先だって2017年2月の月次報告で、ソラチカ改悪の可能性について書いたところ、多くのお叱りがありました。曰く「おまえが言うな。そもそも陸マイラーの貯め方を広めたのはおまえだろうが。改悪があるとしたらそれはおまえのせいだ」と。ごもっとも。「誰にもこの方法を知られたくなかった。自分だけが知っておきたかった」と思う人にとっては腹の立つことだったかもしれません。
しかしいずれにしても陸マイラーの歴史は常に改悪との闘いの歴史です。企業の思惑ひとつで、昨日までできたことが今日はできなくなります。時には抗議の声を上げることで状況をひっくり返せることもありますが、ほとんどの場合、好転することはありません。陸マイラーがやるべきことは、改悪の可能性を考え、別の手を考えておくことです。
冷や水をぶっかけるような記事で心苦しいですが、これも必要なことだと思います。
- ソラチカ案件復活の意味を深読みする
- ソラチカは三社の思惑が複雑に絡むカード
- ソラチカ新規発行停止と年会費値上げの可能性
- ソラチカからANAマイルへの交換率低下の可能性
- ソラチカルート封鎖の可能性
- 各改悪後の状況変化と交換ルート
- 現在やっておくべき対策
- ソラチカ改悪により陸マイラーは終わるのか
- 最も大きな影響を受けるのはSFC修行僧
- まとめ
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ソラチカ案件復活の意味を深読みする
先日、ソラチカ案件が約2年ぶりに復活しました。あらたに陸マイラーとなる人にとっては朗報でしたが、なぜ今ソラチカ案件が復活したのだろうと考えると、これは良くない兆候なのではないか、ということに思い至りました。
ソラチカが約2年間ポイントサイトの案件として消えていたのは、わざわざポイントサイトに広告費を支払わずとも、私も含め多くの陸マイラーが「ソラチカは必須である」と宣伝したことで、労せず新規入会者を獲得できていたからであり、それ以上の増加を必要としていなかったからです。ではなぜ今、再び広告主はポイントサイトに広告費を投入しようと思ったんでしょうか。
ひとつの可能性(最悪の可能性)として、「改悪後の新規入会者減に備えて、今のうちに会員数を増やしておこうと広告主が考えた」ということが挙げられると思います。もちろん別な可能性も無数にありますが、それを考えたところでマイラーの益にはなりませんから、ここでは最悪を想定しておきます。
参考になるのは2015年にあったダイナース案件の高騰です。以下の記事に詳しく解説してあります。
当時の推論では「恐らくシティから三井住友信託銀行への、ダイナースの移管に際し、「カードホルダー1人につきいくら」という契約条項があるのではないかと思われます。最後のどさくさに、ホルダーを増やしてしまえという戦術です」と述べました。恐らく、当たらずとも遠からずだったと思います。
ソラチカに関しては発行会社が盤石のJCBですから買収とは無縁ですが、「改悪前にホルダーを増やしてしまえ」ということがあっても何も不思議ではありません。
また、改悪というのはあくまでも陸マイラーにとっての話ですから、JCBにとっては逆に収益改善策ということになります。収益が改善するのなら、広告費を投入してホルダーを増やした方が良い、という判断があったとも考えられます。
ソラチカは三社の思惑が複雑に絡むカード
ソラチカは、株式会社ジェーシービーが東京メトロ、ANAと提携して発行しているANAカードの一種です。ソラチカの宣伝広告費はJCBが出していますが、東京メトロ、ANAの利害と無縁ではいられません。ソラチカの現状を鑑みるに、恐らく三社はそれぞれこんな状況だと思われます。
- JCB
ソラチカの決済利用、キャッシング、リボ払いを増やしたい。新規発行枚数の多さの割に、中継カードとして使われている現状の決済利用額の低さが不満。 - 東京メトロ
できれば東京メトロへの乗車回数を増やしたい。ただし、元々固定の通勤客を相手にしているので、JCBやANAと比べると不満は格段に少なく、両社の意見に強く影響される側。 - ANA
ソラチカが中継カードとして使われても財務には何の影響もないどころかむしろ望ましいのだが、飛行機に乗るよりポイントを貯めた方が格段にマイルが貯まるという状況については危惧しており、是正したい。
それぞれ状況改善のために独自の施策が打てますが、三社の了解が必要となるはずです。以下、三社が納得できる改悪の落としどころについて考えてみます。
