先日寄稿した記事「<ハロプロ>20年間で発表された楽曲数は? “楽曲の定義”含め徹底調査」にて、1997年11月3日〜2017年11月2日までの20年間にハロー!プロジェクトが発表した総楽曲数をカウントした。それを踏まえて、20年におけるオススメ曲100曲を選出/レビューしてみようというのが本稿の趣旨だ。
ただ単純に、良曲を思いつくままに100個挙げたとしても、それはそれでひとつの選び方ではあるか、結果ある種の偏りが出てくることは目に見えているので、今回はいくつかの縛りを設けた。
・まず基本的に、完成度がある程度高いもの(20年100曲に値するレベルのもの)
・グループごとにある程度バラけさせる(とはいっても、1曲も入らないグループも中には出てきてしまった)
・楽曲のジャンルごとにある程度バラけさせる(なるべく幅広いジャンルの楽曲を紹介したかったが、漏れたジャンルもある)
・リリース時期をある程度バラけさせる(これは特に意識しなくても、各年最低1曲以上は挙がることになった。年ごとの曲数の比率もそこまで大きく開いてはいない)
以上のようなことを意識しつつ、20年間の全楽曲数2555曲(バージョン違い等を除くと1509曲)の中から100曲を厳選した。公式MVがYouTubeにアップされているものはリンクを添えている。前編の今回は前半50曲を紹介していく。独断ではあるが偏見ではない楽曲レビュー、以下からスタート。
■001 モーニングコーヒー/モーニング娘。
作詞・作曲:つんく 編曲:桜井鉄太郎
収録盤:モーニング娘。『モーニングコーヒー』(1998年1月28日リリース)
インディーズシングル曲「愛の種」は別作家の作品だったので、メジャー1stシングルの本曲がつんく♂作詞作曲プロデュースによる初のハロプロ楽曲ということになる。当時のJ-POPシーンの主流だった打ち込みダンスサウンドとは一線を画す、温かみのあるフォーキーなポップス。コーラスパートが印象的で、Bメロにはファンによるコールも入れやすく、リメイクバージョンも複数制作されるなど長年に渡って愛されている一曲。
■002 抱いてHOLD ON ME!/モーニング娘。
作詞・作曲:つんく 編曲:前嶋康明
収録盤:モーニング娘。『抱いて HOLD ON ME!』(1998年9月9日リリース)
2ndシングル曲「サマーナイトタウン」および3rdの本曲では、1stからうって変わってマイナーコードの打ち込みダンスサウンドを展開。以降何度もくり返される、モーニング娘。/ハロプロ楽曲のひとつの定型をかたちづくることになった。この曲では間奏のアグレッシブなラップ、落ちサビでの飯田圭織のセリフ<ねえ笑って>などフックが満載。シングルチャート1位、初出場の紅白歌合戦で歌われるなど初期の代表曲といえる。
■003 Memory 青春の光/モーニング娘。
作詞・作曲:つんく 編曲:前嶋康明
収録盤:モーニング娘。『Memory 青春の光』(1999年2月10日リリース)
米NYのスタジオミュージシャンをレコーディングに多数起用、本格的なR&Bサウンドを目指した一曲。ファルセットを多用したメロディラインなどボーカルパートも凝った作りで、歌いこなすのにかなりの歌唱力を要求される印象。いろんな意味で異色作だが、その分ステージ映えする楽曲ともいえる。後年のハロプロメンバーがライブなどでこの曲のカバーに挑戦する様、それを楽しめるのもまたハロプロファンの醍醐味のひとつ。
■004 Never Forget/モーニング娘。
作詞・作曲:つんく 編曲:小西貴雄
収録盤:モーニング娘。『Memory 青春の光』(1999年2月10日リリース)
