こんにちは、かずひろ(@kazurex1215)です。
2018年に公開が決定されている、押切蓮介著の『ミスミソウ』。陰惨で憂鬱なホラー漫画として、その界隈でカルト的な人気を誇っている作品だ。この作品もとい作者の押切蓮介先生の大ファンとしては、このニュースを聞いて「やってしまうのかミスミソウを!!?!!しかも実写で!!?!?おおおおお!?!?」という期待と興奮が抑えきれず、そして本当に実写化するという現実をまだ受け入れられないでいる。
この『ミスミソウ』という漫画はどういう作品なのかと聞かれると、一言では言い表せない複雑な作品で、しかし、本を閉じた瞬間に「どうしてこれを読んでしまったんだろう」という言いようのない後悔と不快感が胸の中をぐるぐる渦巻いていく、ある意味最悪の読書体験をもたらしてくれる。これまで『でろでろ』や『押切蓮介短編集』などで、妖怪やお化けの類である非日常的な存在をシュールなギャグに乗せて描くことが多かった作者にとって、この『ミスミソウ』は真逆の存在といえる作品。怪奇的な現象は全く出てこないしコメディ要素もなく、何より恐怖の根源が“人間”という実在するものに起因しているのが一番の特徴。とはいえ、2007年から2009年に渡り「ホラーM」(ぶんか社)にて連載され、2013年には上・下の完全版が出版されているなど、未だに根強い人気を誇っている作品だということが伺える。そんな『ミスミソウ』の簡単なあらすじはこちら。
【半年前、父親の仕事の都合で東京の学校から大津馬中学校に転校して来た野咲春花は、クラスメイトからの壮絶なイジメに遭っていた。春花は家族に心配を掛けまいとイジメに遭っていることを隠し、中学校卒業までの残り2カ月間を必死に耐えようとするが、春花へのイジメは悪化の一途を辿るばかり。遂にイジメを知った家族の勧めで春花が不登校を行ったある日、イジメっ子達が彼女の家に乗り込み両親と妹に危害を加え、家に火を放つという事件が起こる。春花の妹・祥子は大火傷を負いながらも助かったが、両親は命を落としてしまった。やがて事件の真相が露見することを恐れたイジメっ子達は春花に自殺するよう強要。だが、それがきっかけとなって春花は事件の真相を知り、家族を奪ったイジメっ子達に己の命を賭けた凄惨な復讐を開始する。】(Wikipediaより。)
閉鎖的で閑散とした村に転校してきた野咲春花、美しく儚げな少女が転入したことで、この窮屈な世界に劣等感や憎しみ、愛憎が混濁し暴発していく。春花へのいじめは日々卑劣さを増していくのだが、同級生の相場や家族と過ごす時間が彼女の心の支えとなっていて、卒業までの二か月間を何とか耐えようとする。初っ端からほんとに救いのない漫画なのですが、1話目で描かれる、辛い状況に遭っても帰ってこられる家があり家族がいるという微かな希望を感じさせてからの、最終ページで燃え盛る野崎家が一枚絵で描かれていて一気に読者をド――――――ン!!!!!と絶望に叩き落とす。先に結末を見せることで、それまでの家族との交流や春花と妹の微笑ましいやり取りも、全てあの火事で焼き尽くされてしまうという残酷さが際立つというか、春花が幸せなひと時も全てが絶望に向かうことが分かっているので、読み進めるこちら側の辛さといったら…。

主人公がいじめに遭い追い詰められる漫画は多種多様あれど、ここから主人公が徹底的な復讐を開始するという点で『ミスミソウ』は一味違う。両親は死に妹は意識不明の重体で、唯一生き残ったのは祖父と春花のみ。心の支えを失くした春花はもはや人ではなく修羅と化し、関わったクラスメイトを一人ずつ一人ずつ殺していく。復讐の描写がぬるくないのも特徴で、その描写の一つ一つが痛々しい。目玉に釘を刺したりアキレス腱がちぎれたり、悪人にはそれ相応の罰をと言わんばかりの制裁ばかり。ここで不謹慎なのかもしれないが、自分は爽快感を感じてしまった。クラスメイトのやられっぷりと春花の無双に「もっとやってしまえ」と、不意に考える自分がいる。

今作を描いた押切蓮介氏は、『漫画力』に溢れた作家さんだなあと思っていて、コマ割りの配置やページをめくるスピードまで計算しているかのような構成、漫画の持ち味を最大限に引き出した見開きや演出の数々、1ページ1ページから伝わってくる“圧”が本当に凄い。その持ち味が、春花の行う復讐シーンで見事に活かされているんですよね。盛り上がるべきところでしっかり上げる、エンタメ性が高いのも面白さの一つ。

