自動車が関わる交通事故は、日本だけではなく世界中で長く問題になっていることです。
しかし、さかのぼると
- シートベルト義務化
- 衝撃緩和車体構造
- エアバッグ
- 飲酒規制強化
- ABS・横滑り防止装置
など、法整備やテクノロジーの発達によって死亡事故数は減少してきました。
そして「ぶつからないクルマ」の究極形、自動運転によってクルマの運転はこれまでと全く違うものになる未来が見えてきました。
自動運転車はその言葉通り、ドライバーの操作がなくても自動で動くクルマのこと。
この「ドライバーの操作がなくても」という範囲の
- どこまでドライバーが操作を行うか
- 場所は限られた道路か、全ての道路か
といった分類によって、自動運転レベルが決められています。
そして2017年12月現在、公道で利用できる自動運転車の最高水準となっているのがレベル2「一部自動化・運転支援」です。
これは、ステアリング操作と加減速の連携によって運転をサポートするレベルです。
渋滞時などに追突しないように加減速を行ってくれるので、一時的にハンドルを放しても問題ない機能です。
下記を見てください。
こちらが、2017年末の時点で最高水準の自動運転を搭載しているメーカー・車種です。
自動運転は交通事故やドライバー疲労の低減はもちろん、運転中の過ごし方を大きく変える可能性を秘めています。
とはいっても
- 自動運転ってどこまで実用化できているの?
- 自分がクルマを運転している頃に実現されるの?
- 最高レベルの自動運転が実現したらどうなるの?
など、疑問はつきませんよね。
今回は、自動車業界に関わって15年近くになる筆者が「自動運転の最新情報と実用化レベルのすべて」を分かりやすく解説します。
全部読んでもらっても3分程度です。ぜひ最後までご覧ください。
目次 [表示]
クルマの自動運転とは?
まず、自動運転とは「これまでドライバーが手動で行っていた運転操作を自動化してくれること」です。
常にハンドルを握り、前方や側方に注意を払いながら運転を行う状態が「完全手動レベル」としたら、完全自動では「運転席すらなくても良い」というレベルになります。
詳しくは後述しますが、この両者の間にさらに4つのレベルがあり、計6段階の自動化レベルが存在します。
※本記事でご紹介する自動運転レベルは米国運輸省が採用し、日本でも導入検討されているSAE(Society of Automobile Engineers)基準によります。
※参照:SAE「Levels of Automation for Defining Driving Automation in On-Road Motor Vehicles」
自動運転で見込める5つの効果
自動運転が実現すると、以下の5つの効果が見込めます。
どんな効果を及ぼすか、筆者が考える具体的な内容も記載してみました。
- 安全:人的ミスによる事故を減らす
- 利便性:運転の負荷を減らしてくれる
- 環境:不要な加減速や渋滞を減らして、燃費を向上させる
- 経済:渋滞解消による交通のスムーズ化
- 社会:高齢者など、運転が難しい方の移動支援
ちょっと難しい言葉だったりするのですが、完全自動運転が実現すると運転中でも
- 仮眠を取る
- 食事をとる、団らんをする
- 会議、打ち合わせをする
といったことができ、また渋滞等を柔軟に回避することができるかもしれません。
自動運転が利用可能な道路
自動運転のレベルを説明する上では「一部の道路か」「全ての道路か」という考え方が必要です。
原則、以下のような4つの分類を行っています。
現在、自動運転が実現していっているのは「高速道路」に限られます。
信号もなく、曲がり角・分岐も少ないため、自動運転の活躍する場面が作りやすいためです。
今でこそ走行領域は高速メインですが、2020年以降は市街地対応の自動運転も出てくるのではと言われています。
※自動運転に対応する走行領域の現状については首相官邸HP「自動走行の実現に向けた取組方針報告書概要」参照
一目でわかる!自動運転の全6レベルを解説
では、あなたが特に関心が高いと思われる「自動運転のレベル」について解説しましょう。
自動運転はレベル0~レベル5の6段階に分かれています。
レベル5は完全自動化によって、運転席がなくてもクルマが動くというものですね。