娘。1期メンバーの福田明日香がグループを卒業する際に制作された楽曲で、彼女がメインボーカル(実質ソロ)を担当。別れを歌った直球バラードソングで、2003年に保田圭が再録したり、2016年の鈴木香音卒業公演で鈴木本人が歌ったりなど何度も取り上げられている。また、娘。の卒業セレモニーではこの曲のインストバージョンがBGMに代々使用されており、リリース当時を知らないファンの涙腺をも刺激する旋律となっているのがすごい。
■005 たんぽぽ (Single Version) /タンポポ
作詞・作曲:つんく 編曲:小西貴雄
収録盤:タンポポ『たんぽぽ (Single Version)』(1999年6月16日リリース)
モーニング娘。からの選抜メンバー3名による初の派生ユニットがタンポポ。アルバム『TANPOPO 1』は良曲が揃った名盤だったが、そこからのシングルカットが本曲だ。ユニット名をそのまま曲名にした記念碑的な一曲で、激しすぎないバンドサウンド、流麗なストリングス、メンバーのコーラスワークなどが絶妙なバランスで構成されている。この清らかさ/神々しさはかなり得難く、こういう曲にこそ「尊い」という言葉を使いたい。
■006 Everyday Everywhere/太陽とシスコムーン
作詞・作曲:つんく 編曲:村山晋一郎
収録盤:太陽とシスコムーン『Everyday Everywhere』(1999年8月25日リリース)
アイドル、と呼ぶには少々齢が過ぎていた20代後半平均の4人組が太陽とシスコムーン。ここでつんく♂が行ったプロデュースワークは、ブラックミュージック要素を如何にして女声J-POPに昇華させるかの実践。結果、数々の名曲が残されることになった。4thシングルである本曲はそんな中でもやや異色作となる、ゴスペル色濃いバラードソング。かなりの歌唱力を問われる一曲だが、ハロプロ楽曲群のある到達点のひとつといえるだろう。
■007 LOVEマシーン/モーニング娘。
作詞・作曲:つんく 編曲:ダンス☆マン
収録盤:モーニング娘。『LOVEマシーン』(1999年9月9日リリース)
モーニング娘。がブレイクするきっかけであり、グループの代表曲でもある一曲。編曲にダンス☆マンを初めて迎え、ディスコサウンドを20世紀末の日本に甦らせた。以降、ディスコはハロプロ楽曲を構成する大きな音楽要素となっていく。娘。史全般を見渡しても稀有なエースメンバー後藤真希の加入後初シングルでもあり、振り付けの楽しさ、MVのにぎやかさ、歌詞の大衆性など語るべきトピックは多い。
■008 ちょこっとLOVE/プッチモニ
作詞・作曲:つんく 編曲:松原憲
収録盤:プッチモニ『ちょこっとLOVE』(1999年11月25日リリース)
「LOVEマシーン」および後藤真希の余勢を駆ったかのようなタイミングで結成された娘。派生3人組ユニット。ライブ映えする「BABY! 恋にKNOCK OUT!」、可愛らしいクリスマスソング「ぴったりしたいX’mas!」等いずれも名曲だが、やはりプッチモニといえばこの1stシングルを挙げたい。軽快なスカビートに<マル、マル>とサビを締めるつんく♂節全開の歌詞がやたらとポップ。テクノ歌謡なカップリング曲「DREAM & KISS」も良い。
■009 「、、、好きだよ!」/モーニング娘。
作詞・作曲:つんく 編曲:ダンス☆マン ホーンアレンジ:川松久芳
収録盤:モーニング娘。『3rd -LOVEパラダイス-』(2000年3月29日リリース)
「LOVEマシーン」「恋のダンスサイト」といったヒットシングルが収録されている『3rd -LOVEパラダイス-』だが、アルバム用新曲は実はマニアックな仕上がりのものが多い。アルバムのクライマックスに配置された本曲もLとRに思いっきり偏らせたミキシング、クワマンこと桑野信義のトランペットソロなど一筋縄では行かない。しかしこの曲のわけのわからないセンチメンタルさは唯一無二のもの。歌詞が融解してゆく曲終盤は圧巻。