ソラチカ新規発行停止と年会費値上げの可能性
新規発行を停止してしまうという荒業がまず浮かびますが、私はこの可能性は非常に低いのではないかと思います。新規発行停止後も、数年間は現状を維持する必要があり、今まで以上に「おいしいところだけいただく」という駆け込みのホルダーが増えるだけです。JCBにとって一番やりたくないことではないでしょうか。今更ポイントサイトに広告費を投じる意味も見出せません。
新規発行を停止するより、年会費を5,000~6,000円程度に上げた方が良策です。年会費の値上げという改悪なら、マイラーにとってはそれほどの痛手とはならないため、渋々支払う人の方が多いでしょう。中には喜んで支払う人もいるかと思います。この程度の改悪でしたら、むしろ万々歳ですね。
ただし値上げの場合、ANAの危惧は全く解消されません。
ソラチカからANAマイルへの交換率低下の可能性
現状、0.9倍という交換率がいかに突出して高いかは、陸マイラーなら全員が感じていることと思います。これが0.6倍、もしくは0.5倍になると、各社にどのような影響があるかを考えてみる必要があると思います。
- JCB
確実に新規入会者が減り、解約が続出するだけでなく、カード誕生時の最大の売り文句だった「メトロ→ANA」の高交換率がなくなり約束違反となるため、イメージダウンが非常に大きい。決済に関してもさらに優秀なANA VISAカードへの乗り換えが促進されるだけなので、JCBにとって悪手であることが明白。 -
東京メトロ
カードの存在意義がなくなるのでできればやりたくない。中継に関して財務への影響はないが、自社のメトロポイントの価値が落ち、乗客の増加は見込めない。ただし元々固定客を相手にしているので影響は軽微。 - ANA
マイルの売上は減るが財務への影響は軽微。飛んで貯めるより陸で貯めた方がいいという状況が多少変えられるためANAにとっては望ましい。
この改悪はメトロとJCBにとってメリットがなく、特にJCBが割を食ってしまうことが明白なため、三社間でなかなか話がまとまらないでしょう。また、この改悪を控えている状況で、ポイントサイトに広告費を投じるというのも考えにくいです。しかし、ひとつの可能性として頭にいれておく必要はあります。
ソラチカルート封鎖の可能性
陸マイラーが広めた言葉「ソラチカルート」。これが封鎖されるという改悪について考えてみます。
ソラチカルートと一言で言っても、そこには入り口と出口があります。「ポイントサイト→メトロ」、これが入り口。そして「メトロ→ANA」が出口ですね。
0.5倍や0.6倍に交換率が下がるならまだしも、出口の封鎖など論外です。メトロポイントが無価値になってしまうため、あり得ません。ソラチカという名前である意味もなくなります。これならカードを廃止する方がマシです。
これに対し、入り口の封鎖は可能性が非常に高いと思われます。「ドットマネー→メトロ」「PeX→メトロ」を塞ぐということです。これなら売り文句は消えません。相変わらず「メトロ乗車によって貯まるメトロポイントは0.9倍でANAマイルに交換できますよ!」と言えるのですから。
- JCB
中継カードとしての意味がなくなり、新規入会の勢いは鈍る。が、相変わらずメトロ→ANAでは0.9倍なため、イメージダウンが避けられ、交換率を改悪するよりは解約件数が抑えられる。中断していた広告費の再投下で新規入会も見込める。中継カードとしての役割がなくなり、ホルダーがそれほど減らないのであれば、決済利用が広がるかもしれない(と少なくともJCBは考える)。 - 東京メトロ
中継の入り口は塞ぐが、出口はそのまま0.9倍なので、自社のメトロポイントの希少価値が上がり、メトロの乗客を多少増やせる可能性があり望ましい。中継で使われることはなくなるが、元々中継には何のメリットもなかったので影響はなく、メリットだけを享受できる。 - ANA
マイルの売上は減るが財務への影響は軽微。空を飛んで貯めるより、陸で貯める方が格段に貯まるという歪んだ状況を多少是正できるため、ANAにとっても望ましい。
三社がそれぞれ、思惑の上では利害が一致するのがこの「ソラチカルートの入り口封鎖」です。
東京メトロが、ドットマネーやPeXに対して「ごめんなさい。今までありがとう」と一言断るだけで済むというのも大きいです。ユーザーに対してルート閉鎖の責を負うのはむしろドットマネーやPeXとなるわけですから。マイラーの抜け道を塞ぎたいANAがメトロに働きかけ、メトロが応じるという形になるのではないでしょうか。JCBにとっても一見悪くない施策となるため、JCBも同意しやすいです。
