第1回 恐竜から深海魚まで、世界で活躍する若き日本人研究者
昨年末、ナショジオWebが選んだ「2016年ドラマチックな科学ニュースベスト6」には、古生物学関連のニュースが2つ含まれていた。
ひとつは、「琥珀から恐竜のしっぽを発見」。ミャンマーの市場で見つかった9900万年前の琥珀の中にコエルロサウルス類の小型恐竜の尻尾が入っており、軟部組織や羽毛まで残っていたというものだ。コエルロサウルス類は、ティラノサウルス類や現生の鳥類にも連なる系統。これほどまでに保存状態のよい尻尾と羽毛が琥珀に密封されて現代に届けられるのははじめてのことだ。
もうひとつは、「史上最大の海生ワニ」マキモサウルス・レックスの発見。チュニジアの砂漠から頭骨だけでも1.5メートル、体長10メートルもある、1億2000万前の巨大な海生ワニが発掘された。ただ巨大なだけでなく、1億4500万年前ごろのジュラ紀末に起きたかもしれない大量絶滅を生き延びた海生ワニとして注目を浴びた。
これらのニュースは学術誌に論文として発表された内容にもとづいている。
前者の論文の著者は、中国地質大学のリダ・シン(邢立達 Lida Xing)博士。後者は、イタリア・ボローニャ大学のフェデリコ・ファンティ博士だ。双方とも、新進気鋭の若手研究者で、アカデミックな場で非常に生産的な活動を繰り広げている。「今をときめく」という形容が似合う。
そして、論文の共著者を見ていくと、1人だけ、両方ともに同じ名前があることに気づく。
Tetsuto Miyashita, Department of Biological Sciences, University of Alberta.
テツト・ミヤシタ。
あきらかに日本の名前だ。それもカナダのアルバータ大学。
この、テツト・ミヤシタこと、宮下哲人さんが、今回、ぼくがお話をうかがった研究者だ。