クローズアップ現代+「“中古品アプリ”で消費が激変!?〜メルカリの衝撃〜」[字] 2017.12.12
20代の女性が着ているコートは割安の中古品です。
中古品ブームをけん引するのはスマホのアプリメルカリです。
若者を中心に消費の形が大きく変化しています。
フリーマーケットのように個人と個人が直接物を売り買いできる、このアプリ。
売りに出すのも簡単です。
1日100万点が出品されなんと半数が24時間以内に売れていくんだとか。
アプリが火をつけた中古品市場の盛況にヤフーや楽天も次々と、新たなサービスを打ち出しています。
中には、中古品に一手間をかけ価値を高めようとする企業も。
首元だとか、この辺りですね。
ところどころ色があせ一見無価値な、このジャケット。
黒く染め上げると…まるで新品に。
高いものは5000円で売れるといいます。
売り手も買い手も新品より中古品。
物が循環する新たな経済は日本を変えるのでしょうか。
おはようございます。
よろしくお願いします。
メルカリをよく利用する主婦の川崎さちえさんです。
この日は衣がえでいらなくなった家族の洋服や靴など合わせて12点をアプリを使って出品することにしました。
アプリではこんなものも商品になります。
子どもが書き込んだ使用済みの問題集です。
使い方は至って簡単。
スマホやタブレットで売るものを撮影。
そして商品の情報を入力します。
あとは売り値を自分で決めるだけ。
3分ほどで出品完了です。
出品してから1時間半。
690円で出品した英語の問題集。
希望どおりの値段で売れました。
あとはコンビニなどから発送。
匿名で送ることもできます。
川崎さんはもともとネットオークションを利用して中古品の売り買いをしてきました。
複数の人が競り合うネットオークションでは売買成立までに時間がかかります。
一方、フリマアプリでは売り手と買い手1対1の関係で値段が決まるため時間が節約できます。
捨てていたものを再利用できちょっとしたお金も稼ぐことができる。
今やアプリは川崎さんのお気に入りです。
個人どうしの中古品売買でブームを巻き起こしたメルカリ。
次々と新たな機能を打ち出しています。
その一つがライブ配信。
相手とリアルタイムで売り買いのやり取りが楽しめる機能で人気を集めています。
子ども用のズボンに100円の値をつけた女性。
すぐに買い手がつきました。
メルカリと同様のアプリも次々登場し、中古品市場は活況。
市場規模は1兆6000億円を超え、5年で3割の増加です。
中古品の売買が手軽にできるようになったことで買う側の意識も大きく変わっています。
都内に住む大学院生新居日南恵さんです。
ファッション通販サイトZOZOTOWNの中古品サイトを頻繁に利用しています。
新居さんの押し入れの中を見せてもらうと…。
新居さんが中古品を好んで買うのは安いからだけではありません。
もう一つの理由とは…。
写真に写るたびに違うファッションをしたい。
一見、ぜいたくな願望も安く、気軽に買える中古品なら実現可能なんですね。
中古品なので手放すのも簡単。
数回着て飽きたらまとめて中古品を扱うサイトに売りに出します。
中古品の売買でふだんから節約を心がけている新居さん。
この日届いたのは自分へのご褒美として買った新品のハイヒールです。
新品であっても中古であってもワンシーズン着続けるものはほんの数点。
それ以外は次々と売ってまた物を買うサイクルができているといいます。
フリマアプリを使って、実際に中古品の売り買いをしている福田萌さん。
1週間にどのくらい利用しているんですか?
1週間に1回ぐらいは、売ったり買ったりどっちかはやっています。
何を売ったり買ったり?
今、子どもが小さいので、主にベビー用品だったり、子ども服というものが多いんですけれども。
その時期しか使わないようなものってありますよね。
子どもの興味があるかどうかということもあるので、もう興味がなさそうだったらすぐ売っちゃうという感じです。
でも、ばれたりしないですか?取り引き先と。
匿名配送があるので、私の住所、あるいは名前というのが、相手の方には伝わらない状態で、売り買いできるので、そこは安心感があります。
中田家のものだと知らずに、使ってる人がいるかもしれない?
いると思います。
全員そうだと思います。
なるほど。
もう一方、市場分析が専門で、消費者の行動を長年調査されてきた小方さん、中古品を買うほうが賢い、スマートだという声がありましたけれども、利用者の意識、消費者の意識ってどう変わってきてるんですか?
もうまずひと言で言うと多様化が進んでいるということですよね。
ですので、中古品市場というと、安いものというイメージがあるかと思うんですけど、安いだけではなくて、この人にとっては、こういう価値がある、私にとってはいらないものだけれども、この人にとっては価値がある、そういうものが増えている中で、取り引きが増えているんだと思います。
流行のサイクルが早くなってるということも関係してますか?
