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【社会】

LGBT企画<上> 人の数だけ「性」がある

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 「性的少数者(LGBTなど)といった、ニュースの当事者も参加して考える紙面作りを」。今年5月に東京新聞次世代研究所が開いた「ポジ出し会議」で、評論家の荻上チキさんから提案がありました。最近、紙面にもよく出てくる「LGBT」という言葉。そもそもの意味は。当事者の思いは。上・下2回の初回は、大学講師の三橋順子さん(62)が「性」をアイスクリームに見立てて解説します。

 明治大講師として「ジェンダー論」を教える三橋さんは、トランスジェンダー(T・生まれつきの身体とは違う性を生きる人)。LGBTなどについて理解を深めてもらおうと、自分の中の性を三段重ねのアイスクリームに例える方法を発案した。今回は女性を抹茶味、男性をチョコレート味で表す。

 一段目は「身体的な性」だ。出生時に外性器などで判断されるが、性分化疾患など、必ずしも男女に分かれないこともある。

 二段目は「性自認」。自分の性別は男なのか女なのか。曖昧に感じる人、決めたくない人もいる。一段目と二段目の味が異なる人がトランスジェンダーで、三橋さんは「性別越境者」と訳す。このうち、身体的な性と性自認に違和感があり、医学的に疾患と認められた場合の診断名が「性同一性障害」となる。

 そして、三段目は「性表現」。社会的にどう振る舞いたいかという願望で、服装や髪形などに表れる。男性に生まれ、自分は男性だと思っていても女性の格好をしたい「女装者」ら三段目が違う味の人もいる。

 「最後に、この三段重ねのアイスクリームを誰に食べてほしいかを考える」と三橋さん。「性的指向」と呼ばれる、恋愛や性の対象だ。例えば、抹茶(=女性)の三段重ねを男性に、という人は異性愛。女性に、なら同性愛。男女両方の場合はバイセクシュアル(B・両性愛者)。ただし、これらLGBTでくくれない人もいる。三橋さんは「性は人の数だけ多様にある」と話す。

◆三段重ねの性は、誰もが持っているものです 三橋順子さん

 多数派の男性と女性は、3段分のアイスクリームの味が同じなので、時間がたって溶けると、もともと一つだったように錯覚してしまう。でも、誰もが3つの性の要素を持っている。多様な性の形を当たり前に尊重できるといいですね。

<みつはし・じゅんこ> 性社会・文化史研究者。都留文科大、関東学院大でも講義を担当。著書に「女装と日本人」(講談社現代新書)など。埼玉県出身

◆性別より自分らしさ 室井舞花さん

 レズビアン(L・女性同性愛者)の室井舞花さん(30)は「性自認と性的指向は別だと理解して」と話す。友人に「同性が好き」と伝えると「あなたは男性なんだね」と言われたことがあった。でも「性自認は女性。見た目はボーイッシュと言われるけれど、男性になりたいわけではなく、女性として女性が好き」と説明する。

◆個人の趣味ではない 松中権さん

 「同性愛を、個人の趣味の話だと思わないで」。そう話すのは、ゲイ(G・男性同性愛者)の松中権(ごん)さん(41)。性的「嗜好(しこう)」と間違われたり、「ゲイ=オネエ系」の印象を持たれたりすることも少なくないが、「誰とどう生きていくかといった生き方や、パートナーとの暮らし方の問題としてとらえてほしい」という。

 文・奥野斐/写真・中西祥子/デザイン・高橋達郎/紙面編集・加藤秀和

 

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