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日下部正樹
1985年 TBS入社。
政治部、香港支局長、北京支局長、外信部デスクなどを務め、2010年9月までは、ソウル支局長。

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消えた大使館 

東京・赤坂のTBS局社から
青山通り沿いにある
カナダ大使館に向かう途中、
木々に囲まれた閑静な一角に
ドイツ文化会館があります。
fb2nMO1pKX.jpg
ドイツ大使館は広尾なのに
ずいぶん離れたところに文化会館が
あるなと思って調べてみたら、
ここは東ドイツ大使館だった場所なのですね。
当たり前のことですが、
国が無くなれば大使館や領事館も無くなる。
逆に国が生まれれば新しい大使館が開設される。
今回は古地図を手に
失われた「日本の中の外国」をめぐります。
4dngMQ8BQM.jpg
東京・麻布の中国大使館。
以前から周辺は警備が厳しかったのですが、
最近は尖閣問題などもあり、
ものものしさを増しています。
言うまでもなくこの大使館の主は中華人民共和国。
この国の成立は1949年ですが、
日本と外交関係が樹立したのは1972年です。
じゃあ、1972年以前、
ここに何があったかというと中華民国大使館です。
台湾ですね。
さらに戦前までさかのぼると・・・
3ejBy3XnfV.jpg
昭和16年の「麻布区」地図によると
この地には満洲国大使館があったのですね。
じゃあ中華民国大使館は(台湾ではなく大陸政府の頃です。)
どこかと言うと、同じ麻布区の
現在で言うと外務省飯倉公館がある場所に
中華民国大使館との表記があります。
CdmYByFRHf.jpg
中国人が偽満洲とよぶ傀儡国家の大使館と
中華民国の大使館が同じ区内にあったのですね。
そして、ひとつの土地が満洲国から中華民国、
そして中華人民共和国に引き継がれてゆく、
大陸での政治力学が
東京の地にもそのまま投影されていたのですね。
GToSkn3K0a.jpg
飯倉公館付近を歩きながらふと考えました。
中華民国大使館と一言で言うけど
戦前・戦中とその主は誰だったんだろう?
戦中から終戦直前にかけては
南京の汪兆銘政権のものだったのでしょうね。
蒋介石政権の大使はどの時点で
日本から撤退したのだろう?
やはり近衛首相の「国民政府を対手とせず」
からなのでしょうか?

かつてあった外国政府の公館が
つぎつぎと姿をけした場所と言うと
横浜があげられます。
TMvfGQV8Sa.jpg
開国した江戸幕府は欧米の公館が
江戸に入ることを嫌いました。
そこで新たに開港した横浜に外国人居留区を設けました。
一方、欧米各国は当初、
東海道からそれた場所にある横浜を嫌い
神奈川の宿に次々と領事館を設けますが、
横浜の港が栄えるにつれ領事館を横浜に移します。

明治に入り政府が本格的に
東京への外国公館の移設を認めたことや
その後、関東大震災や大戦によって
横浜に数多くあった領事館は次々と閉鎖されます。
EYdm8mLDYE.jpg
それでも私が子供の頃まで横浜には
アメリカやイギリスの領事館が残っていました。
昭和39年の地図にもしっかり記されています。
イギリス領事館は開港記念館として残されています。
UAFYmbqEFI.jpg
一方、アメリカ総領事館は
1972年に閉鎖された後取り壊されました。
いまはホテルが建っていますが、
ロビーには総領事館の写真が掲げられています。
IJHIGRFpQ1.jpg
なかなか立派な建物です。
何とか保存することは出来なかったのでしょうか・・・

国際都市「ヨコハマ」に残る外国公館といえば
いまや韓国総領事館ぐらいでしょう。
その韓国総領事館から高級住宅が立ち並ぶ
山手の道をとぼとぼ歩いてゆくと
タイル張りの素っ気無い建物が見えてきます。
4u2DPGuyH5.jpg
アメリカ国務省日本語研修所。
日本に赴任予定の外交官が日本語を学ぶ場所です。
私が訪れた日は平日にもかかわらず
ひと気がほとんどありませんでした。

1859年に神奈川の宿にアメリカが
領事館を開設してから150年あまり。
研修所は海外への玄関口ヨコハマの面影を
何とかつなぎとめている存在ともいえるかもしれません。

ちょっと大げさですかね。

まあ横浜にはアメリカ軍の施設は
まだまだいくらでも残ってますからね・・・



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  • 牛山隆司さん
  • 2013/02/28 20:04
面白い切り口での取材ですね!