リニア中央新幹線の建設工事を巡る不正受注事件で、事業主体のJR東海(名古屋市)の担当社員が名古屋市中区の「名城非常口」の工事について大手ゼネコン・大林組(東京都港区)側に非公開の情報を漏らした疑いがあることが関係者への取材で分かった。東京地検特捜部はこの社員から任意で事情を聴いている模様だ。特捜部は大林組側がJR社員側に情報漏えいを持ちかけた可能性もあるとみて捜査を進めている。【飯田憲、平塚雄太、巽賢司】
「名城非常口」は、大林組が受注したリニア関連建設工事4件のうちの1件。JR側は2015年5月に業者選定方法を公表し、16年4月に大林組・戸田建設(東京都中央区)・ジェイアール東海建設(名古屋市)の共同企業体(JV)と契約を締結した。この工事の業者選定方法は、JR側が業者を広く募って見積もりを出させ、施工方法や価格を勘案して受注業者を決める「公募競争見積もり」と呼ばれる方式だった。
関係者によるとこの工事では工法が異なる大林組のJVと、鹿島(東京都港区)を中心としたJVが競合。JR側は業者選定手続きの過程で、構造物の安全性の指標である「安全率」と呼ばれる設計要素を変更した。この変更内容に関し、大林組が鹿島と情報交換したという。大林組はJR側から情報を聞き出した上で受注に結びつけたとみられる。
毎日新聞の取材に対し、大林組のある幹部は「設計変更されたことについて、鹿島側と情報交換をしたのは事実。このあたりの状況について、特捜部は関心を示しているようだ」と話す一方、「民間企業の発注工事について情報交換すること自体は違法ではないと考えており、不正はない」としている。JR東海の広報担当者は情報漏えいの有無などについて、「捜査に関わることなのでお答えできない」とコメントしている。