なんらかの改悪があるとすれば、この可能性が最も高いと思います。
ルート封鎖のツケはJCBが意図せず払うことになる
メトロによってソラチカルートの入り口封鎖という改悪が行なわれる場合、JCBは「メトロポイントを0.9倍で交換できるのはソラチカだけだから、これは大きな魅力のままであり続けるに違いない」と考えるのではないかと思われます。
しかしJCBの思惑は外れてしまうでしょう。東京メトロの地下鉄に乗る機会がない地方在住者にとって、ソラチカを保有する意味はなくなるので、解約者が続出するはずです。
また「ソラチカ→ANA」の高交換率が維持されたとしても、それが決済利用のモチベーションとなるわけでは決してありません。むしろ、中継カードとしての存続を願って、低還元率にも関わらず決済利用してくれていた人たちまでが、解約しかねません。
決済利用を期待するなら、一義的にはOkiDokiポイント自体の魅力を上げるか還元率を上げるほかないのです。JCB側には何らかの施策が必要になってくるはずですが、そこまでJCBが考えているかどうか……。カード会社はどこも皆、自社のサービスに関して自信過剰です。他を犠牲にしてでも、何かひとつでいいから強力な魅力が必要だということを、あまりよくわかっていません。
カード申込みのページを見ると一目瞭然ですよね。「100円で1ポイントが貯まります!」「ポイントの有効期限はなんとナシ!」「ポイントはこんなものに交換できます!」「選べるお支払い方法!」「リボ払いで月々の支払いも安心!」「病院でも使えます!」「旅行先では優待店も!」
みんな揃って横並び。これらはカードの基本であって、そのカード独自の魅力ではありません。カード会社はどこも、ユーザー目線で考える力が弱いです。保有してくれさえすれば使ってくれるだろうと考えてしまう傾向があります。
各改悪後の状況変化と交換ルート
- ソラチカカード廃止
完全にカードが終わるまでは0.9倍のまま交換を続ける。終了後は0.5~0.6倍のルートに移行。 - ソラチカ年会費値上げ
コスト増ではあるが大きな影響はない。マイラーにとって最も望ましい改悪。 - メトロ→ANAの交換率の低下
0.5~0.6倍の交換率となり、JAL同等となる。対JALで強力なキャンペーンを行なったモッピーに倣い、各ポイントサイトがANAへの直接交換キャンペーンを行なうようになるかもしれない。ソラチカは保有の意味を完全に失う。 - ソラチカルートの入り口封鎖
メトロポイントのみ0.9倍、その他のポイントは0.5倍~0.6倍の交換率となる。ドットマネーの地位が低下する。各ポイントサイトがANAへの直接交換とともに、PeXへの交換キャンペーンを行なうようになるかもしれない。東京メトロの地下鉄利用者にとってはソラチカ保有の意味がある。
交換率低下、もしくはルート封鎖後の交換ルートとしては、以下が当面のスタンダードとなります。
PeX→VISA(ボーナスポイント)→ANAです。
交換率は0.6倍。交換日数は14日程度と短め。交換手数料はなし。また、交換上限もありません。ソラチカルートの入り口封鎖でドットマネーの地位が低下するというのは、このルートが浮上するためです。
現状、JALの通常ルートだと「ポイントサイト→ドットマネー→JAL」で0.52倍ですから、これよりはまだ貯めやすい状況となります。
ドットマネー(or PeX)→メトロ(非ソラチカ)→ANAというものもあります。
こちらも交換率は0.6倍。交換日数は120日程度と長め。交換手数料はなしですが、最大のネックは月2万ポイント(ANA12,000マイル)までしか交換できないということです。PeX→VISA→ANAが全てにおいて勝るため、よほどたくさん東京メトロの地下鉄に乗る人でない限りは利用価値がありません。
ドットマネー→Tポイント→ANAもあります。
こちらは交換率0.5倍のためかなり劣ります。交換日数は15日と短め。交換手数料はなし。交換率0.6倍で使い勝手のいいPeXルートを使うべきです。
現在やっておくべき対策
改悪後を見越して、今のうちにやっておくべき対策は限られます。できるだけ多くのポイントを貯めておくことです。貯めたポイントは、最悪でも現金化できるので無駄にはなりません。
交換率の低下という改悪がアナウンスされたら、貯めたポイントは素直に0.6倍のPeX→VISAルートで交換します。