1970年代には、ヒット商品というと、5割以上のものが、5年以上の期間ヒットしてますという答えがあったんですけれども、2000年代以降には、そういったものが、5年以上って5%しかなくて、1年未満のものが2割というのは、本当に消費サイクルがどんどん早くなってるんですね。
それだけ魅力的なものがどんどん出てきて、消費者も新しいものを買いたいし、でも、今まで持ってたもの、まだ使えるのにもったいないな、売りたいという人もいる。
そこに価値を見いだして、買いたいという人もいるという、そういう動きが、技術の助けを借りて、取り引き増えているんだというふうに思います。
小方さん、もう一つ、メルカリの利用者なんですけれども、女性が多くて、特に、18歳から39歳までがけん引役になっているというデータがあるそうなんですけれども、この若い人たちが利用しているというのは、なぜなんですか?
デジタルネーティブとかということばがありますけれども、もうスマホでお買い物をするのに、とても慣れている世代であること、それからこの世代は2000年代にきれいな中古品屋さんが伸びた時代にお買い物を始めた人たちなので、中古品って汚いとか、かび臭いとかっていう、あまりイメージがないのかなと、そこも抵抗を抑えている、抵抗感が少なくなる要因なのかなと考えています。
福田さんは若い世代ですけれども、中古品って、抵抗ないですか?
私も実際、洋服だったり、靴というのを買うんですけれども、例えば、一回袖を通したものだけども、サイズが合わなかったとか、あまり使いませんでしたというコメントがあると、なんかこう、安心、誰かが試着したような感じで、買ったりすることはあるので、そんなに抵抗感はないですね。
中古で恥ずかしいとかということも、あまりないですか?
ほかの人には分からないと思うので、そこに関してあまりないですね。
ではここで、中古品の売買、いいことばかりではありません。
フリマアプリを通じた個人間の取り引きでは、これまで問題も起きています。
例えば現金を出品したケース、クレジットカードで買えば、すぐに現金を手に入れることができるため、高額で購入する人が相次ぎました。
出資法違反の疑いで各地で出品者が逮捕されています。
そしてきのうは、国内で取り引きが禁止されている絶滅危惧種の動物のはく製が売り出され、出品者が書類送検されたことが明らかになっています。
また国民生活センターには、未使用と書いてあったのに、使った跡が残っていただとか、実際には違ったものが届いたなどの相談が寄せられています。
メルカリでは現金の出品を禁止したほか、盗品の出品など、不正行為がないか、300人が24時間態勢でサイトをパトロールしています。
さらに今月からは、出品者に対する本人確認を強化するなどの対策を取っていますが、トラブルをすべて防ぐのは難しい状況です。
福田さん、やっぱりなんか、トラブルって経験ありますか?
一度靴を買ったときに、新品同様、ほとんど目立った傷もありませんって、ちょっと傷の写真が載ってたんですけれども、実際届いて見たときに、ちょっと、これは履いて歩けないなというぐらいの大きな傷だったものがあって、それは安く買ってしまった分、しょうがないと思って、処分してしまいました。
そういうことって、何に気をつけてるんですか?一番。
主に取り引きする方の取り引き相手の評価欄というのがあるので、そこを気をつけて見るようにしていて、例えば、先ほどおっしゃってた、新品同様って書いてたのに、毛玉だらけだったみたいなことも書いてあったりすると、その方はちょっと信頼できないなというふうに思って、取り引きをやめたりということはあります。
自分で自分を守らなきゃいけない部分もあるということですね。
このメルカリ、急成長していますけれども、そのメルカリの急成長を迎え撃とうと、従来から中古品を取り扱ってきた企業が今、新たなサービスを次々と打ち出しています。
ネットオークション最大手ヤフオク!です。
年間の売買額はおよそ9000億円に上ります。
メルカリが存在感を増す中で中古品をできるだけ多く確保し品ぞろえを増やしたいと考えています。
先月ヤフオク!が始めたのはブックオフと提携して、商品をその場で買い取るサービスです。
これまでのオークションでは売り手が複数の買い手とやり取りをするため時間がかかっていました。
新たな仕組みではブックオフが買い取ることで売り手がすぐに現金化できるようにしています。
ヤフー側は商品をより多く確保することでオークションをこれまで以上に活性化できると考えています。
トラブルになりがちな価格の査定でも工夫をしています。
初心者でも商品を持ち込みやすいようにあらかじめ目安の価格をネットで表示。
その数は家電製品から衣類に至るまで、53万点に上ります。
実際の買い取りにあたって重視しているのは不公平感が出ないこと。
そのため、価格の査定基準が明確に決められています。
例えばこのカメラについて型番からデータベースを調べると。
目安の価格が表示されます。
あとは箱があるか傷みがどれくらいかなど項目ごとにチェックして価格が決まる仕組みです。
メルカリのブームを受け店舗型の業者も対抗策を打ち出しています。
中古ブランド品販売の老舗コメ兵です。
先月、中古ブランド品の売買を仲介するフリマアプリを立ち上げました。
武器となるのは長年の店舗販売で培った鑑定力です。
売買が成立すると会社は商品を売り手から取り寄せ本物かどうかを見極めます。
問題がなければ買い手の元に商品が届きます。
もし問題があると判断した場合は売買そのものがキャンセルとなり商品は売り手に返品されるという仕組みです。
この会社のアンケートではフリマアプリなどで中古のブランド品を買うことに不安を感じていると答えた人が7割に上りました。
そこでこの仕組みを導入。
売買額を増やそうとしています。
新たなサービスは、ほかにもあります。
売買のときにその金額の10%の手数料を取るメルカリに対抗しようと、楽天は販売手数料を無料にしました。
それからこちらは、オタク系に特化したフリマアプリ、アニメの商品などが多く出品されています。
各社、お得感や信頼感、さらに専門性を売りにしています。
一方で通信アプリ大手のLINEはフリマアプリからすでに撤退に追い込まれるなど、競争は激しさを増しています。
企業もあの手この手で、新しいサービスを打ち出していますけれども、福田さんは例えば、こんなサービスがあったらもっといいのになと思うようなことってありますか?