それぞれのレベル設定を図にまとめてみました。
この後でそれぞれのレベルを詳しく解説しますが、レベル3を境目に「事故責任はドライバーからシステム(メーカー)に移る」とされています。
情報ソースによっては「レベル3から事故責任がシステム(メーカー)になる」という事も書かれていますが、正確には解釈が分かれています。
アウディが一部レベル3対応のA8という車種を発売した際「事故責任はメーカーになる」と明言しています。
しかし他のメーカーも同調しているかというとそうでもありません。
筆者の考えをお伝えすると「レベル3でも事故責任がドライバーに問われる事例は出てくるだろう」ということです。
自動化されたとしても「緊急時にはドライバーで操作ができるようにしたい」という要望は世界的に根強く、その結果起こる事故という可能性もあるからです。
自動運転レベルの世界的な現状
現在、自動運転の実用化はレベル1の「運転補助」がスタンダードです。
ベンツのE/Sクラスや、テスラのモデルSといった高級車がレベル2を搭載しています。
一部で、レベル3に近いものが2017年に生まれています。
- アウディ A8
- キャデラック CT6
自動運転レベル2~3の対応車種リスト
このレベル2~3に対応している車種のリストをまとめてみました。
冒頭のリストに、更に詳しいスペックを追記したものです。
高画質画像はこちら
※2017年12月時点の各メーカー公式HP・プレスリリースから調査
※調査元は記事末に記載
では自動運転レベル全体に話を戻し、レベル0~レベル5の条件と特徴をお話ししていきましょう。
レベル0:ドライバーのみ
レベル0では、ドライバーが全ての操作を行う状態です。
ステアリング操作、ブレーキ・アクセルの加減速を含めてドライバーが行い、責任を持ちます。
- 事故責任:ドライバー
- 走行領域:全て
- 自動化装備:なし
また自動運転の機能強化において、センシング(コーナーレーダー・カメラ)の数も現状通りでは対応しきれません。
レベルごとに、コーナーレーダーとカメラ位置も記載していきましょう。
補足としては、LiDARとは「光を用いたリモートセンシング技術」の事ですね。
また、
- ABS(アンチロックブレーキシステム)
- カメラによる死角検知機能
はこのレベルでも搭載されています。
こういった情報や警報を受けて、運転操作を行うのはドライバーだからです。
ここではもちろん、事故責任はドライバーに帰属しますし、走行領域は全ての道路です。
レベル1:運転補助 ※現在のスタンダード
自動運転の世界的なスタンダードとされているのが、レベル1の「運転支援」です。
ステアリング操作または加減速操作のいずれかを補助してくれる装備です。
- アダクティブ・クルーズコントロール
- 車線逸脱防止機能
- 自動ブレーキ
といえば聞いたことがあるでしょうか。
最近の新型車には、こういった運転支援が標準搭載されたものが多いですね。
- 自動ブレーキ
- 車線維持補助
- 車線逸脱防止
- 衝突警報
- 駐車支援
- 事故責任:ドライバー
- 走行領域:全て
このレベル設定のポイントは「いずれかを補助する」ということです。
運転は基本的に「ステアリング操作と加減速の組み合わせ」で行われます。
このステアリング操作・加減速が相互に連携するのではなく、いずれかをサポートする事で、ドライバーが残りの運転操作を行います。
レベル2:部分的自動運転(ステアリングと加減速が相互連携)
それに対して、運転の基本操作であるステアリングと加減速の両方を連携してサポートするのが「部分的自動運転」とされるレベル2です。
- 渋滞追従
- 駐車支援フルサポート
- 自動車線変更
- 割り込み減速
- 車線中央維持
- 事故責任:ドライバー
- 走行領域:高速道路メインの公道
実質的には高速道路メインではありますが、公道対応している中では現在最高水準の自動運転になります。※
ステアリングと加減速の連携とは何か、イメージがつきにくいかもしれませんね。
例えば、
- 方向指示器の操作で自動的に車線変更を行う
- 渋滞の時にステアリング・ブレーキを操作しなくても追従を行う
というものです。
このレベルにくると、運転時の負担軽減度が一気に上昇します。
