一億総中流はすでに過去、アベノミクスの陰で日本の格差拡大

貧富の差が小さい日本の社会構造を表す「一億総中流」は、格差拡大によって過去となりつつある。

  足元、経済成長は続いているが、賃金の上昇はわずかで、果実は平等に配分されていない。収入が増えない中、貧しい人々の子どもを持つ意欲は薄れ、日本の人口問題を悪化させる可能性もある。高齢化社会に備え、増税しようとしている政府の努力も無駄に終わることになる。

  安倍晋三政権の恩恵を最も受けているのは東京都民だ。2016年度までの5年間で平均課税対象所得は7%増えた。一方、奈良県と香川県に住む約240万人の所得は減少した。

  秋田県民の所得は47都道府県で最も低く、東京の59%にとどまる。福島県民の所得は増えたが、11年の福島第1原発事故の補償と復興に関連したものだ。

備考:第Ⅰ階級(200万円以下)、第Ⅱ(200-347万円)、第Ⅲ(347-529万円)、第Ⅳ(529-800万円)、第Ⅴ(800万円以上)

人口

  日本の人口は08年に減少に転じ、そのペースは加速している。収入の少ない地方にとって、高齢化と人口減少は事態をより悪化させる。若者は仕事のある都会に移り、東京や名古屋、福岡は成長し続ける一方、地方は老い、人口が激減している。

  地方での生活はますます困難になる。納税者である労働者は大都市に移動し、地方の市町村は残された人々のための医療や行政サービスを維持するのに苦戦している。すでに退職した年金受給者が少なくないからだ。

東京

  都内では収入格差が広がっており、他の道府県との差よりも大きい。平均課税対象所得が日本で最も多い港区民は、5年にわたって好況の恩恵を享受した。企業収益の増加によって16年の配当収入は12年と比較して251%増加。米グーグルやゴールドマン・サックス証券が現地法人を置く同区の16年の所得は12年比で23%増加し、約1110万円となった。

  港区の所得は、増加幅が1桁台にとどまった江東区や大田区の3倍近い水準となる。都心から2時間の距離にある都内西部の檜原村の約900人の納税者の対象所得は、港区民の4分の1。

大阪

  関西経済の中心、大阪の所得は東京の77%にとどまる。パナソニックやシャープなど製造業の苦戦が都市と住民の収入にも影響を与えている。

  収入が増えない人は経済成長の波に乗りきれず、資産を増やす機会を逃した。人々の消費が増えなければ経済は停滞し、税金を払う余裕がなければ国も停滞する。日本は人口減少や財政悪化、デフレなど多くの経済問題を抱えており、格差拡大は対処をより難しくするかもしれない。

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