10月22日に実施された総選挙で自民・公明の与党が総議員の3分の2を維持したことを受けて、改憲論議が再び活発になる。果たして、どのように改憲すべきなのか。議論は百家争鳴の様相を呈すにちがいない。
このほど「安全保障において、憲法に関わる現実問題は国際貢献と集団安全保障だ」との視点から改憲案を提示した大野元裕・参議院議員(民進党)に話を聞いた。同氏は中東調査会などで研究員を経験した国際派、民主党の野田政権で防衛大臣政務官を務めた。
(聞き手 森 永輔)
安全保障に関わる改憲論議は集団的自衛権行使の是非と、立憲主義の立場からの“ブレーキ作り”ばかりが注目されます。そんな中、大野さんは国際貢献と集団安全保障に注目する改憲案を提示しました。たいへんユニークな取り組みです。このテーマに注目したのはなぜですか。
大野:私は日本国憲法と自衛権、それを執行する実力組織をめぐる議論において、三つの問題があると指摘してきました。第1は「自衛権」を明記する必要があること。自衛権は現在、前文と13条を「解釈」することで行使できることになっています。しかし、「解釈」は環境の変化に応じて変わるもの。自衛権が「解釈」によって揺れ動く現状を放置するわけにはいきません。
限定的な集団的自衛権の行使をできるようにするべきです。このため、9条の1項と2項を維持した上で以下を加えるよう、希望の党の長島昭久・衆議院議員とともに提案しました。
第九条 日本国民は、正義と秩序を基調とする国際平和を誠実に希求し、国権の発動たる戦争と、武力による威嚇又は武力の行使は、国際紛争を解決する手段としては、永久にこれを放棄する。
②前項の目的を達するため、陸海空軍その他の戦力は、これを保持しない。国の交戦権は、これを認めない。
技術が進歩し、一国で平和を守れる時代ではなくなりました。集団的自衛権を行使できるようにしないと、日本の存立が危うくなる危機がもう起きているのです。長島議員が、北朝鮮がグアムのアンダーセン基地を弾道ミサイルで攻撃する例に挙げて指摘した通りです(参考記事:「自衛権を定め抑止力を高める現実的妥協」)。
前二項の規定は、我が国にとって急迫不正の侵害が発生し、これを排除するために他の適当な手段がない場合において、必要最小限度の範囲内で、自衛権を行使することを妨げると解釈してはならない
「急迫不正の侵害」から始まる下線の部分は「武力行使の旧三要件」から引いた表現です。旧三要件が「我が国に対して」としていた意味が、我が国の領土、領海に対するものとの解釈が定着しているために、「我が国にとって」とすることで、集団的自衛権が行使できることを表現しました。
自衛権を「個別的」と「集団的」に分けて記述する必要はないと考えます。自衛権の内容は時代とともに変化しますから。国連憲章を制定する際、「自衛権の内容を定義すべき」という議論がありました。しかし、米国と英国がこれに強く反対し、定義は見送ることになりました。時代とともに自衛権の行使の対象となる行為が変わるからとの理由でした。
法律上の言葉の使い方では、具体的事例がわかりません。例えば、南スーダンでは、非武装の国連要員が武装勢力から襲われました。この時、自衛隊に救援要請があった場合、自衛隊は国連要員を武装勢力から守るために武力を使うことができるのか、否か。また、自衛隊宿泊地域に武装勢力が襲撃してきた場合、自衛隊は自らを守るために、武力を使うことことができるのか、どうか。具体的に説明してください。(2017/12/11 10:18)