日米欧では2020年以降、このレベル2が拡大していくと予想されています。
※2017年12月時点の各メーカー公式HP・プレスリリースから調査
※調査元は記事末に記載
レベル2の搭載車種
レベル3:条件つき自動運転(特定の場所で自動運転)
レベル3は、2017年末現在、ごく一部の高級車で試験的に運用されている自動運転です。
高速道路など、特定の場所で運転操作の全てが自動化されます。
このレベル3を境目に、事故責任がドライバーからシステム(メーカー)に移っていきます。
- 高速追従
- 車線変更
- 追い越し
- 合流・分岐
- 急カーブ自動走行
- 本線離脱(高速を降りる)
- 緊急路肩退避
- 自動駐車
- 事故責任:システム(場合によりドライバー)
- 走行領域:高速道路メインとした特定の道路
高速道路走行中は、ドライバーが運転操作を行う必要はありません。
しかし、緊急時にはドライバーが運転する必要があるため、すぐに手動運転に切り替えられるように設計されています。
そのため、ドライバーは運転席にいなければいけません。
自動運転レベル3の難易度はかなり高い
研究によって、このレベル3はかなり難易度が高い事が分かってきました。
自動運転の先進国である日米欧であっても、2020年に流通するレベル3搭載車は数万台レベルではと言われています。
レベル3に一部対応しているアウディのA8でも、機能上の速度制限60kmが設けられています。
レベル3の搭載車種:アウディA8とキャデラックCT6
上記アウディA8に加えて、キャデラックのCT6は、2017年夏にこの自動運転(スーパークルーズ)を使って米国横断のハンズフリードライブを実施したことで話題になりました。
注意点として、この2車種がレベル3のハンズフリー運転を行うには「一定の速度下」という条件があります。
- アウディA8:60km以下
- キャデラックCT6:130km以下
そのため、完全なレベル3機能が実現出来ているわけではありません。
レベル4:市街地含む道路の完全自動運転
レベル4では、市街地を含む特定の道路ですべての運転操作が自動化されます。
- 信号停止・発進
- 歩行者、自転車の回避
- 障害物の回避
- 必要に応じた徐行
- 交差点の右折・左折・停止・進入
- 標識にしたがった走行
- 対向車両の回避行動
- 狭路の走行
- 大型車両などの識別判断
- 事故責任:システム(メーカー)
- 走行領域:市街地含む特定の道路
レベル3と違う点は
- 市街地も主に対応できる
- 緊急時の運転操作も自動運転システムが行う
といった2点です。
このレベル4は、Googleが自動運転レベル4に相当する試験車両の開発に着手したことが有名です。
しかし2017年6月にGoogleは「自動運転開発事業」をストップする事を発表しました。
市街地になると高速道路に比べて多くの交通状況が発生するため、レベル3以上に難易度が高いとされます。
しかし、このレベルに到達するとドライバーの運転操作は完全に不要になるため、これまでとまったく違う運転中の過ごし方が可能になります。
例えば冒頭で書いたような、運転中の
- 食事をする
- 運転席で仮眠を取る
- 運転席でPC閲覧や仕事をする
- 運転席と助手席で打ち合わせをする
といったことも実現できるかもしれません。
レベル5:自動運転の最終形(全走行領域での完全自動運転)
レベル5になると、完全な自動運転というレベルです。
システムが周りの交通状況を把握して、全ての運転操作を行うわけですが、レベル4と違うのは
- 運転席も不要になる
- 全走行領域での完全自動運転
ということです。
- 信号停止・発進
- 歩行者、自転車の回避
- 障害物の回避
- 必要に応じた徐行
- 交差点の右折・左折・停止・進入
- 標識にしたがった走行
- 対向車両の回避行動
- 狭路の走行
- 大型車両などの識別判断
- 事故責任:システム(メーカー)
- 走行領域:全て
たとえば、レベル5が実現すると「例え話でないリビングのようなクルマ」が生まれる可能性もあります。
将来どうなる?自動運転の課題と未来予測
ここまで、自動運転の定義と自動化レベルについて説明してきましたが、
- 実際、自動運転は安全なの?課題は?
