高額プレミアムの「獺祭」転売問題 蔵元が異例の新聞広告掲載したワケ
人気日本酒「獺祭(だっさい)」の蔵元・旭酒造が、高額転売品を購入しないよう呼び掛ける異例の新聞広告を掲載して注目を集めている。
「獺祭」は、山口県岩国市にある旭酒造が製造する日本酒。独自の製法で作られる風味豊かな味わいで人気に火が付き、約10年前から全国で品薄状態に。大手スーパーなどでは約1500円のボトルが定価の2~3倍ほどの価格で、ネット上では3万円以上の値段で販売されるようになった。現在は生産量が増え、こうした状態は解消されつつある。
このほど、旭酒造が読売新聞に掲載したメッセージ広告では「お願いです。高く買わないでください」と呼び掛け、「獺祭」の希望小売価格や、全国の正規販売店も紹介している。
旭酒造の桜井一宏社長は本紙取材に「数年前から各地で獺祭がプレミアム価格で販売されているのが見られるようになりました。おいしいお酒を飲んでお客さんの幸せにつながってほしいというのが私たちの思いなのですが、転売品は品質や価格の部分で問題があるので、こういった広告を出すことになりました」と話す。
転売品は高額になることに加え、流通にかかる日数が長期化し、品質管理もおざなりになる可能性がある。「獺祭」に関しては、一部転売業者が正規の取り扱い店でまとめ買いし、不当に高い価格で転売している可能性があるという。
一部では「生産量が少ないから転売品が出回るのでは?」との声もあるが「ここ10年、毎年生産量を3割ずつ増やしているのですが、設備や人手の限界もあります。まずはきちんとして量を作っていって、私たちからもお客さんに(高額な転売品を買わないよう)伝えていきたい」(桜井社長)。
「獺祭」に限らず、ネット上を中心に人気日本酒や焼酎、ウイスキーの転売が横行している。生産量が限られているプレミアム酒は、ネットオークションで転売すると定価の約10倍の値段で売られていることもある。法曹関係者は「希少な焼酎『森伊蔵』のネット転売で荒稼ぎした者が実際に逮捕されているし、無免許での酒類の転売は摘発の対象。近年は国税当局も目を光らせている」と話している。