日、「放送倫理上の問題が含まれている番組を適切な考査(放送前の内容チェック)を行うことなく放送し、重大な放送倫理違反があった」とする意見を公表した。

 検証委が「重大な放送倫理違反があった」と判断したのは、フジテレビ「ほこ×たて」の「ラジコンカー対決」(二〇一四年)、NHK「クローズアップ現代」の「出家詐欺」(二〇一五年)に次いで三件目。

 番組は今年一月二日に放送された。米軍ヘリパッド建設に反対する参加者が日当を得ていることや、現場に出動した救急車を止めようとしたなどと伝えた。

 検証委が沖縄で現地調査したところ、救急車の運行妨害や日当の支給は確認できず、抗議活動の参加者に取材していなかったことが判明。放送の核心となる事実に十分な裏付けがなかったと判断した。

 番組は外部の制作会社が制作した“持ち込み番組”で、放送局の考査が検証対象になったのは初めてだった。

 考査する際、編集作業を終えた映像を担当者が視聴しておらず、内容の裏付けを制作会社に確認していなかったことなども検証委は問題視した。川端和治委員長は「放送してはならないものが放送された」と指摘した。

 MXが今年二月に「事実関係において捏造(ねつぞう)、虚偽があったとは認められない」との判断を示したことについては検証委は「判断は誤っていた。放送倫理上の問題を真摯(しんし)に検証したとは言いがたい」と批判した。

 番組は本紙の長谷川幸洋論説委員(当時は論説副主幹)が司会を務めている。

◆「再発防止に努めます」

 MXは「審議が開始されて以降、社内の考査体制の見直しを含め、改善に着手しております。今回の意見を真摯(しんし)に受け止めて、全社を挙げて再発防止に努めてまいります」とのコメントを出した。

◆業界体質に踏み込んで

<山田健太・専修大教授(ジャーナリズム論)の話> BPOの意見は、東京MXテレビの主張を全否定するものだ。東京MX側に真実追求の努力が足りなかったというBPOの指摘はもっともであり、私も異論がない。ただし、今回は、番組の放送内容が白か黒かを判定することが主眼のように感じた。BPOの本来の役割は放送局の構造的な問題にメスを入れることだ。「ニュース女子」のようにスポンサー企業からの持ち込み番組の場合、内容に問題があっても放送局は意見を言いにくい。BPOは、そうした業界体質にまで踏み込んで問題点を指摘すべきだったのではないか。

<放送倫理・番組向上機構(BPO)> 2003年にNHKと日本民間放送連盟(民放連)によって設立された第三者機関。放送における言論・表現の自由を確保しつつ、視聴者の基本的人権を擁護するため放送への苦情や放送倫理の問題に対応する。「放送と人権に関する委員会」「放送と青少年に関する委員会」「放送倫理検証委員会」の三つの委員会で構成。検証委はメンバー10人で委員長は川端和治弁護士が務めている。

<「ニュース女子」> ベテランの男性評論家らが若い女性タレントらにニュースを解説する形式の情報バラエティー番組。化粧品会社ディーエイチシーの子会社、DHCシアター(現DHCテレビジョン)が制作し、地上波で放送した初めての番組。キー局の系列に属さない東京ローカル局、東京MXテレビが2015年10月から放送している。

 

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