ボラティリティーの死を嘆く為替トレーダー、年初来リターン大幅悪化

  • 価格変動欠く環境で、為替ファンドの年初来リターンは4%近く減少
  • 地政学的緊張さまざまも、主要中銀の市場対話が相場変動抑える

大半のトレーダーは2017年を「退屈な」1年だったとは表現しないだろう。核兵器使用も辞さない構えの瀬戸際政策に自由貿易協定の崩壊、米大統領によるつぶやきの嵐に世界は見舞われた。だが、不在が目立ったものがある。ボラティリティーだ。

  値動きの欠如は、為替特化型ファンドには特に厳しい。9つの別々の投資スタイルを代表する14の為替運用プログラムのパフォーマンスを追跡するシティ・パーカー・グローバル通貨運用指数は今年これまでに4%近く下げ、2011年以来の大幅悪化となっている。

  利益を生み出す機会をもたらす極端な値動きは今年、世界の主要中央銀行が政策協調する中で減ってきた。株式や債券、為替市場はトランプ米大統領の就任1年目の混乱や欧州での政局不安などをおおむね受け流し、世界の通貨オプション市場での3カ月物インプライドボラティリティーを示すJPモルガン・チェースの指数は、14年以来の低水準近くに沈んだ。

  主要通貨の中でもドルとユーロ、ポンドは「市場に混乱とちょっとした静観姿勢をもたらす、幾分奇妙な政治背景に特徴付けられている」と語るのは、アバディーン・スタンダード・インベストメンツで米州ヘッジファンドソリューション部門責任者を務めるダレン・ウルフ氏だ。「この静観姿勢は、人々が多くのリスクをとらないことを意味する」という。

  今年は北朝鮮のミサイル発射から欧州の選挙まで、取引の材料になるような地政学的緊張がさまざまあったにもかかわらず、為替運用者らはこれらをおおむね見て見ぬふりをしてきた。一方、米金融当局や欧州中央銀行(ECB)などを中心に、金融緩和を縮小させる方針の世界の中銀は市場とうまく対話して慎重な動きに終始することで、相場変動を抑えてきた。

  ドイツ銀行の為替調査共同責任者、アラン・ラスキン氏は「世界の市場でボラティリティーの鍵を握る震源は債券のボラティリティーだ」と述べ、「債券利回りは量的緩和かマイナス金利、あるいは両方によって、著しく抑えられてきた。インフレ率も弱い。これらの条件が崩れれば、債券市場にはボラティリティーが生じ始め、それが市場の外に波及していく」と付け加えた。

  2年から30年で満期を迎える米国債の店頭オプションのデータを基にするバンク・オブ・アメリカのMOVE指数は11月8日に43.97に低下し、1988年のデータ収集開始以来の低水準を記録した。

原題:Traders Lament Death of FX Volatility as Torpor Tanks Returns(抜粋)

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