【南京(中国江蘇省)林哲平】日中戦争中の1937年に中国・南京を占領した旧日本軍が多くの中国人を殺害した南京大虐殺から80年にあたる13日、南京市の大虐殺記念館で追悼式が行われた。習近平国家主席は3年ぶりに出席したが、演説しなかった。最高指導者が国家行事に出席しながら演説しないのは異例。また、演説を担当した兪正声・中国人民政治協商会議主席が今年が中日国交回復45年にあたることに触れるなど、改善基調にある日中関係への配慮をにじませた。
式典には生存者や市民ら約1万人が参列。習氏は参列者と一緒に黙とうするなどし、約20分の式典が終わるとそのまま立ち去った。新華社通信によると、習氏は式典後に生存者の代表らと面会し、「我々は歴史の鏡を磨き、未来の道をしっかり歩かなくてはならない」と話した。
共産党は抗日戦争の歴史を一党独裁の正統性を支える大きな根拠としており、「節目となる式典に習氏が出ないことは考えられない」(中国の研究者)とみられていた。ただ、習氏は11月にベトナムで安倍晋三首相と会談した際、「日中関係の新たなスタート」と発言しており、日中関係が改善へと動く中、今回は習氏本人が歴史問題に言及するのを避けた可能性がある。
兪氏は10月の共産党大会で最高指導部を退いており、演説では「80年の時間が流れる中で、暗黒の歴史は国連教育科学文化機関(ユネスコ)の世界記憶遺産に登録され、永遠に消えない人類の記憶になった」と強調。一方で、「中国は善隣友好に基づき、日本を含む周辺国との関係を深めていく」とも述べた。