ドナルド・トランプ米大統領は勝ち進んでいるのか

ジョン・ソープルBBC北米編集長

Donald Trump (front R) and Japanese Prime Minister Shinzo Abe (front L) return in a golf cart after playing a round of golf Image copyright Getty Images

ドナルド・ドランプ米大統領は当選以来、何度もゴルフをしてきた。自分が所有する豪華施設で、よく仕事をしているようだ。色々な上院議員を招待しては一緒にラウンドを周り、あれやこれやと政策テーマについて支持を取り付けている。

トランプ氏の仕事の仕方は、必ずしもきれいではない。必要以上の雑音や巻き添え被害が出ているように思える。

しかし、3番ホールでシャンクしようと、5番ホールで木に当てようと、14番ホールで池ポチャしようと、誰が気にするだろう? 重要なのは、どうやってラフから抜け出るかだ。

リカバリーショットが重要だ。緊急事態からいかに脱出するかが大事なのだ。巨大バンカーの砂に埋もれてしまったかのように見えるたび、トランプ大統領はどうにかしてボールをチップインさせ、にこにこしながら再登場する。

Michael Flynn, former national security advisor to President Donald Trump, arrives for his plea hearing at the Prettyman Federal Courthouse Image copyright Getty Images
Image caption マイケル・フリン前大統領補佐官(国家安全保障問題担当)は連邦捜査局(FBI)に虚偽の供述をしたと有罪を認めた

大統領選をめぐりロシア当局とトランプ陣営が結託していたのかについて、ロバート・ムラー特別検察官の捜査が進むなか、マイケル・フリン前大統領補佐官(国家安全保障問題担当)は12月1日、連邦捜査局(FBI)への虚偽供述を認め、有罪となった。当然のことながら、米国ではこの問題がニュース見出しを独占している。

特に興味深いのは、フリン被告が捜査協力をしていると表明した点だ。

さらに、トランプ氏は奇妙な内容をツイートしたが、本人が書いたわけではないという説が浮上した。

毎日のように、あるいは毎時間のように新展開があり、それがその時の報道を独占する。

あまりに大ニュースなのでこの話題はあと1週間は続くだろうと思うような内容でも、春のにわか雨のように始まっては来てしまう。そして我々は、次の土砂降りを待つ。

大統領は英極右団体のビデオをリツイートし、テリーザ・メイ英首相と口論した。しかしこれもすぐに終わった。

大統領は、FBIの評判。それも通り雨のように過ぎ去っていった。

小児性愛者の疑いのかかる(本人は否定)アラバマ州の上院補選候補ロイ・ムーア氏を、大統領は公然と支持し始めた。ああ、そう。

自分への感謝が足りないと、バスケットボール選手たちといざこざを起こす。水たまりすらできやしない。

The US Capitol casts a reflection on 29 November 2017 Image copyright Getty Images
Image caption 共和党は大規模な包括減税法案を成立させようとしている

米国各地の何百万もの家庭では(特に1年前にトランプ氏に投票した家庭は)、一連の騒ぎを単なる雑音としてシャットアウトしているのではないか。そんな気がしている。

米国の一般家庭にとっては、上院を通過した大型税制改革法案の方が大事なはずだ。

確かに、低所得の米国人より億万長者が恩恵を受ける内容だが(自家用ジェット控除の導入で恩恵を受ける人はあまり多くないだろう)、低所得者にも多少のメリットはある。

加えて、ブルーカラー労働者の賃金が上昇しつつあるという兆候もある。失業率が非常に低いため、一部の産業では労働力不足が生じており、それが転じて労働者を惹きつけるための賃金上昇につながっている。

米労働統計局 によると、製造と運輸業の仕事の需要が大きく伸びている。

一方で、米国の大企業は、議会が約束する法人税率引き下げによって投資が拡大し、それが雇用増加と賃金上昇につながると約束している。経済は今、元気なのだ。

People walk in front of the New York Stock Exchange Image copyright Getty Images
Image caption 米金融業の中心地ウォール街は、好景気に沸いている

自分の年金が株式市場と連動している人は、ウォール街の動向を見て、毎日がクリスマス状態だと喜んでいるはずだ。大統領も、繰り返しそう念押しするだろう。

株価(気まぐれな指標ではあるが)の動きは、実に目覚ましい。市場に自信が戻ってきている。

確かに、細かいことにこだわれば、株式市場はトランプ氏の大統領就任以前から強気相場だった。ここ何年間も市場は上昇基調だったのだ。

同様に、富裕層や大企業が豊かになれば富が国民全体に波及するという考えの、トリクルダウン効果(富裕層や大は以前にも約束されたが、結果は非常にまちまちだった。

しかしトランプ大統領は、何はともあれマーケティングが実に達者だ。良い経済指標は片端から、必ず自分の手柄にするだろう。そして、全ては自分のおかげなのだと、全ての米国人に信じ込ませようとするだろう。トランプ氏の一連のツイートを見れば、目にも明らかだ。感嘆符がいくつも並んでいるのを見れば、大統領が何を考えているかが分かる。

加えて、イスラム圏6カ国の国民に対する大統領の入国禁止令は、世界中で大いに怒りを買ったが、これはポピュリスト(大衆主義者)・トランプ氏の主要な選挙公約だった。

闘いはまだ終わっていない。入国禁止令に対するあらゆる訴訟について、連邦最高裁が最終的な判断を下すまで、何か月、ひょっとすると何年もかかるかもしれない。

A woman wears an American flag for a headscarf as she participates in the #NoMuslimBanEver rally in downtown Los Angeles Image copyright Getty Images
Image caption 最高裁は今月4日、イスラム圏など8カ国の国民に対する入国禁止令の執行を認めた

しかし最高裁は今月4日、大統領を勢いづける重要な判断を下した。入国禁止令に対する複数の訴訟の結果を待つことにはなるが、判事2人が反対したものの7人が賛成し、禁止令の全面執行を認めた。これは重要な法的勝利だった。

トランプ氏はさらに、自分の草の根レベルの支持者に不人気だった様々な規制を、細かく次々と撤廃してきた。つまり大統領の支持基盤にとって、トランプ氏は公約を実行していることになる。

ロシア疑惑をめぐる最新の新展開も、大統領の支持者にとっては大したことではないのだろう。せいぜいが、あくびをかみ殺す程度か。このことは、来年11月の中間選挙を見据えて神経質になっている共和党議員に、良い影響を与えている。

風向きが少し変わっているのを感じる。もし税制改革法案が成立すれば、もし株価が上がり続ければ、もし大統領があまり問題を起こさなければ(品行方正な聖歌隊の少年にならないのは、みんな分かっている)、さらに多くの勝利を手にするかもしれない。

ゴルフに話を戻そう。ゴルフのスコアカードには写真は載らないと言われる。つまり、たとえプレイは優雅でなくても、スウイングはひどくても、木に当たったボールがたまたまいい場所に跳ね返っただけだとしても、それでもいいのだ。ひどい勝ち方だったとしても、勝ちさえすれば、スコアカードには勝ったという記録しか残らない。

この大統領が気にしているのは、スコアカードだけだ。

(英語記事 Is Donald Trump winning?

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