米上院補選敗北の共和党、トランプ氏の元側近バノン氏を攻撃
12日に投開票された米アラバマ州の上院補選で民主党候補に衝撃的な敗北を喫した共和党の内部では、議員たちが右派メディア「ブライトバート」を率いるスティーブ・バノン前大統領首席戦略官を激しく批判している。
ニューヨーク州のピート・キング下院議員は共和党に対し、バノン氏を「排除」するよう強く求めた。キング議員はバノン氏について「彼のやり方は使い古されており無意味で、道徳に欠ける」と述べた。
12日の選挙で敗北したロイ・ムーア候補を支持するようドナルド・トランプ米大統領にけしかけたと、バノン氏は非難されている。
バノン氏は今年10月、「すべての現職共和党議員に挑む」と宣言していた。
バノン氏はムーア氏を強く支持していた。強硬な保守派の元判事のムーア氏は、今回の上院議員選で25年ぶりの敗北をアラバマ州共和党にもたらした。
しかしこのような批判を受けても、バノン氏は挑戦的な姿勢を失っていない。
バノン氏に近いある人物はブルームバーグの取材に対し、「スティーブのエスタブリッシュメント(主流派)との戦争はこれで止まったりしない。火に油を注いだけだ」と語った。
キング議員は選挙から一夜明けた13日朝、バノン氏に対して非常に個人的な攻撃を始めた。
同議員はツイッターで「アラバマ州での大惨事を受け、共和党は正しいことをしなければならない。スティーブ・バノンを排除すべきだ」とコメントした。(編集注:太字は原文で大文字を使った強調)
さらに続けて「すべての米国人にとってアメリカを再び偉大にしたいと思うなら、バノンは去らなければならない。今すぐ立ち去ってくれ」と述べた。
キング議員はその後、米CNNテレビに出演し、バノン氏について「政治の舞台に迷い込んだ、だらしない酔っぱらいみたいな風貌だ」と語った。バノン氏はアルコールを控えているという。
またキング議員はバノン氏の「奇妙なalt-right(オルタナ右翼)的な考え」を攻撃し、保守派の価値観を表すものではないとした。
キング議員はさらに、アラバマ州の選挙で敗れたのは、有権者がバノン氏に「強い嫌悪感」を抱いたからだと述べた。
アダム・キンジンガー下院議員(共和党、イリノイ州選出)は、バノン氏を名前だけの共和党員だと侮辱して「RINO」と呼んだ。(編集注:RINOは「Republican in name only(名前ばかりの共和党員)」の頭文字)
キンジンガー議員は、「彼の道徳に欠ける戦略は、ここでは歓迎されていない」とツイートし、「お前はクビだ」というハッシュタグを付け加えた。
共和党のミッチ・マコネル上院院内総務と連携する政治団体、上院リーダーシップ基金のスティーブ・ロー代表も批判の声を上げた。
ロー氏は文書で、「スティーブ・バノンのせいで、共和党が最も強い州の一つで重要な上院の議席を失っただけでなく、米国の大統領がこの大惨事に巻き込まれた」と述べた。
「これは、どこで出馬しようと、候補者の質が大事だと思い出させる苦い経験だ」
バノン氏は最近、大統領のいわゆる「米国第一」戦略に対してマコネル上院院内総務が熱心ではないと考え、マコネル氏を非難の的にしていた。
米保守系雑誌「ナショナル・レビュー」はバノン氏について、「他人を操る小人物で、悪評の候補者を常に好む」と評した。
バノン氏は昨年の大統領選でトランプ氏の選挙運動を主導し、トランプ氏のポピュリスト的な魅力を高めたと広く認められている。
バノン氏は8月、右翼系メディア「ブライトバート・ニュース」会長の座に戻り、「外部の助っ人」としてトランプ政権を支えるため、ホワイトハウスを去った。
しかし、アラバマ州の共和党予備選で、強硬な保守派のムーア元判事を支持し、トランプ大統領と意見が対立。トランプ氏は予備選で主流派の共和党員、ルーサー・ストレンジ候補を支持したが、同候補はムーア元判事に敗れた。
米政界の一部では、バノン氏が共和党の「影の実力者」ではないかとの見方が浮上していた。
トランプ氏はその後、同州上院補選でムーア氏を支持したが、僅差で勝利したのは民主党のジョーンズ氏だった。
米紙ワシントンポストによると、トランプ氏はバノン氏との長い話し合いの末、ムーア氏支持を決めたという。
今回の選挙結果は上院にどんな影響をもたらすのか
すでに共和党と民主党の議席数の差はわずかだったが、今回の選挙で差はさらに狭まった。しかしセッションズ司法長官が空けた議席を暫定的に占めていたルーサー・ストレンジ氏は来年1月まで席に留まる見込みが高い。
つまり、共和党は税制改革法案や年末のどんな予算決議案も可決する時間があるということだ。しかしBBCのアンソニー・ザーチャーBBC北米担当記者によると、その後は法案を可決できる見通しは大幅に低くなると指摘している。
ジョーンズ氏が就任すれば、共和党は1票しか失えない。50対50となった場合は、マイク・ペンス副大統領が決定投票をすることになる。
<解説>候補がだめだったのか、それとも反トランプのうねりか?――アンソニー・ザーチャー北米担当記者
アラバマ州に民主党の上院議員が登場した。
ほんの1年前は不可能だと思われていた結果だったし、12日に有権者が投票所に向かっていたときでさえ見込みは低いと思われていた。
この予期せぬ勝利がもたらす影響は明らかだ。
上院でかろうじて過半数を保っていた共和党の議席がさらに少なくなり、2018年の中間選挙で民主党が上院の過半を得る見込みが大幅に大きくなった。
共和党の有力者たちがためらっていたにも関わらず、ロイ・ムーア氏を強く推したトランプ大統領への非難とも取れる。
11月にバージニア州とニュージャージー州での知事選に勝利した後、民主党支持者たちの一部は選挙で反トランプのうねりが出来つつあることに期待している。
しかしムーア氏の候補としての欠点があまりにも大きく、まだ見定めるには早すぎるかもしれない。
(英語記事 Steve Bannon: Republican knives out for ex-Trump aide)