2000年代に入ったあたりから、地上波のテレビ番組は、徐々に表現の幅が狭くなっていると言われるようになりました。
実際に狭くなっているかは色々な見解がありますが、BPO(放送倫理・番組向上機構)の設立や番組制作費のカットなど、外部要因としては自由が制限される方向に進んでいるのは間違いないところかと思います。
一方で、近年、NetflixやAmazonプライムビデオといったネット動画配信サービスや、Abema TVなどのネットテレビが台頭し、オリジナルコンテンツを製作・配信するようになる中で、「地上波ではできない」「地上波では見られない」といった宣伝文句が目立つようになってきました。
地上波はコンプライアンスに縛られ、毎分視聴率至上主義と予算削減でどんどんつまらない内容になっていき、自由で勢いのある新メディアにやがて追い抜かれる。
元気がない地上波、未来があるネットテレビ・ネット動画配信サービス、そんな雰囲気で語られることも多くなってきました。
しかし、本当にそういう未来がくるのでしょうか。
今回はこの「地上波では見られない」というキーワードを軸に、地上波テレビとネットテレビ・ネット動画配信サービスの関係を、今一度、整理してみたいと思います。
まず、「地上波では見られない番組」は、なぜ地上波で見られないのか。
大きく6つに分類してみます。
(1)想定視聴者層が狭いなどの理由で視聴率が見込めず、地上波では実現が難しいもの
(2)子供も自由に見る地上波テレビでは過激すぎてオンエアできないもの(エロ・暴力など)
(3)広告スポンサーのしがらみがあるもの
(4)地上波では様々な事情で自由に出演することが叶わない芸能人が出演しているもの
(5)予算的に地上波ではもはや作れないクオリティのオリジナルコンテンツ
(6)受信機としてテレビ以外での配信が想定されているもの
もちろんここに分類されないものもあるでしょうが、大きく分けるとこういったものが地上波では見られないものです。
たとえばAmazonプライムビデオの看板コンテンツとなっているバラエティ「HITOSHI MATSUMOTO Presents ドキュメンタル」は、番組内容が実験的で、松本人志自身が「ほんとに一生懸命見てもらわないと面白さは伝わらないので、地上波では絶対に視聴率が見込めないのでしょうね」と語っているとおり「(1)視聴率が見込めず、地上波では実現が難しいもの」にあたります。
記憶に新しいAbema TVにおける香取慎吾・稲垣吾郎・草なぎ剛の72時間ホンネテレビは「(4)地上波では自由に出演することが叶わない芸能人が出演しているもの」に分類されるでしょう。
Abema TVは、テレビ朝日出資でCMも流れるため、ネット動画配信サービスに比べて自由度は劣ると言われますが、地上波では出しづらいと思われている人をキャスティングするという点ではがんばっていると思います。
極楽とんぼの二人のレギュラー番組があったりもしますし、(元SMAPに比べるとものすごく規模の小さい話ですが)「くりぃむナントカ」の特番で、地上波からはガチで干されている岡本夏生が出演したりしていました。
上記6分類の中では、ひとつだけ少し毛色の違う「(6)受信機としてテレビ以外での配信が想定されているもの」は、例えば、VRによるスポーツ中継などを指します。こういったものは、とくにオリンピックを機に増えていくことでしょう。