(春花がクラスメイトに追い詰められ、悲劇が起きた火事の真相を告げられてから、覚醒する瞬間の見開き。思わず息を呑むとはこのこと)
しかし、このまま復讐劇だけで終わらず、完全版の後編から一気に急展開を迎える。ネタバレになるし、出来るだけ多くの方に読んでもらいたいので詳細は一切伏せておくが、いじめの首謀者と以前いじめられていた者、担任の女教師や主人公を支える同級生、彼らの人間関係がぐちゃぐちゃに入り乱れ、物語はとんでもない結末を迎える。凄惨ないじめとその復讐劇がメインの前編も鳥肌が立つほど怖いのだけど、ぶっちゃけ後編の展開の方がトラウマと呼ぶにはふさわしいと個人的には思っている。ほんとに、こういう結末になるとは思ってもいなかったです。
そんな『ミスミソウ』のメガホンを取るのは内藤瑛亮監督。僭越ながら初めて名前を聞く監督さんだったし、原作を読んでいる身からすると「あんな漫画(褒め言葉)を実写にするって、どんな監督なんだ!?」とめちゃくちゃ気になってしまった。だったら過去作品を観てしまおう!!と思い立ち、『ライチ☆光クラブ』と『先生を流産させる会』の2作品を鑑賞しました。
前者は原作コミックから実写への変換をどう行うのか、後者では「閉鎖的な空間で屈折した中学生と命」という題材をどう扱うのかを、内藤監督はどうやって調理するのか拝見したのですが、この2作を観ればなぜ『ミスミソウ』のメガホンを任されたのか納得がいくなあ、という感じでした。『ライチ~』は独特な世界観をそのままにグロ描写をも真正面から描ききって良くも悪くも忠実な実写化だったし、『先生を~』は実在の事件を題材にした扱いづらいテーマを“生命の大切さ”というシンプルで重いメッセージとして発信したことが素晴らしいな、と。そして両作品に共通する、閉鎖空間で複雑化する人間関係のドラマ構築が絶妙だったのです。『ミスミソウ』に必要な題材を、内藤監督は既に描き切っていたのです。
来年4月7日に全国公開が決まった『ミスミソウ』。これから発表される追加キャストや予告編の情報にもぜひ注目していきたい。そして公開されるまでに、ぜひ多くの人に原作を読んであの不快感を、爽快感を、感じてほしい。
読んでください!!!!原作を!!!!
2018年に公開が決定されている、押切蓮介著の『ミスミソウ』。陰惨で憂鬱なホラー漫画として、その界隈でカルト的な人気を誇っている作品だ。この作品もとい作者の押切蓮介先生の大ファンとしては、このニュースを聞いて「やってしまうのかミスミソウを!!?!!しかも実写で!!?!?おおおおお!?!?」という期待と興奮が抑えきれず、そして本当に実写化するという現実をまだ受け入れられないでいる。
この『ミスミソウ』という漫画はどういう作品なのかと聞かれると、一言では言い表せない複雑な作品で、しかし、本を閉じた瞬間に「どうしてこれを読んでしまったんだろう」という言いようのない後悔と不快感が胸の中をぐるぐる渦巻いていく、ある意味最悪の読書体験をもたらしてくれる。これまで『でろでろ』や『押切蓮介短編集』などで、妖怪やお化けの類である非日常的な存在をシュールなギャグに乗せて描くことが多かった作者にとって、この『ミスミソウ』は真逆の存在といえる作品。怪奇的な現象は全く出てこないしコメディ要素もなく、何より恐怖の根源が“人間”という実在するものに起因しているのが一番の特徴。とはいえ、2007年から2009年に渡り「ホラーM」(ぶんか社)にて連載され、2013年には上・下の完全版が出版されているなど、未だに根強い人気を誇っている作品だということが伺える。そんな『ミスミソウ』の簡単なあらすじはこちら。
【半年前、父親の仕事の都合で東京の学校から大津馬中学校に転校して来た野咲春花は、クラスメイトからの壮絶なイジメに遭っていた。春花は家族に心配を掛けまいとイジメに遭っていることを隠し、中学校卒業までの残り2カ月間を必死に耐えようとするが、春花へのイジメは悪化の一途を辿るばかり。遂にイジメを知った家族の勧めで春花が不登校を行ったある日、イジメっ子達が彼女の家に乗り込み両親と妹に危害を加え、家に火を放つという事件が起こる。春花の妹・祥子は大火傷を負いながらも助かったが、両親は命を落としてしまった。やがて事件の真相が露見することを恐れたイジメっ子達は春花に自殺するよう強要。だが、それがきっかけとなって春花は事件の真相を知り、家族を奪ったイジメっ子達に己の命を賭けた凄惨な復讐を開始する。】(Wikipediaより。)