- 自動運転の未来はどうなるの?
といったことが気になる方もいるでしょう。
最後に上記に対する見解をお話ししましょう。
実際試乗してみると「まだ怖い自動運転」
自動運転には、人間に代わって状況を判断し、運転操作を行う以外にも課題があります。
それは「人間の運転感覚を実現する」こと。
人が運転する際には、知らず知らずのうちに助手席の人に配慮して、減速・加速・ステアリングの微調整を行っています。
あなたの周りにも
- 安心して一緒に乗れる運転がうまい人
- うまく言えないけど、助手席に乗るのが怖い人
っていませんか?
どちらも運転操作自体は確かにマスターしているはずなのに、乗り心地に差が生まれるという事です。
それがシステムに代わった時により難しさが出てきます。
筆者自身、自動運転の試乗キャンペーンで助手席に乗った事があるのですが
- そこそこな速さでコーナリングする
- 助手席にはブレーキはないが、ついブレーキを足で探してしまう
という感想を持ちました。
本当に安心して自動運転を任せるには、こういった人間の感覚による微調整を実現できることが必要です。
ちなみに自動運転がもっとも進んでいるのは「飛行機」
クルマの自動運転について今回お話ししていますが、自動運転がもっとも発展しているのは「飛行機」です。
40年前から自動運転でのフライトが実現していることは意外と知らなかったのではないでしょうか?※
普通に乗っている時に、自動運転・主導運転の違いが分からないほど飛行機の自動運転は進化しています。
また
- 建機
- 農業機械
はレベル2まで自動化が実現しています。
※参照:「日本航空宇宙学会誌 第24巻 第275号(1976年12月)航空機用自動操縦装置 のすう勢」
電気自動車(EV)と共に進化していく自動運転
ハイブリッドカーに続いて、新たなエコカーとして「電気自動車(EV)」という言葉を聞く事が増えてきました。
電気自動車はエンジンを搭載せず、電力によるモーター駆動で動くクルマのため
- 環境に優しい
- ガソリンを消費しないため経済性に優れる
といった事から注目されています。
あと20年もすれば、ガソリン車・ディーゼル車は世の中から無くなるとさえ言われています。
電気自動車について詳しくは以下の記事をご覧ください。
-
-
電気自動車とは?メリット・デメリットと各メーカーの車種一覧【2017年最新】
エコカーと聞くと、大体の人がハイブリッドカーを想像します。 しかし、現在世界中でハイブリッドカーの次となる次世代自動車の ...
その電気自動車と自動運転は、連携し合って進化していくと筆者は考えています。
それは自動運転に対するのニーズがEVでかなえられる部分、またその逆が多いからです。
以下の図は、電気自動車と自動運転が連携できるポイントをまとめたものです。
例えば、電気自動車は航続距離の短さや、環境によってバッテリーのパフォーマンスが変わる事が懸念されています。
しかし自動運転が進化する事で「カーシェア」が大きく様変わりすると筆者は考えています。
乗り手と乗り手を繋ぐ車の移動を、自動運転でシステム化できるからです。
そのため「乗りたい時だけ乗れる」クルマの活用が可能になり、電気自動車の航続距離を補うと考えられます。
今回の重要ポイントまとめ
- 現在の自動運転はレベル2が最高水準
- レベル3の一部機能を実現した高級車も登場
- レベル3の機能実現は難易度が高く、2020年も台数はごくわずかの予想
- レベル4からは完全な自動運転で運転中の過ごし方が大きく変わる
- 自動運転は「人間の感覚を持った運転の微調整」が課題
- 電気自動車と自動運転は連携し合って進化していくはず