VRで2Dが再現できる!?2Dのイラスト的魅力をVRに取り込むという方向性
2017/12/10 16:00
映像でしかない仮想世界を、さも現実のように感じさせる…という、VRの表現力は素晴らしい。しかし、そんなVRが不得手としている表現がある。それは、コミックや絵、アニメといった2Dアート表現だ。
2Dアートには2Dアートならではの魅力がある。2Dアートの魅力も取り込むことができれば、VRコンテンツの表現がより豊かになり、魅力がアップすることは間違いない。
ただ、2DアートをVRコンテンツに取り込むのは難しい。そもそもVRコンテンツは、仕様的に3DCGでなければ実現困難だからだ。
しかしそんな中、VRコンテンツ内で2Dアート表現を実現可能にするソリューションが存在している。この記事では、そうした2D表現向けのVRオーサリングツールについて紹介したい。
360°の視界に応えるためには3D必須!だから2Dアート表現が難しい
何故VRコンテンツが3DCGを前提としているのかといえば、常に、鑑賞者が見ている方向に合わせた映像を360°描き出さなければならないからだ。
ジュースの缶を影絵に映したところを想像してほしい。角度によっては四角形の影が映るが、角度によっては円形の影が映ることになる。3DCGは、コンピューターがその都度こうした角度による映像の変化を計算して描画しているため、一度3Dモデルを作ってしまえば、異なる角度からの映像を即座に描画できる。一方、もし2Dアートでこれを実現するとしたら、あらゆる角度に対応した絵を事前に用意しなければならない。
ただ、2Dの画像を使ったVRコンテンツも存在はしている。RICOHのTHETAをはじめとする360°カメラを使って撮影した実写VRコンテンツがそれだ。実写VRコンテンツは、厳密には2Dアートを360°の球状に並べたもの。なので、360°分の2Dアートを描いて球状の3Dモデルに張り付ければ、2Dアートを使ったVRコンテンツが実現できる。
…とはいえ、2Dアートを球面に張り付ける際、魚眼レンズのような歪みを正確に考慮しなければ、VRで観た時に歪んだ映像になってしまう。球面の歪みを人の手で正確に考慮して動画用の2Dイラストを描くのは、結局のところ現実的ではないのだ。
VRコンテンツ内で2Dアート表現を実現するVRオーサリングツール
VRコンテンツ内で2Dアート表現を行うことの難しさが分かった上で、それでは2Dアート表現を可能にするVRオーサリングツールは、どのように2Dアート表現を実現しているのだろうか?
2Dアートが3D空間内に具現化する!「Euclid」
2Dアートを動かす=アニメーションさせるためには、動きの分だけ絵を描く必要がある。いわゆるパラパラアニメというもので、従来のアニメーションも基本的にはこの手法で作られてきた。
もちろん、動かすために何枚もの絵を描くというのは労力が大きい。そこで、労力を軽減するためのツールというのが、これまでにいくつも登場している。そのひとつが「Live2D」だ。
「Live2D」は、2Dアートではあるが、技術的には3DCGを実現のための技術である「ポリゴン」を使っている。「ポリゴン」は3つの頂点を持った3角形で、頂点の位置を3次元座標(X座標、Y座標、Z座標)で指定、形状を変化させることが可能。この「ポリゴン」に絵を張り付けて動かそうというのが「Live2D」の仕組みだ。
たとえば、上まぶたと下まぶた、目をそれぞれ別の2Dアートとして描き、ポリゴンに貼り付けて動かせば、まばたきするアニメーションを再生することが可能だ。まぶたの曲線にそって複数のポリゴンを配置することで、まばたきの際のまぶたの形状もスムーズに変化できる。
こうした発想で作られた「Live2D」を、さらにVRに対応させようというのが「Euclid」。「Euclid」は、複数の原画イラストから独自の3Dモデルを組み上げ、アニメーションを実現。VRコンテンツ内に持ち込むことも可能だ。
3DCGによる表現では、映画などの超ハイエンド3DCGでない限り、2Dアートの持つ繊細なタッチが失われてしまいがち。しかし、「Euclid」を使うことで2Dアートのよさを残しながらアニメーション制作の労力を軽減、さらにVRコンテンツへと持ち込むことが可能になる。
ポイント
・2Dの作画から3Dモデルを作成
・リップシンクやモーションも表現
・VRでの使用が可能
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2Dアートを2DのままVRコンテンツ内に表現「Smart360」
2DアートをVRコンテンツ内に持ち込む際、あえて3D化しなくてもよい…というのもまた、発想のひとつだ。
例えば、美術館をVRコンテンツ化する場合、美術館という空間はVRで再現、絵画を見た際にはVR内に2Dの情報をそのまま表示する…という手法が考えられる。
こうした考え方で2Dアートの表示が行えるのが「Smart360」というVRオーサリングツール。「Smart360」は、360°のパノラマ画像上に、テキストや写真、音声、動画といった情報を配置し、ユーザーインタラクションによって再生することができる。
VRに求める役割と、2Dアートに求める役割が異なる場合に最適なソリューションといえるだろう。
【製品データベース】
Smart360
多彩な表現がコンテンツの魅力をアップさせる!!!
VR元年から数えて3年目に差し掛かろうとしている今、VRを体験したことがあるという人は増えている。「VRといったらこんな感じ」というイメージが固まりつつある人も多いだろう。
そんな中で2Dアート表現は、「これまでのVRでよく見られる表現」とは違った世界観を作り出すことができるため、商品としてのVRコンテンツを作る場合でも、プロモーションとしてのVRコンテンツを作る場合でも、新鮮な魅力を付加することができそうだ。
これから先、2Dアート表現に対応したVRオーサリングツールのバリエーションがさらに増えてくれることを期待したい。
ゲーム作りからゲームレビューまで、ゲーム何でも大好きなゲーム作家。子どものころから夢見ていたVR技術の実現に歓喜!ホラーとオカルトが大好きなので、バーチャル世界でたくさんのゾンビや亡霊に何度も殺されたい!!