閉鎖的で閑散とした村に転校してきた野咲春花、美しく儚げな少女が転入したことで、この窮屈な世界に劣等感や憎しみ、愛憎が混濁し暴発していく。春花へのいじめは日々卑劣さを増していくのだが、同級生の相場や家族と過ごす時間が彼女の心の支えとなっていて、卒業までの二か月間を何とか耐えようとする。初っ端からほんとに救いのない漫画なのですが、1話目で描かれる、辛い状況に遭っても帰ってこられる家があり家族がいるという微かな希望を感じさせてからの、最終ページで燃え盛る野崎家が一枚絵で描かれていて一気に読者をド――――――ン!!!!!と絶望に叩き落とす。先に結末を見せることで、それまでの家族との交流や春花と妹の微笑ましいやり取りも、全てあの火事で焼き尽くされてしまうという残酷さが際立つというか、春花が幸せなひと時も全てが絶望に向かうことが分かっているので、読み進めるこちら側の辛さといったら…。
主人公がいじめに遭い追い詰められる漫画は多種多様あれど、ここから主人公が徹底的な復讐を開始するという点で『ミスミソウ』は一味違う。両親は死に妹は意識不明の重体で、唯一生き残ったのは祖父と春花のみ。心の支えを失くした春花はもはや人ではなく修羅と化し、関わったクラスメイトを一人ずつ一人ずつ殺していく。復讐の描写がぬるくないのも特徴で、その描写の一つ一つが痛々しい。目玉に釘を刺したりアキレス腱がちぎれたり、悪人にはそれ相応の罰をと言わんばかりの制裁ばかり。ここで不謹慎なのかもしれないが、自分は爽快感を感じてしまった。クラスメイトのやられっぷりと春花の無双に「もっとやってしまえ」と、不意に考える自分がいる。
今作を描いた押切蓮介氏は、『漫画力』に溢れた作家さんだなあと思っていて、コマ割りの配置やページをめくるスピードまで計算しているかのような構成、漫画の持ち味を最大限に引き出した見開きや演出の数々、1ページ1ページから伝わってくる“圧”が本当に凄い。その持ち味が、春花の行う復讐シーンで見事に活かされているんですよね。盛り上がるべきところでしっかり上げる、エンタメ性が高いのも面白さの一つ。
(春花がクラスメイトに追い詰められ、悲劇が起きた火事の真相を告げられてから、覚醒する瞬間の見開き。思わず息を呑むとはこのこと)
しかし、このまま復讐劇だけで終わらず、完全版の後編から一気に急展開を迎える。ネタバレになるし、出来るだけ多くの方に読んでもらいたいので詳細は一切伏せておくが、いじめの首謀者と以前いじめられていた者、担任の女教師や主人公を支える同級生、彼らの人間関係がぐちゃぐちゃに入り乱れ、物語はとんでもない結末を迎える。凄惨ないじめとその復讐劇がメインの前編も鳥肌が立つほど怖いのだけど、ぶっちゃけ後編の展開の方がトラウマと呼ぶにはふさわしいと個人的には思っている。ほんとに、こういう結末になるとは思ってもいなかったです。
そんな『ミスミソウ』のメガホンを取るのは内藤瑛亮監督。僭越ながら初めて名前を聞く監督さんだったし、原作を読んでいる身からすると「あんな漫画(褒め言葉)を実写にするって、どんな監督なんだ!?」とめちゃくちゃ気になってしまった。だったら過去作品を観てしまおう!!と思い立ち、『ライチ☆光クラブ』と『先生を流産させる会』の2作品を鑑賞しました。
前者は原作コミックから実写への変換をどう行うのか、後者では「閉鎖的な空間で屈折した中学生と命」という題材をどう扱うのかを、内藤監督はどうやって調理するのか拝見したのですが、この2作を観ればなぜ『ミスミソウ』のメガホンを任されたのか納得がいくなあ、という感じでした。『ライチ~』は独特な世界観をそのままにグロ描写をも真正面から描ききって良くも悪くも忠実な実写化だったし、『先生を~』は実在の事件を題材にした扱いづらいテーマを“生命の大切さ”というシンプルで重いメッセージとして発信したことが素晴らしいな、と。そして両作品に共通する、閉鎖空間で複雑化する人間関係のドラマ構築が絶妙だったのです。『ミスミソウ』に必要な題材を、内藤監督は既に描き切っていたのです。
来年4月7日に全国公開が決まった『ミスミソウ』。これから発表される追加キャストや予告編の情報にもぜひ注目していきたい。そして公開されるまでに、ぜひ多くの人に原作を読んであの不快感を、爽快感を、感じてほしい。
読んでください!!!!原作を!!!!