記事の抜粋やタイトルはつけ方次第で周囲を混乱させるので気を付けたいですね。
昨日のニュースヘッドラインに思わず目を疑う内容が流れてきてビックリしました。
公式発表の引用も記事内容にありましたが、公式の発表も見に行くと案の定「違う」訳です。
明かに誤解を招く記述ですし、Yahooや記事を纏めているサイトはタイトルは修正すべきだと思うのですが・・・
このタイトルの何が間違いで何を誤解させるのか見ていきましょう。
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著作〇〇権
著作権、という言葉はご存知の通り。
一連のふわっとした著作物に対する関係者の権利を丸ごと表現しているのがこの「著作権」という言葉です。
しかし著作権という言葉によって、より詳細にその性質を表す言葉があります。
それらは「著作者人格権」「著作隣接権」といった別の言葉でそれぞれ指す意味が異なります。
著作者人格権については映画館の話題でも取り上げましたので併せてご覧ください。
ここで誰が何なのか?を音楽の場合について整理しておきましょう。
作曲家・作詞家・編曲家
楽曲の制作にあたり作曲及び作詞、編曲を行ったアーティストは「著作権」を持つ「著作者」となります。
音楽出版社に所属する作家の場合はここに音楽出版社も名を連ねる事もあります。
ボーカリスト・ソリスト
ボーカルの場合、ボーカルを担当したアーティスト。(またはバンド・グループ)
イントゥルメンタルの演奏家。
これらは「著作隣接権」に言うところの「実演家」となります。
音楽出版社
CDや音源を流通させるために完成した音源(原盤)を制作するのが音楽出版社の領分です。
その他プロモーションなど様々な業務を担当します。
音楽出版社は個人ではなく会社として「著作隣接権」に言うところの「レコード製作者」に該当します。
一般に言う著作権料とはこの著作権と著作隣接権を区別しない呼称です。
JASRAC等管理団体が徴収するのは上記でいう「著作者」が持つ権利の委譲を受けている著作権使用料に該当します。
この部分に関しては管理団体に委譲されていれば管理団体が請求・徴収を行う部分であり、たとえ著作者本人であっても勝手に許諾を出すことはできません。
さあ、ここでもう分からん!!という人は基本的にはこの話題には触れるべきではありません。
Yahooニュースのコメント欄等を見るとその辺りの理解が出来ていない人がいるので非常に残念なことになっています。
公式のリリースを読むと
ここで公式サイトのリリースを確認してみましょう。
GLAY及び有限会社ラバーソウルは、GLAY名義で発表しているGLAY楽曲をブライダルで使用する場合に限り、著作隣接権について使用者からの料金を徴収しないことを報告させて頂きます。
「著作隣接権」について使用者からの料金を徴収しない、と明記されています。
また続く分には以下の文章もあります。
つきましては、使用法により演奏権と複製権の使用料を各管理団体(「JASRAC」or「NexTone」)にお支払いいただくこととなります。
今回徴収しない、と明言されているのは「著作隣接権」における「原盤の使用について」の部分を徴収しませんよと言っているのです。
先のCRICで解説されている著作隣接権とは?のページにある商業用レコードの二次使用料を受ける権利を行使しませんという宣言なんですね。
著作権使用料を取らないという事ではないのか?と思った人はまだ甘い。
次により具体的に何が不要で何が必要なのか、確認をしてみましょう。
許可されたのは「原盤」の使用
きちんと公式にも説明がなされていますが、恐らくここまで読んでいない人がほとんどなのではないでしょうか?
GLAY名義の楽曲を会場で流す場合、有限会社ラバーソウルへの許諾申請は不要ですと明記されていますが、その下には「会場で市販CDを流す場合」等のケース別に行う申請方法について各管理団体へリンクがあります。
これはつまり有限会社ラバーソウル及び実演家であるGLAYが持つ「著作隣接権」の商業用レコードの二次使用料を受ける権利は行使しないけれど、会場で音楽を使用する著作権使用料は払ってくださいという事に他なりません。(会場に持ち込まれたのが市販のCDじゃない?それは流石にまずいよ?;)
なぜなら、演奏権・上映権などの著作者の権利は管理団体に委譲されている物であり、実演家・出版社などが保有する(許諾できる)権利はあくまでも「著作隣接権」の部分だからです。
なぜこの様な発表をしたのだろうか?
Yahooニュースのコメント欄ではJASRACに勝った!!という論調でコメントする人もいますが、本当にそうなのでしょうか?
きたーGLAY 神対応
いいね、こういうアーティストがどんどん増えそうだね!JASRACザマー
アーティストの気持ちが最優先です。
私はむしろその逆だと思います。
実演家および音楽出版社はきちんと使用料を払ってもらいたい、そのためのリリースなのだと考えています。
そもそも日本はニュースのタイトルから「著作権料徴収せずと発表」などという誤りを堂々と載せてしまうほどに権利への意識が低いのが現状です。
今回のリリースではじめて「結婚式の音楽使用で利用料が必要」であることや「著作隣接権」といった言葉を知った人も多いのではないでしょうか?
本来であれば実演家(今回はGLAY)を含む音楽に関わる人々は楽曲の販売の他、楽曲が放送やライブ、様々な場所で使用される楽曲の利用料を受け取れているはずです。
特に冠婚葬祭に纏わる音楽使用に関する話題は昔からありますが、CDの使用など個別に原盤の使用許可などを取らなければいけない部分の処理は非常にあいまいなまま見過ごされてきました。
今回の発表では本来であればCDを使用するための許可と使用料を支払う必要のある原盤の使用をブライダルに限り権利を行使しないという発表であり、結婚式で楽曲を流す使用料については管理団体に支払ってくださいというアナウンスなのです。
つまりこれは個別に使用許可の申請や使用料のネゴシエーションなどはしないけど、使った分はちゃんと支払ってくださいと言う姿勢の表明です。
実演家であるGLAYなどのアーティストもブライダルなどのシーンで使われる人気楽曲が多数あったはずです。
本来であればCDの使用申請があればGLAYも出版社も得られたはずの利益があったはずです。
しかし個別に許諾する作業は出版社としても煩雑でしょうし、その部分を諦める代わりに管理団体の使用料は厳格に支払ってほしいという事なのではないでしょうか。
全数管理時代への布石
放送では既に達成された全数報告、映画館や様々な分野との接触が昨今話題になっていますが管理団体及び著作者らは今まで曖昧にされてきた部分をクリアにしていく作業を実施しています。
これはここまで何度か紹介してきたように世界的に管理の厳格化へ向かうための共同作業です。
今までは無料で使えたのではなく、報告を怠っていたために徴収できなかった分野や旧態依然とした価格設定を改める動きの中で起きる変化です。
言い方を変えれば、今までごまかしてきた部分にも全数管理化へ向けた取り組みが始まったと言えます。
権利に対する考え方は非常に難しいものです。
しかし「ちょっとくらいいいじゃない」という甘い考えは許されません。
情報化が進んでいく中で求められる著作権の取り扱いの変化は、私たち個人のすぐそばまで来ていることを忘れないようにしたいものです。
相変わらずこの手の話題になると勘違いが先行して加熱してしまうので手に負えない感じがしますね。
少しずつ変化はみられるものの、まだ他人の所有物をタダで使いたい!!と公言する人が減らないのはフリーミアムの弊害かなあなんてぼんやり考えるものです。
今回の発表が正しく捉えられるようになるまで、社会はまだまだ周回遅れという事なのかもしれませんね。
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