7月に発売された『ダークサイド・スキル』(日本経済新聞出版社)がビジネスパーソンの間で話題だ。発売から4カ月で5万部に到達した。「ダークサイドスキルは出世を目指す人には必要不可欠」と著者の木村尚敬さん。その理由と、具体的なテクニックを聞いた。
(まとめ:藤原 達矢/写真:北村 宏一)
「黒魔術のようなものではありません」
経営共創基盤(IGPI)パートナー、 IGPI上海執行董事。 慶應義塾大学経済学部卒業。英レスター大学経営大学院修士、英ランカスター大学経営大学院修士、米ハーバードビジネススクールAMP。ベンチャー企業の経営、日本NCRなどを経て2007年同社に参画。近著『ダークサイド・スキル』は発売から4カ月で5万部に達する話題書に。
「ダークサイド・スキル」とはどんなスキルですか?
「ダークサイド」という言葉から怪しげなスキルを想像されがちですが、別に黒魔術のようなものではありません。「清濁併せ呑んだ決断をする」「人に影響力を与える」「人を動かす」といった泥臭いヒューマンスキルを本書ではダークサイドスキルと定義しています。
実はダークサイドスキルは当社、経営共創基盤の社内用語です。当社では20~30代のコンサルタントが、クライアントの課題解決のために戦略を立案・提案します。戦略立案には「財務会計に精通する」「効果的なプレゼンができる」「論理的思考力がある」といったスキルが必須で、これを当社では「ブライトサイドスキル」と呼んでいます。
でも、それさえあればいいものではない。時には親子ほど年が離れた相手先の経営陣を納得させ、行動に移してもらうためには、人を動かす力が求められます。これが、当社が規定するダークサイドスキル。ブライトサイドスキルが仕事の必須条件だとしたら、ダークサイドスキルは十分条件といった位置づけで、当社では両方をコンサルタントの評価項目に盛り込んでいます。
ダークサイドスキルは、変革の時代に不可欠
このスキルを習得すると、出世にどう有利になるのですか?
ダークサイドスキルは、社内でより良い人間関係を構築し、安定した基盤を構築するうえでも必要です。ビジネスの現場は、きれいごとだけではとても回りません。ポジションが上がっていくと、人間関係のもつれをさばいたり、トラブルが生じた時に矢面に立ち、責任を取るといった仕事が増えていきます。どんな時も冷静さを保ち、毅然とした対応を取るためには、このダークサイドスキルを磨いておく必要があるのです。
また、ダークサイドスキルがあれば、20年先、30年先の将来を踏まえて、会社を適切な方向に導いていくことができます。今は大きな変革の時代です。会社が向こう20年30年と生き延びていくには、適切なタイミングで既存のビジネスモデルを見直したり、新しい事業を立ち上げたりする必要があります。
例えばメーカーが、モノを作って販売するのでなく、顧客サービスで稼ぐモデルに変わらなければこの先ジリ貧になる、ということもあるでしょう。そんなふうにドラスティックに会社を変えようと思うと、社内で不利益をこうむる人も出てくる。みんなが素直に動いてくれるとは限りません。だからこそ、ダークサイドスキルが必要なのです。
「会社を導くのは、経営者や管理職の仕事では?」と思われるかもしれませんが、今の管理職や経営者層のほとんどは5年後、10年後には引退し、会社からいなくなるので、20年先、30年先まで考えが及ばない場合が多い。将来を踏まえて会社を変えていくのは、ミドル世代の役割です。
会社をあるべき方向に導いた時、それを主導した人間は重責を担う可能性が高い。結果として出世するでしょう。ただし、それはあくまで“副賞”のようなものです。
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