■010 愛の力/平家みちよ
作詞・作曲:つんく 編曲:AKIRA
収録盤:平家みちよ『愛の力』(2000年8月9日リリース)
「女性ロックボーカリスト」のオーディションでデビューした平家みちよ。当初はシャ乱Qはたけのプロデュースによるロック色強い楽曲が続いたが、途中からプロデュースがつんく♂に切り替わり、ロックにとどまらない多彩なサウンドをバックにその歌を響かせていた。この8thシングルはR&B歌謡だが、ロックだけを歌わせておくにはもったいない彼女の歌唱の魅力がよくわかる。AKIRAが編曲を手がけた最初期のハロプロ楽曲という意義も大きい。
■011 I WISH/モーニング娘。
作詞・作曲:つんく 編曲:河野伸
収録盤:モーニング娘。『I WISH』(2000年9月6日リリース)
モーニング娘。のシングルリリース履歴から見ると、ダンス☆マンアレンジ曲に埋もれたイレギュラーな位置だが、数ある娘。楽曲の中でも一二を争うほど「尊い」一曲。ゴスペル+ヒップホップとでもいえそうな勢い一辺倒ではなく聴かせる曲調、そしてそこに乗ってくる歌詞は、当時無敵の存在感を放っていたメンバーたちによって歌われる人生賛歌であり、得も言われぬ感傷に満ちている。クラシック中のクラシック。
■012 恋愛レボリューション21/モーニング娘。
作詞・作曲:つんく 編曲:ダンス☆マン
収録盤:モーニング娘。『恋愛レボリューション21』(2000年12月13日リリース)
ブレイクの起爆剤となったのが「LOVEマシーン」なら、そのブレイク絶頂時にリリースされたのがこの「恋愛レボリューション21」だろう。数曲続いたダンス☆マン編曲がスマートな形で着地。親しみやすい歌詞や振り付けもそのまま受け継ぎ、さらに石川梨華<ホイ!>といったアクセントも完備。欠点の無さが欠点と言いたくなるほど完成度が高い。4期メンバー加入後の10人体制、いわゆる「黄金期」を象徴するシングル。
■013 ミニモニ。ジャンケンぴょん!/ミニモニ。
作詞・作曲:つんく 編曲:小西貴雄
収録盤:ミニモニ。『ミニモニ。ジャンケンぴょん! / 春夏秋冬だいすっき!』(2001年1月17日リリース)
子供向けのノベルティソングというフォーマットを得たことで、水を得た魚のように花開くつんく♂のビザール性。こんな妙な曲が2週連続週間1位を記録した事実について、それだけ当時のハロプロの勢いがあったと言うこともできるし、子供層を開拓したと言うこともできよう。ミニモニ。が原体験だったという現役アイドルの数も少なくない。両A面もう一方の「春夏秋冬だいすっき!」も永井ルイ編曲による泣ける良曲。
■014 悔し涙 ぽろり/中澤ゆうこ
作詞・作曲:つんく 編曲:小西貴雄
収録盤:中澤ゆうこ『悔し涙 ぽろり』(2001年2月15日リリース)
モーニング娘。の初代リーダーを務めつつ、演歌ソロ活動も並行して続けていた中澤姐さん。ド演歌から歌謡ポップスへ徐々に路線変更しつつあった時期の5thシングルであり、サビの<涙ぽろり(オイ!)ぽろり(オイ!)泣かないと(ゆうこー!)>というファンコールもセットで思い出深い。カップリング曲「恋の記憶」は中澤の娘。卒業コンサートでも歌われた一曲で、彼女とつんく♂の共作詞という珍しいケース。
■015 恋をしちゃいました!/タンポポ
作詞・作曲:つんく 編曲:渡部チェル
収録盤:タンポポ『恋をしちゃいました!』(2001年2月21日リリース)