ソラチカルートの入り口封鎖という改悪がアナウンスされたら、メトロポイントが有効期限切れを起こさないギリギリ、24万円相当のポイントをドットマネーからメトロに交換できればベストです。そんな大量ポイントをお持ちの方はほぼいないでしょうから、実際は「できるだけ多くのポイントを、封鎖前にメトロに交換する」ということになります。交換できた分に関しては0.9倍が適用されます。
また、PeX→VISAルートにおいては三井住友カード株式会社が発行するVISAカードが必要になってきます。これは元々ANAマイラーの決済用カードとして推奨している、ANA VISAカードが流用できます。まだ発行していない人は、ANA VISAカードの発行をおすすめします。解説は以下の2つの記事が詳しいです。
ソラチカ改悪により陸マイラーは終わるのか
0.9倍が0.6倍になってしまうのは、陸マイラー界を揺るがす大改悪と言えますが、これによって、「ポイントサイトでマイルを貯めるのは効率が良くお得である」という状況が変わるわけではありません。以下の3つの理由があるからです。
- 飛行機に乗ってマイルを貯める方法も、クレジットカード決済によってマイルを貯める方法も、結局は大金をかけないとたいして貯まらない。
- ポイントサイトの利用は全くお金がかからない。もしくは日々の生活に密着した部分での「必要な出費」を大きくポイント化できるので効率が良い。
- マイルは利用時に価値を高めることができるため、ポイントが0.6倍に目減りしてもなお、現金化するよりお得になる。
実際、ソラチカの発行が始まった2012年3月以前には、全ての陸マイラーが、ポイントサイトで貯めたポイントを0.5倍程度でマイルに交換するのが当たり前でした。2012年から現在までが、突出しておトク度が上がっていたに過ぎないのです。
しかしソラチカ時代よりは目減りが大きくなるため、マイルで飛行機に乗ることにそれほどの価値を見出せない人にとっては、ポイントサイトのポイントを、現金化する方がより魅力的になるかもしれません。
たとえば、「ハワイにエコノミークラスで行きたい。ホテルも格安なところで構わない」という人の場合、往復に必要なマイルはANA40,000マイル。0.6倍で40,000マイルを貯めるために必要となってくるポイントは約67,000ポイント。これは現金化して67,000円とすることもできるわけですから、航空会社や便の時間帯こそ選べなくなるものの、格安のパックツアーに67,000円を投入した方が良い、ということにもなり得るわけです。
もちろんマイル価値がもっと高くなるビジネスクラスを狙うなら、現金化より、マイルに交換した方がずっとおトクになるわけですが。
この辺の判断は、ソラチカ改悪後は、よりシビアに見ていかなくてはいけません。判断基準となるのは1マイルを1.7円以上で利用できるかどうかです。それを下回る特典航空券しか取れそうにないようであれば、ポイントサイトで貯めたポイントは、現金化した方が良い、ということになります。できれば1マイル2円以上は狙っていきたいところです。
最も大きな影響を受けるのはSFC修行僧
マイルへの交換率が0.6倍になってしまうと、「マイルをANA SKYコインに交換して、SFC修行をする」という手が全くお得ではなくなります。これがお得だったのは、ひとえにソラチカ0.9倍のおかげです。詳しくは以下の記事を読んでみてください。
マイル交換率0.6倍の場合、ポイントサイトで貯めたポイントは直接現金化して、修行費用に充てることが必要となってきます。元々はお金をかけずに貯めたポイントですから、キャッシュアウトなしと言えばなしですが、いったんは現金化するので、心理的抵抗は非常に大きくなると思います。
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まとめ
ソラチカ案件復活はソラチカ改悪の前触れかもしれません。心の準備はしておきましょう。いつかくる改悪の時に慌てないためにも。改悪の内容としては、ソラチカルートの入り口封鎖という可能性が高いと思われます。
改悪後は0.6倍という交換率がスタンダートになりそうです。各ポイントサイトの頑張りによっては、もう少し上乗せできるかもしれません。ANA陸マイラーが大打撃を受けることは否定できませんが、それでもなお、ポイントサイト利用によるマイルの貯め方が、最も効率良くお得であることには変わりがありません。
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