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受信料を払いたくない人も納得の「大胆なNHK分割案」を示そう

なくてはならない機能もあるからこそ
髙橋 洋一 プロフィール

NHK改革案を示そう

最後に、NHK受信料の国民の不満についての私見を述べよう。ここまで見てきた通り、来年には電波オークションの第一歩が始まる。ということは、通信放送業界に再編の好機がやってくる、ということだ。それにあわせて、政治主導でNHK改革を打ち出せばいいのだ。

ずばりいえば、NHKを、「公共放送NHK」と「民間放送NHK」に分割するのが、理論的にも一番スッキリする。これなら、肥大化したNHKのスリム化にもなるし、公共放送NHKは受信料制度によって社会的使命を果たすことができ、「偏向」と批判されるようなものは民間放送NHKで放送し、民間放送と競争すればいい。しかも、このように、NHKを民間と公共部門に分割すれば、今の受信料も公共放送を維持するだけのためのものになるので、今より低くなるだろう。

こうしたNHK改革案は過去にも検討されたことがある。しかし、その度に、NHKのみならず民放業界からも反発があって、実現しなかった。実は筆者も12年前の総務大臣補佐官時代にそうしたNHK改革案を考えたこともあり、実際、大臣懇談会での検討まではこぎ着けた。しかし、あっという間に自民党守旧派に潰された。

 

だが、これからは電波オークションの時代がやってくる可能性が高い。新規参入の目玉として、「民間放送NHK」はいい玉になる可能性がある。しかも、地デジ時代なので、民間放送として広告以外の利用料も徴収可能である。

もちろん、民間放送業界が現在支払っている「電波利用料60億円程度」は、オークション導入の結果として高くなる可能性もある。その場合、テレビ局はいまの平均給与は維持できなくなるかもしれない(支払う電波利用料が増えるなら、人件費を抑えざるを得ないだろう)。

ちなみに、各社の有価証券報告書によれば、東京放送ホールディングス1662万円、朝日放送1516万円、フジ・メディア・ホールディングス1485万円、日本テレビホールディングスス1428万円、テレビ朝日ホールディングス1380万円、テレビ東京ホールディングス1375万円と、NHK1098万円よりさらに高い(なお、日本で所得1500万円超の人は1.1%しかしない)。

ついでに有価証券報告書をみると、フジテレビをもつフジ・メディア・ホールディングスなどは、テレビで四苦八苦しており、不動産収入が支えているともみれる。不動産会社がテレビをやっているような側面もあるのだ。これから、いろいろな新規参入があると、多少テレビで儲からなくてもいいから、といろいろな業態が入ってくるだろう。

こうして民間放送において新規参入が促されるのであれば、放送法4条の政治的中立条項は不要になる。この条項があるのは、新規参入がないためである。そうした縛りがなくなれば、放送業界の現場でも、もっと自由に面白いコンテンツが作れるだろう。近年、規制や自粛要請が多くて作りたい番組が作れないというテレビの現場の声も聴くが、それも解消されることになるかもしれない。テレビマンの中には、それを喜ぶものもいるだろう。

近年、インターネットテレビなどが台頭しており、通信放送業界もいつまでも古い規制の枠に浸かっているのは得策ではない時代になっている。それは、NHKだって同じなのである。