メンバー4人になった第2期タンポポは良曲揃いで有名。「乙女 パスタに感動」と本曲のどちらを挙げるか迷いに迷ったが、ブリティッシュ・ポップという下敷きをよりJ-POPへ昇華させた感のあるこちらを選んだ。初デートの情景を描いたアイドルソング王道の歌詞でありつつ、<ラーメンを食べました(食っちゃった)>などと外しを入れずにいられないのがつんく♂作詞術だが、それがまたサウンドや歌衣装の華美さにとって良いアクセントとなっている。
■016 ドッキドキ! LOVEメール/松浦亜弥
作詞・作曲:つんく 編曲:高橋諭一
収録盤:松浦亜弥『ドッキドキ! LOVEメール』(2001年4月11日リリース)
ゼロ年代女性グループアイドルの頂点を極めたのがモーニング娘。なら、ソロアイドルのそれは松浦亜弥に他ならない。その偉大な第一歩となったデビューシングルが本曲で、最初からすでに規格外なのがよくわかる。編曲を手がけたのは、後に「♡桃色片想い♡」「Yeah! めっちゃホリディ」も担当するハロプロ楽曲アレンジャー界のベテラン高橋諭一。松浦亜弥のシングルは6枚目あたりまで一切ハズレなし。
■017 チュッ! 夏パ〜ティ/三人祭
作詞・作曲:つんく 編曲:高橋諭一
収録盤:三人祭『チュッ! 夏パ〜ティ』(2001年7月4日リリース)
複数グループによる「ハロー!プロジェクト」という集合体が成立し、そのメンバーたちをグループの垣根を超えてシャッフルさせた企画シングルシリーズが2000年からスタート。翌2001年リリースの本曲では当時のエース級メンバーである石川梨華・加護亜衣・松浦亜弥を揃い踏みさせ、さらにピンクのカツラをかぶせたりパンチラ振り付けさせたりといった萌え路線を追求。その破壊力は企画シングルならではの楽しさだった。
■018 ザ☆ピ〜ス! /モーニング娘。
作詞・作曲:つんく 編曲:ダンス☆マン ホーンアレンジ:川松久芳
収録盤:モーニング娘。『ザ☆ピ〜ス!』(2001年7月25日リリース)
中澤裕子が卒業して9人になってもまだモーニング娘。の勢いは止まらない、そんな印象を受けた12thシングル。ダンス☆マンによる強靭なビートを軸にしつつ、サッカーのチャントやチャールストンを混合。さらにリリースから15年以上経った現在でも選挙の時期になると万人がツイートする<投票行って外食するんだ>という生活に根ざしたフレーズ。「恋愛レボリューション21」とはまた別の意味で、黄金期を代表するシングル。
■019 This is 運命/メロン記念日
作詞:新堂敦士、つんく 作曲:新堂敦士 編曲:team124
収録盤:メロン記念日『This is 運命』(2001年10月11日リリース)
ハロプロの一グループに過ぎなかったメロン記念日が大躍進を遂げる契機となった4thシングル曲。シンガーソングライターとしても活動していた新堂敦士とつんく♂の共作。クラシック風の「静」のパートから、ロック風の「動」のパートへ急転直下する曲構成がファンに大いに受け、グループの代表曲となる。次作シングル「さぁ! 恋人になろう」とともに、メロン記念日=ロックというイメージを印象づけた。
■020 Mr.Moonlight 〜愛のビッグバンド〜/モーニング娘。
作詞・作曲:つんく 編曲:鈴木俊介 ブラスアレンジ:小林正弘
収録盤:モーニング娘。『Mr.Moonlight 〜愛のビッグバンド〜』(2001年10月31日リリース)
1999〜2002年頃のモーニング娘。のシングル曲はどれも平均以上で、本当はもっと挙げたいのだがこれでも抑えている。それでも挙げずにいられないのが本曲だ。メインボーカルを3人に絞り、一曲の曲時間の中で一つのミュージカル的なるものが展開されるという攻めの曲調。娘。史に「男役」という概念が導入された瞬間でもあったし、にぎやかなホーンのゴージャスなサウンドも当時のグループの無敵感とよく合っていた。
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