もう日々、子育てで忙しいので、新しいもの、新しいアプリを使うということに、ちょっと若干抵抗があるので、すべて一元化して、新品も中古品も、一括比較できるようなサイトがあればなって思ったりもします。
なるほど。
小方さん、こうしてサービスが充実して中古品の市場が広がっていくということ、一見いいんですけれども、ちょっと心配なのは、新しいものが売れなくなって、日本経済、傾いていっちゃうんじゃないかという気もするんですけれども、どうですか?
あまり心配する必要はないのかなと思っています。
一時的には確かに、今まで中古品市場がなかった市場に中古品が入ってくると、その分、新品が売れないということで、新品市場に打撃になりますが、一方で、新品が売れないと中古品市場への商品の供給というのは、ないわけですよね。
車の市場のように中古車市場というのも以前からありますけれども、あのように、新車が売れて、その下取り価格を考えて、中古車市場に車が回っていくという。
新車買う方も下取り価格を頭に入れて買ってるんですよね。
そういうふうにほかのものについても、むしろ下取り価格を、これも売れるようになるんだということが分かってくれば、むしろ新品を買いやすくなるという、そういう側面もあるかもしれない。
そういうふうに考えると、どこかで新品市場と中古市場の割合というのがバランスするようなそういう姿になっていくので、あまり全部、中古品市場になってしまって、日本が貧しくなるという心配はしなくてもいいのかなと考えています。
福田さん、必要なときに、必要なものを買って使わなくなったらほかの人に譲ると、なんかこう、今までの消費の在り方というのを、根本的に変えるような気がするんですけど、どう感じます?
私は個人で売り買いをするようになってから、自分の持っているどんなものにも価値があるんだなということが新しい発見で、あったんですね。
今までだったら、自分がいらなくなったものというのは処分してしまうか、いる人が現れるまで保管するという、2つの選択肢しかなかったんですけども、誰かにとってはすごく価値があるものなんだっていう発見が、うれしくもあり、またそれがすごくエコだなというふうにも感じています。
あとやっぱり、物を買うときに、すごく考えなきゃいけなくないですか。
そういった意味では、すごく鋭く消費感覚、自分の中で研ぎ澄まされているような気がして、次、売れそうかな、どうかなというのを、常に考えるようになりましたね。
消費者を賢くする、単なる消費者じゃなくて、そうなるとバイヤーですね。
バイヤーに、個人でバイヤーになってますね。
社会からそうすると不要なものがなくなっていくんじゃないかという気もするんですけど、小方さん、このこと、社会の在り方、どういうふうに変える可能性があるとお考えですか?
今までは、人が物を買ったら、一人の人が所有をして、それをずっと持って、使わないんだけれども、死蔵しているというようなこともそういうことも結構あったわけですけれども、社会全体として見れば、使いたいという人に、どんどんその物が流れていくっていう、人や物やお金が流れるって、経済の活性化の基本ですけれども、中古品市場というのがそういう流れであるというふうに考えれば、より賢い消費者が増えていくという流れを作っていく動きなんだというふうに見ることができるかと思います。
これによってやっぱり、新しい物の流れ、そして経済の在り方、可能性ありますか?
より賢い消費者が増えていくというふうに評価できるんではないかというふうに思います。
今日は…2017/12/12(火) 22:00〜22:25
NHK総合1・神戸
クローズアップ現代+「“中古品アプリ”で消費が激変!?〜メルカリの衝撃〜」[字]
1日の出品数は100万点。今スマホ一つで手軽に売り買い出来るフリマアプリが急拡大している。中古品市場では競争が激化。モノへの価値観をも変える消費の最前線に迫る。
詳細情報
番組内容
【ゲスト】日本総研主任研究員…小方尚子,タレント…福田萌,【キャスター】武田真一,鎌倉千秋
出演者
【ゲスト】日本総研主任研究員…小方尚子,タレント…福田萌,【キャスター】武田真一,鎌倉千秋
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