色彩豊かで精巧に描かれた1587年の世界地図帳は、すべてのページをばらしてつなぎ合わせると、縦横ともに約3メートルにもなる。小さく分割して描かれた地図は全部で60枚。これらを430年の時を経てデジタル化し、すべてつなぎ合わせてみると、1枚の巨大な世界地図が完成した。16世紀の人々が世界をどのように見ていたかを知ることのできる貴重な資料である。
そこには何とも不思議な光景が広がっていた。シベリアを駆けるユニコーンをはじめ、南方の海を跳ね回る人魚、足のかぎ爪でゾウを捕らえたまま飛翔する恐ろしげな鳥など、地図は幻想的な生き物であふれていた。当時の地理的知識(そして誤解)が反映されているが、驚くほど進んでいる部分もあった。例えば、この地図は北極圏を真上から見下ろしたように描かれているが、ほかに同様の視点を持った地図は、20世紀に入るまでほとんど製作されることはなかった。(参考記事:「もはや海の珍獣図鑑! 16世紀の「カルタ・マリナ」」)
「いろいろな意味で、個性的な地図です」と話すのは、米スタンフォード大学、デビッド・ラムゼイ地図センター長のG・サリム・モハメッド氏。同センターは、この地図をつい最近入手し、所蔵品に加えた。同じ地図帳は、3冊しか現存が確認されていない。「何世紀も埋もれていたため、ほとんど研究もされていません」
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