2015年3月28日(土)
午後9時00分~9時49分
総合
人々に感動を与えるため、まだ見ぬ植物を求め、世界の辺境地へ冒険する男がいる。現代のプラントハンターとも言うべき西畠清順(にしはたせいじゅん)さん、34歳。アジアの熱帯雨林、イエメンの砂漠、オーストラリアの湿地帯からロッキー山脈まで、その移動距離は一年間で地球10周分。今回は、アルゼンチンの森林地帯で、パラボラッチョという巨木の掘り出しに挑んだ。巨木を独自の技術で休眠させて日本へ運び、大都会に植える計画だ。野生児のような風貌の清順さんだが、実は明治元年から150年続く植物卸問屋の5代目。活け花や庭に使う植物を常に3千種以上、独自の技術で栽培して納めている老舗だ。山野に咲く草木を自然から切り出し、様々なメッセージを込めて人々に届けてきた活け花や庭園。その日本の伝統文化の思想が、清順さんの行動力とセンスによって増幅し、言わば地球を舞台にした巨木の活け花となり、世界中の人々の心に響いている。
かつてのヨーロッパに植物を運んだプラントハンターたちが世界を大きく変えたように、清順さんも魅惑の植物たちを主役に新しい風景をつくろうとしている。
今から二年前、現代のプラントハンターと言われる西畠清順さんに初めてあった時のことは強く印象に残っています。野生児のような風貌、植物のことを熱く語る時のあまりにも澄み切った目。そして、世界を股にかけ、物怖じせずに挑戦を続けている当時32歳の、植物に恋する肉食系男子の姿に、何か日本の未来に光明さえみた気もしました。
今回の番組は、海外での放送も視野に入れていたので、企画段階から海外のテレビプロデュサーたちの意見も聞いてみると、「植物をテーマにした番組を長い間考えてきたが、動物のような表情や、劇的なドラマも見えにくいので難しかった。しかし、実に個性的な主人公を見つけたことで、ついに方法が見つかった」と期待のコメントをいただきました。
実際の制作では、やはりアルゼンチンで採集したパラボラッチョを運ぶ船の手配が遅れた時は、果たして日本に無事届くのか、清順さんだけでなく、取材チームも胃が痛くなる日々でした。しかし、清順さんが空輸を決断、日本の検疫も通過し、パラボラッチョが多くの人の目と手に触れた時は、本当に植物が動物に勝るとも劣らない感動を与えてくれるものだと実感させられました。
17世紀の頃から活躍したプラントハンターは、食料や薬など「人の体」に役立つ植物をヨーロッパに運びました。一方で日本の伝統文化、活け花の思想を根源に持つ清順さんは、まさに「人の心」に植物を届ける、新しいプラントハンターなのでしょう。その活動によって、多くの人が植物に関心を持つ、植物を愛すようになる、それが地球環境のことを考えていく、まずは第一歩になるのかもしれません。
(制作統括 諏訪雄一)