樹齢150年の木を富山県から運び、メリケンパークに世界一のクリスマスツリーを設置するというプロジェクトに対して、一部から批判の声が寄せられています。
「めざせ!世界一のクリスマスツリー」のホームページ
このプロジェクトは神戸開港150年を記念して行われているもので、プロジェクトを主催しているのは、そら植物園株式会社を中心とした実行委員会です。2日からイベントがスタートしており26日まで続く予定となっています。
ツリーに用いた木は、富山県氷見市の山中に生えていた樹齢150年の「あすなろ」の木で、特殊車両と大型の船舶を使い1000キロ以上の距離を移動してメリケンパークに到着しました。樹齢150年の木を用いたのは、当然のことながら神戸開港150年に合わせたからです。ちなみに設置されたツリーはニューヨークのロックフェラーセンターの名物であるツリーよりも大きく、本物の木を使ったものとしては世界一の高さとのことです。
主催者によると、この木はイベント終了後、木材として再利用されるとのことですが、樹齢150年の大木をわざわざ運んだことについて一部から批判の声が上がっています。しかしながら、単純に自然保護という観点だけで批判されているわけではなさそうです。
このプロジェクトは阪神・淡路大震災や東日本大震災の鎮魂という意味が込められているとのことですが、ネット上での意見を見ると「亡くなった人のために別の生命を奪うというのは理解できない」など、このプロジェクトの趣旨についての疑問が多いようです。
またタイミングの悪いことに、プロジェクトに協力している「ほぼ日刊イトイ新聞」が「なにを考え、なにを思うか、(中略)それが本当のねらいでもあるのです」とツイートしたり、主催企業の代表者が、もともと落ちこぼれの木だったという文章をアップしたことなどが、さらに状況を悪くしたようです。
木材というのは、本来、伐採して利用するものですから、こうした行為に対する考え方は様々でしょう。批判している人も伐採や再利用をことさらに問題にしているわけではありません。そこに鎮魂や落ちこぼれの木といった様々な意味付けが加えられたことに対して違和感を持ったのかもしれません。また議論を呼ぶことがこのプロジェクトの狙いであると解釈されるような発言をしてしまうと、一部の人を不快にしてしまう可能性があることは容易に想像ができます。
高度成長の時代でしたら、皆が同じプロジェクトに感動するといった演出にも効果があったわけですが、現代社会は価値観の多様化が進んでいますから、一方的な価値観を強く主張することはあまりよい結果をもたらしません。
単純に世界一のクリスマスツリーを作るというイベントであれば、これほどの批判はなかったかもしれません。その意味では、今回の主催者や関係者のスタンスは少々「昭和的」だったといえるでしょう。
(The Capital Tribune Japan)