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中国の影響力については疑問も-切り札なくなれば無力さ露呈
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近隣諸国と比べると、北朝鮮で昨年消費された石油は微々たる量
弾道ミサイルの開発を進める北朝鮮は、今や米国全土が射程圏内だと豪語する。トランプ米大統領は中国に対し厄介な隣国への圧力を強めるよう求めている。国連安全保障理事会が採択した北朝鮮に対する経済制裁決議にも加わった中国の習近平国家主席に対し、トランプ大統領は11月29日の電話会談で、北朝鮮に対する石油全面禁輸に踏み切らなければならない段階になったと告げた。米エネルギー情報局(EIA)によれば、北朝鮮の原油輸入の大半は中国からだが、正確な数量把握は困難だ。中国の通関統計には2013年以降、そうした記載はない。
1.中国は北朝鮮への石油輸出をやめたのか
一部を減らしたにすぎない。北朝鮮が6回目の核実験を9月に強行した後、米国は全面禁輸措置を提案。だが国連安保理での決定はロシアと中国の要請を受け入れ、北朝鮮による石油精製品輸入を年200万バレルに制限するとの決議に落ち着いた。
2.なぜ中国はもっと踏み込んだ制裁をしないのか
中国は北朝鮮に核兵器を放棄させたいと表明しているものの、中国側と資金のやり取りや貿易が行われている北朝鮮国境地帯の安定も望んでいる。中国の国連代表は北朝鮮を巡り、体制の変更がなく、体制の崩壊もなく、南北統一が加速せず、朝鮮半島の南北を隔てる軍事境界線の北側での軍事展開がないという「4つのノー」を掲げる。厳冬の北朝鮮への石油供給を止めれば、金正恩朝鮮労働党委員長が対米強硬姿勢を一段と強め、軍事衝突が発生したり、そうでなければ体制崩壊につながるような内部の反発を招いたりしかねないと中国は懸念している。人道危機や難民の大量発生、中国国境地帯への米軍展開という可能性もある。 「いったん戦争となれば、甚大な被害が生じる。誰も勝者にはなれない」と中国の王毅外相は述べている。
3.中国は北朝鮮に対して影響力を行使できないのか
中国の習近平国家主席が同国を率い、金委員長が北朝鮮の最高指導者になって以来、中朝関係は悪化した。中国政府がどの程度、北朝鮮に影響力を行使できるかについては一部疑問が生じている。中国が北朝鮮への石炭輸出を2月に禁止した後、北朝鮮国営の朝鮮中央通信は「友好国が米国の曲に合わせて踊っている」と批判。中国が石油輸出を止めても金委員長が方針を変えなければ、中国の切り札はなくなり、同国の無力さを世界が知ることになる。
4.中国メディアはどう伝えているのか
環球時報は9月、「北朝鮮への石油供給を完全に遮断したり、中国と北朝鮮の国境を閉鎖したりしたとしても、核実験やミサイル発射を阻止できるかどうかは不確かだ」と報じた。
5.北朝鮮の石油消費量は
近隣諸国と比べると、北朝鮮で昨年消費された石油は微々たる量だ。EIAの推計によれば、平均で日量1万5000バレル。韓国は約260万バレル、中国では1250万バレルだ。北朝鮮の原油輸入は日量約1万バレルで、その全てが中国国境近くにある国内で唯一稼働している製油所に供給されているとEIAは推測。EIAによると、中国は昨年、日量6000バレル相当の石油製品を北朝鮮に出荷したと報告。この数字には燃料油やガソリン、ディーゼル油、ジェット燃料、潤滑油が含まれると中国税関当局は説明している。
6.石油供給が止まれば金体制はどうなる
断定は難しい。北朝鮮はこれまでも厳しい状況に耐えてきた。 1990年代には食料供給が途絶え飢饉(ききん)が発生し、数百万人が飢えに苦しみながら亡くなったとみられるが、体制への反乱はなかった。米カリフォルニア州バークリーの「安全保障および持続性のためのノーチラス研究所」によれば、北朝鮮は代替品などで軍用以外の燃料消費を約4割減らすことができると考えられる。恐らく燃料の備蓄もしている。
原題:Why China Won’t Cut Off North Korean Oil Lifeline: QuickTake Q&A(抜粋)