抗生物質の種類……感染症原因は細菌か、真菌か、ウイルスか
混同しがちですが細菌とウイルスは別物。使用する薬もそれによって異なります。写真はインフルエンザを引き起こすH1N1ウイルス
- 細菌による感染症……抗菌薬
- 真菌(カビ)による感染症……抗真菌薬
- ウイルスによる感染症……抗ウイルス薬
抗菌薬(細菌に作用する薬)の種類・作用・効果
まずは抗生物質の中で、主に細菌による感染症に使われる抗菌薬について説明します。抗菌薬は、作用の違いで以下の5種類に分けられてます。■細胞壁合成阻害薬(さいぼうへき・ごうせい・そがいやく)
細菌の一番外側にある細胞壁を破壊し、細菌を殺す薬。細胞壁は人体(動物)の細胞には存在しないので、この薬は人体細胞への毒性が低いのが特徴。代表的な薬は、肺炎や中耳炎によく使われるペニシリンなど。
■タンパク合成阻害薬
細菌の生存や分裂に必要なタンパク質を作らせないようにし、細菌の動きを止める薬。タンパク質を作る際に使われる「リポゾーム」という成分にくっつき、タンパク質が作られるのを阻害します。人間(動物)の細胞も生きていくために細胞内にあるリポゾームでタンパク質を作りますが、タンパク合成阻害薬は菌に特徴的なリポゾームにくっついて作用するのが特徴。
それ以外にも、タンパク質の合成にかかわるmPNAやtRNAという物質の働きを阻害し、細菌の増殖を抑える作用をもつものも。
代表的な薬はアミドグリコシド系、テトラサイクリン系、マクロライド系、クロラムフェニコール。
■DNA合成阻害薬
細菌のDNAが作られるのを阻害して菌を殺す薬です。殺菌効果と組織への移行性が高く、対象とする菌の種類が広いのが特徴。代表的な薬はニューキノロン系(合成抗菌薬)。
■葉酸合成阻害薬
DNAの合成などに必要な葉酸という物質が作られるのを阻害する薬。DNAが作られなくなることで菌を殺します。代表的な薬はサルファ剤など。
■細胞膜透過性障害
細菌には細胞膜があり、細胞膜はリン脂質という物質が並んで構成されています。これは動物も同様。この細胞膜を構成するリン脂質がうまく働くことで細胞に必要な物質を細胞の外側から取り入れたり、外側に出すなど、細胞の外と内で色々な物質を交換し、細胞の生命は保たれています。この細胞膜のリン脂質の働きに働いて細胞の外と内との物質交換の機能を阻害し、細菌を殺す薬。代表的な薬はポリペプチド系など。
抗真菌薬(真菌に作用する薬)の種類・作用・効果
抗生物質の中でも細菌ではなく、カビ(真菌)に効果のある抗真菌について。主なものは以下の通りです。■ポリエンマクロライド系抗真菌薬(アムホテリシンB、フルシトシン)
有名なものとしてはカンジダ属に効果があります。呼吸器や消化器、尿路などの真菌感染に用いられます。
■アゾール系抗真菌薬(フルコナゾール、イトラコナゾール、ミコナゾール)
同じくカンジダ属にも効果がありますが、水虫などの皮膚に感染する真菌(白癬菌)に対し、よく使われます。